まさに激変する湾岸の安全保障環境

先ほど、「激変する湾岸の安全保障環境」についての最近の論考についてアップしましたが、まさにペルシア湾岸産油国のもっとも重要な国、サウジで気になる動きが相次いでいます。

5月20日に発表されたところによれば、サウジのアブドッラー国王がモロッコで静養し、サルマーン皇太子が執務を代行するとのこと。
Saudi king on holiday, crown prince in charge: royal court, Reuters, May 20, 2014 11:12am EDT

アブドッラー国王は今年で90歳とされる高齢ですから、過去にも手術や長期静養で国を離れることがあり、アラブ圏のいかがわしいニュースサイトではしょっちゅう危篤説や死亡説が流れています。

今回も、単に静養や治療で国を離れて、また戻ってくるだけかもしれません。

そもそも「アラブの春」の変動が起こる前は、サウジの国王は長い夏休みをとって国を離れて、保養地に行ってしまったものでした。「アラブの春」の時も海外で静養していましたが、急遽戻ってきて、2011年は真夏もサウジのお役人さんたちが自国でせっせと働いているという珍しい光景が見られました。体制の存続がかかっていましたからね・・・

というわけで、国王が以前のように治療・療養で国を離れられるというのは、変動が一段落して安定したとみることもできないことはありませんが、年が年ですから、「ついにXデーか」という憶測が出回るのは不可避でしょう。

最近、サウジの最高指導層の人事移動が激しい、というところが、こういった憶測を加速させます。

時間がないのでデータはまたの機会に回しますが、次のような意味を持った人事が頻繁に行われています。

(1)すでに高齢化したサルマーン皇太子の次の「第二皇太子」に、第2世代王子では最年少のムクリン王子を任命した。→初代アブドルアジーズ国王の子の世代(第2世代)での権力継承の手順を確定した。

(2)第三世代王子の中から、軍・国家防衛隊など治安機構の副大臣を任命し始めている。→第3世代への権力継承の漸進的な進行。
(3)アブドッラー国王の子息が重用される一方、有力家系のスデイリ・セブン系統の第三世代王子で更迭されている者がいる。→ファハド前国王やスルターン前皇太子などのスデイリ・セブン系統の王子と、アブドッラー国王とその子孫および「その他」連合との権力闘争の発生?(そんな単純ではないでしょうけれども)

→はよくある憶測・推測・解釈(の一部)。

しかしこれらの人事が相互に必ずしも一貫していなかったり、一度任命された人がすぐに更迭されたりしているので、スムーズにいっているようにも見えないのです。アブドッラー国王が次世代に及ぶ安定的な体制を確立しようとする動きとも見えるのですが、逆に、権力闘争が激化して主導権が頻繁に移ることによってあらわれている動きかとも邪推させます。

さらに、国際関係では、3月13日、サウード・ビン・ファイサル外相(ずっと以前から登用されている第三世代王子ですね)が、突如、イランのザリーフ外相をリヤードに招くと発表。

イランの台頭におびえ、米国の弱腰や対イラン接近に憤り、突出した行動をとって攪乱するカタールとそれに支援された中東各地の諸勢力の引き締めに本腰を入れる、というのが昨年来のサウジの動きで、湾岸国際政治の基調となっていますが、今回のサウジによるイランへの手の差し伸べが何を意味するか、大変注目されています。

サウジの内外の動きが激しくなっています。

どうなるのでしょう。