【テレビ出演】日曜夜のニュース番組「BS-TBS週刊報道Life」でエルサレム問題について

事後になってしまいますが、本日(2017年12月10日)夜9時−のBS-TBSの「週刊報道LIFE」に出演し、トランプ大統領のエルサレム首都承認について、またエルサレム問題の構造について解説しました。

この番組は元フォーサイト編集長の堤晋輔さんがレギュラー・コメンテーター出ているご縁から、同じ曜日の同時刻に同趣旨で放映されていた「週刊BS-TBS報道部」の時代から、大きな事件があった時に出演しています。

2015年1月20日に問題化した「イスラーム国」によるシリア日本人人質殺害事件については、奇しくも2月1日未明に事件の悲惨な結末が明らかになった日に(この日も日曜日でした)に、あらかじめ出演が予定されていたため、十分にスタッフとやり取りをして地図やフリップなどの準備をした上で、かつ速報性のある報道を行うことができました。

人質事件が終わった直後に、以前から予定していたチュニジア調査に行ったところ、帰ってきてから間もなくチュニスのバルドー博物館でのテロが起きたため2015年3月22日に出演、さらにパリの同時多発テロ事件に際して2015年11月15日にも出演しておりました。

エルサレム問題については、トランプのエルサレム首都承認宣言・演説に合わせて『フォーサイト』にまとめて分析を書いていました。

池内恵「トランプがエルサレムを首都承認した後に何が起こるか」『フォーサイト』(中東 危機の震源を読む 94)2017年12月6日
池内恵「トランプは演説でエルサレムと『東エルサレム』を分離できるか」『フォーサイト』(中東通信)2017年12月7日 00:45
池内恵「米国はイスラエルにトランプ演説への反応を抑制するように水面下で要請」『フォーサイト』(中東通信)2017年12月8日 01:20
池内恵「トランプのエルサレム首都承認の宣言文と演説テキストの違い」『フォーサイト』(中東通信)2017年12月8日 01:30
池内恵「トランプはエルサレム首都承認と大使館移転の意志表明した直後に大使館移転繰り延べ命令に署名」『フォーサイト』2017年12月8日 01:53
2017年12月8日 01:53
池内恵「エルサレム問題は何が『問題』なのか」『フォーサイト』(中東の部屋)2017年12月8日

番組スタッフもこれらを読み込んだ上で、地図や写真を加えて付加価値をつけてくれました。

テルアビブの米大使館を即座に移すことが可能であるはずのエルサレムの二つの総領事館の位置や、1989年のレーガン政権末期に、すなわちキリスト教福音派(エヴァンジェリカルズ)の影響が最も強かった政権の最後に、西エルサレムに大使館の候補地を事実上取得する賃貸契約を行なっている点を指摘するなど、テレビ番組としては極端に専門的な内容になりましたが、分かりやすかったというご指摘もあちこちでいただいています。

なお、番組ウェブサイト(http://www.bs-tbs.co.jp/syukanhoudou/life/)に事前に掲載された番組内容は下記の通りでした。

12月10日OA内容
トランプ大統領「エルサレムを首都」の衝撃
アメリカのトランプ大統領が中東エルサレムをイスラエルの首都と認定した。各国が反発を強めるなど、波紋が広がっている。
なぜ今、トランプ大統領は決断したのか。混迷の度が深まる今後の中東情勢は?その歴史的背景から、世界情勢に与える影響まで、専門家と読み解く。
ゲスト:池内恵(東京大学先端科学技術研究センター准教授)

【刊行】『アステイオン』30周年記念選集(全4刊+総目次)

そういえばこちらが刊行されていました。

山崎正和・田所昌幸(監修)『アステイオン創刊30周年ベスト論文選 1986-2016 冷戦後の世界と平成』(全4刊+総目次)CCCコミュニケーション, 2017年11月17日刊行

軽快なフランス装で重厚になりすぎず、しかし雑誌『アステイオン』に冷戦末期からポスト冷戦期の長い期間に移りゆく国際社会と文化に向き合った数々の論稿の粋を集めた、歴史が詰まった箱です。

私も編集委員の一人として、30年間のバックナンバーを通しで読み、収録作品の選定に幾分かの貢献をしました。あくまでも幾分か、という程度ですが・・・

この雑誌はサントリー文化財団の全面的なバックアップによって編集されています。財団が行ってきた事業、すなわちサントリー学芸賞や研究助成やフェローシップなどを通じ形作られた研究者への多様なネットワーキングから自在に情報を汲み出し、サントリー学芸賞の審査委員やサントリー文化財団の理事などとして深く関わってきた先生方の培うネットワークを辿って、国内・国外から執筆者・論文を集めてきてくれます。

私のようなヒラの編集委員は安心して編集会議に参加し、せめて議論を活発に盛り上げる、という程度の役割に留まります。むしろcontributing editorとして積極的に論文・エッセーを寄稿することが期待されているようです。これについても上の世代の先生方が次々に論文や連載や対談の企画を提案して来るので、それほど出動する機会は多くはないのですが。

サントリー文化財団に蓄積された文化資本に、阪急コミュニケーションズ(現在はCCCコミュニケーションズの一部)のプロフェッショナルな編集者の手が加わって、確実に質の高い製品となって読者の手に届きます。それで毎号の価格はほんの形だけの1000円という・・・

しかしこの30周年論選は、全4巻+別冊(総目次)のセット売りのみでバラ売りなし。本当に少部数しか刷っていないため、価格は高くなりますが、意外に、さほど宣伝しなくともすでに注文が来始めているというので、手元に置いておきたい方はお早めにどうぞ。まあ、売れてしまったらそう簡単には増刷しないのではないですかねえ・・・

私も一本論稿を収録していただいた(第Ⅰ巻の政治・経済(国際編)に)のと、編集委員として別冊(総目次)にエッセーを寄せています。

池内恵「『ポスト冷戦期』を見届けた後」『アステイオン創刊30周年 ベスト論文選1986−2016 冷戦後の世界と平成 総目次』2017年11月17日, 112-116頁

池内恵「『アラブの春』がもたらしたもの」『アステイオン創刊30周年 ベスト論文選1986−2016 冷戦後の世界と平成 第Ⅰ巻 政治・経済(国際編)』2017年11月17日,  767-782頁

実はこの別冊に収録されているエッセーは、他の編集委員のものはすでにアステイオン84号の「特別企画」に掲載されているものの再録なのですが、私もその号で書くはずだったものが、特集の責任編集のために疲れ果て、他の仕事も多く、アステイオンの30年のバックナンバーを全部読んで論を立てるという大作業を完遂することができず、一人だけ掲載を見送りました。ですので、今回がオリジナル原稿ということになります。

この別冊には、編集委員の苅部直先生の、『アステイオン』の創刊者で「名誉永世編集委員」と言ってもいいであろう山崎正和先生との対談も収録されています。

そして、恐竜のようなかつての知識人たちの若い頃の写真が多く収録されており、当時の闊達な議論を彷彿とさせる、貴重な読書体験です。

1986年の高坂正堯の論稿に始まる第Ⅰ巻政治・経済(国際編)の最後に近いところに「アラブの春」の最初の1年に関する論稿を載せることができて光栄でした。

そして本巻の締めくくりには、私が責任編集の労を取らせていただいた特集「帝国の崩壊と呪縛」(第84号・2016年春号)から、池田明史先生と岡本隆司先生の論稿が収められています。少し歴史に何かを残せたような気がしています。

【寄稿】『外交』で中東情勢をめぐる座談会

座談会の記録が刊行されました。

外務省が発行する『外交』(かつての『外交フォーラム』が民主党政権時代にリストラされたものの後継誌です。現在は三度都市出版の企画・発売に戻っています)に掲載されました。

池内恵・今井宏平・田中浩一郎・岡浩「『ポストISIL」に潜む新たな混迷」『外交』Vol. 46, 2017年11月30日発行, 「外交」編集委員会(編集), 外務省(発行), 都市出版株式会社(企画・発売), 116-129頁

岡浩・外務省中東アフリカ局長(前トルコ大使・アラビア語研修でサウジアラビアに二度の勤務経験のある方です)と、イラン分析の田中浩一郎さん(最近慶應義塾大学SFCに拠点を移されました)、年初に中公新書からトルコ現代史を刊行された今井宏平さんと、ご一緒しました。サウジアラビアやレバノンの動向など、対談で将来の見通しとして話していたことが、編集作業の間にも現実化して、未来形を現在形・過去形に直していく作業で校了寸前まで気が抜けませんでした。

局長室の場所を提供していただき、我ら研究者が喋りまくるのを静かに頷いて聞いていらした中東アフリカ局長が印象的でした。いや、いい加減疲れますよね、この中東情勢の展開の早さと破天荒さ。

【寄稿】『アステイオン』に自由主義とイスラームの関係について

かなり力の入った書評を寄稿しました。

池内恵「イスラームという『例外』が示す世俗主義とリベラリズムの限界」『アステイオン』第87号, 2017年11月25日, 177-185頁

書評の対象としたのは、Shadi Hamid, Islamic Exceptionalism, St. Martin”s Press, 2016です。

私は『アステイオン』の編集委員でもあるのですが(contributing editorみたいな感じですかね)、今回の特集も力が入ったもので、かつ他に類を見ないものと思います。張競先生の責任編集で、グローバル文学としての華人文学を、独自の人脈から幅広く寄稿を得て、堂々の刊行です。

これはサントリー文化財団の支援がないとできませんね。

【寄稿】『文藝春秋オピニオン』の2018年版に「イスラーム国」後の中東について

寄稿しました。大変忙しくて、ちょっとお知らせが遅れてしまいました。

池内恵「『イスラーム国』後の中東で表面化する競合と対立」『文藝春秋オピニオン 2018年の論点100』2018年1月1日(発行), 文藝春秋, 38-41頁

奥付の発行期日は来年1月1日となっていますが、2017年11月9日発売です。

例年寄稿している『文藝春秋オピニオン』の2018年度版ですが、今年は「2018年の10大テーマ」の6番目になりました。

面倒ですが一応確認しておきますと、思い出せる限り2013年版から寄稿しているのですが、私の担当するテーマの順位は36→48→70→6→7→そして今年は6に戻っております。別に番号が重要度を示すわけではないのですが、文藝春秋編集部がどのように中東・イスラーム問題を位置づけているかは、日本の世論のある部分の推移を示しているとは言えるでしょう。

「イスラーム国」が2014年6月のモースル占拠で国際政治の中心的課題に躍り出た後の2015年版(2014年11月発売)では「70位」と、なんともはんなりとした対応をしていたのですが、2015年1月20日の脅迫ビデオ公開に始まる日本人人質殺害事件の政治問題化と、奇しくも同日に文藝春秋から刊行された『イスラーム国の衝撃』によって、この問題の位置づけが一気に(少なくとも文藝春秋内部では)上がり、2016年版では一気に6位に躍り出、同程度の認識が3年間続いたようです。来年はどうなるのでしょうか。「イスラーム国」はタイトルに入らないでしょうが、中東問題が大問題であり続けることは変わらないと思います。

「10大テーマ」となると、『文藝春秋』の読者に馴染みのある対象と書き手が並ぶので、よくまだ「イスラーム国」と中東をこの位置に選んでくれたものです。新聞やテレビでは「イスラーム国」のモースルとラッカが陥落する話は分かりやすいように見えるのか、そこだけは報じられます。クルドやトルコやサウジやシリア・アサド政権やロシアや米・トランプ政権などの動きが複雑に絡んだその後の中東情勢は、複雑すぎて記者が記述することが不可能なのかもしれません。

目次を見ますと、書き手のラインナップが、テーマ以上に、濃い。。。

私の前が石破茂先生、その前は宮家邦彦さん、わたいの後ろが冨山和彦氏で、その後ろに佐藤優・櫻井よしこ・藤原正彦と続くという、こってりしたラインナップです。私はこの中の置かれると非常に線の細いあっさりした書き手と見えるのではないでしょうか。

何かと評判の三浦瑠麗さんも、論点15「『政治家の不倫』問題の本質はどこにある」と、近年ライフワークとして掴んだ(かに見える)「女性と権力」に真っ向から取り組んでいます。

従来よくあった、オヤジの「権力と女性」問題ではなく、働く女性論にも一般化させたん女性政治家論により「女性と権力」という問題を浮き立たせた新機軸の発掘で、他の追随を許さない地位を確保しています。来年は私よりも前に載っているでしょうね。それも良きかな。

さて私の方は地味にしかし分析と見通しの提示として実質のある内容を心がけまして、「イスラーム国」が領域支配を縮小していく中で、今後の中東情勢について展望したものです。中東国際政治が変動する中で、最も重要なのはサウジの内政であり、そこにイスラエルを絡めて米トランプ政権を抱き込もうとする動きが出る、それと北朝鮮危機とがリンクされれば・・・といったスペキュレーションを含む本稿は10月前半に書いていたのですが、それが部分的に現実化していくので、10月25日の最終校了直前に細かく修正しました。