【寄稿】『中東協力センターニュース』にバーブル・マンデブ海峡の安全通航をめぐる緊張について

『中東協力センターニュース』の10月号に寄稿しました。

池内恵「バーブル・マンデブ海峡をめぐる緊張の高まりとその背景」『中東協力センターニュース』2016年10月号、11−16頁

上記リンクから、私の記事に直接アクセスできます。

中東協力センターのウェブサイトの中の刊行物コーナーである「JCCMEライブラリー」に収められています。

『中東協力センターニュース』には、「中東 混沌の中の秩序」と題して、2015年4月以来、四半期に一回のペースで、分析を寄稿していますが、その7回目です。その前には「『アラブの春』後の中東政治」と題して2012年6月から2014年10月まで8回連載していましたので、合計15回目になります。「アラブの春」を共通の枠とすることをやめてから7回目ということになります。

【寄稿】『朝日新聞』オピニオン欄でイスラーム主義活動家の主張にセカンド・オピニオンを

本日の『朝日新聞』朝刊のオピニオン欄に、コメントが掲載されています。

「奉じる「自由」の不自由さ 東京大学先端科学技術研究センター准教授・池内恵さん」『朝日新聞』2016年10月21日付朝刊

私のコメントは、この日のオピニオン欄の大部分を占めるターリク・ラマダーンへのインタビュー「イスラムと欧米 イスラム思想家、タリク・ラマダンさん」に付された、背景解説のようなコメントで、いわば「セカンド・オピニオン」を提供したものです。

スイス出身・エジプト系の著名なイスラーム主義活動家ターリク・ラマダーンが、先月来日して、各地で講演などを行ったのですが、その際に彼にインタビューした朝日新聞社の国末憲人さんが、いわば「裏をとる」形で私に解説とコメントを要請し、それに私が応じたため、このような形式の紙面が実現しました。

イスラーム主義の思想家は、時と場合に応じて、相手の知識の程度に応じて、読者・聴衆の抱く(想定された)固定観念に応じて、実に巧みに戦略的に言葉を使い分けます。

そのため、イスラーム教の基本的かつほぼ変更不能な規範と、一時的にその思想家がその場に応じて言っていることとの間の、あるいは「言わないこと」との間の、食い違いがあるのか否か、あればそれは何であるか、どれほど重大なのか、その食い違いによって論者はどのような効果を生じさせているのか、かなりそのテーマに関する議論に習熟し、かつ意識して基準を定めて取り組まないと、正確に理解することも言語化することもできません。

イスラーム主義思想家が繰り広げている言語闘争とはまさにそのような、ズレをうまく突いてくるものです。そのような闘争を行う言論の自由はありますが、同時に、理解した上で受け入れるなり、問いかけを返すなりしないといけません。

私のコメントは「イスラーム教の規範を西欧社会で受け入れるなら、非リベラルな規範の部分も受け入れるということを認識して覚悟した上で受け入れるんですよね?」と釘を刺すものとなりました。

世界各地で行われている主張と問いかけのぶつかり合いの一端を紙面に反映させられたことは、稀なことですが、新聞の社会的機能を有益に担えた事例でしょう。

この機会に、国末さんと、今世界で起こっていること、西欧で起こっていることの深い部分について、徹底的に議論をし、ある程度の認識の共有をできたことは、非常に有益でした。今後もこのような稀な機会は逃さないようにしようと思っています。

【寄稿】「web中公新書」がオープンしました

中公新書を紹介するウェブサイト「web中公新書」が今日オープンした模様です。

寄稿していたので、掲載の連絡を受けて見てみました。どことなくかわいらしくて落ち着くサイトですね。

このウェブサイトの基本コンテンツ「私の好きな中公新書3冊」を依頼されて、短い紹介文を寄稿しました。

池内恵「決定版を目指す心意気」web中公新書, 2016年10月20日

私が選んだ3冊は、

平野克己『経済大陸アフリカ 資源、食糧問題から開発政策まで』
細谷雄一『国際秩序 18世紀ヨーロッパから21世紀アジアへ』
待鳥聡史『代議制民主主義 「民意」と「政治家」を問い直す』

でした。

中公新書はいい本がありすぎて、とても3冊だけでは足りないですね。奇をてらっても仕方がないので、素直に選びました。

「中公新書はスタンダードな入門書の決定版だ」という観点から選びましたが、同じ基準でも他に数十冊は選べそうです。

特に最近は、同世代の研究者が次々と、これは定番となるなと予感するような、完成度の高い、しかも新しい視点で書いた中公新書を、出していきます。書く方もすごいですし、編集部もよく頑張っていますね。

他にも、三浦瑠麗さんや武田砂鉄さんなどが同じく「私の好きな中公新書3冊」を挙げています。

今月『欧州複合危機』を刊行した遠藤乾さんの著者インタビューも掲載されています。

そして、私も3冊の中に入れた『国際秩序』の著者の細谷雄一さんのインタビューが載っているではありませんか。

読んでみますとこれは、このサイトのオリジナル・コンテンツ!、本邦初公開?ですね。

細谷先生の書斎、それも母屋の書斎とは別の、もう一つの書斎部屋が公開されています。なんと細谷さんの自宅マンションは別室付きで、「アネックス」には息抜きのための本が置いてあるとか。なんとも羨ましい。

しかも随分手をかけて本棚を整備しているようではありませんか。同世代の先端を走っておられます。

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秋は学会(3)アジ研のセミナー「中東域内政治の新展開」でモデレーターを

秋の学会の流れでもう一つ。

ジェトロ・アジア経済研究所の「専門講座」が赤坂アークヒルズのジェトロ本部内で開かれます。イラン、トルコ、サウジの専門家が報告し、私はモデレーターを務めさせていただきます。

アジア経済研究所専門講座「中東域内政治の新展開——イラン・トルコ・サウジの視点から」
2016年11月4日(金)14時30分~17時05分 (開場:14時00分)

参加は無料です(先着200名)。ウェブサイトから事前申し込みが必要です。

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アジア経済研究所(通称「アジ研」)は、日本でほぼ唯一の(世界でも稀な)、発展途上国全域をカバーした地域研究・開発研究の機関で、かつては独立した特殊法人でありましたが、橋本行革の際に共に経済産業省管轄の特殊法人だったジェトロ(日本貿易振興会・当時。現・日本貿易振興機構)と統合しました。以前は曙橋(防衛省の隣・現在は中央大学の市ヶ谷キャンパスの建物)にありましたが、現在は海浜幕張に移転しています。

ジェトロとの統合効果で、こういった広く関心を呼びそうな講演会・セミナーは、都心・赤坂のジェトロ本部の大きなセミナールームで開催してくれます(多くは無料。有料の場合も数千円程度です)。

私の最初の就職先もこちらで、10年・20年かけて研究者を育ててくれるこの組織の特典を利用することもなく、3年で転出してしまい、おそらく最短滞在記録のOBとなってしまいましたが、その後もなにかと研究会・講演会など、あるいは専門誌への論文の寄稿特集の企画・編集などで声をかけてくださることがあり、新たに創刊された現代中東分析の学術誌『中東レビュー』にも長い論文を寄稿させていただきました。今後も編集のお手伝いをしたり、論文を投稿するなど、関与していきたいと思っています。

今回も、シニアの研究員から、若手のすでに実績ある研究員まで、経産省傘下の機関ならではの、豊富な人的・組織的リソースを動員して、専門知識を一般に公開してくれますので、ぜひご来場ください。

詳細はこちらから

念のため、セミナーの紹介文を以下に貼り付けておきます。

9.11米国同時多発テロから15年目の今年、米国では第45代大統領を選出する選挙が大詰めを迎え、欧州を巻き込みながら激動を続ける中東情勢もまた再び新たな段階に入ろうとしています。本講演会では中東情勢を理解するための最も重要な要件でありながら日本では正面から取り上げられることの少ない中東の域内国際関係を各国の専門家が整理し、今後数年間の見取り図を得ることを目的とします。

2011年初頭からの「アラブの春」を経た現在、中東域内の主要なアクターは大きく様変わりしており、それはイラン、トルコ、サウジアラビアの三カ国であるとみられます。米国の新大統領が最初に取り組むべき最大の課題のひとつはシリア問題でありますが、この三国はシリアに関してそれぞれ異なる利害を有しています。

さらにこれら三カ国間の相互の二国間関係はそれぞれ錯綜しており、一国からのみの視点では到底バランスのとれた理解に至ることは難しいです。そこで本講演会では上記三カ国の専門家が幾つかの共通の設問についてそれぞれの国の立場からの回答を試み、最後の質疑応答および討論の時間に中東政治の今後数年間の展望に至ることができれば幸いと考えます。

皆様のご参加をお待ちしています。

開催日時
2016年11月4日 (金曜) 14時30分~17時05分 (開場:14時00分)

会場
ジェトロ本部5階 展示場 pdf
(東京都港区赤坂1-12-32 アーク森ビル5階)
最寄り駅:東京メトロ 南北線六本木一丁目駅・銀座線溜池山王駅・日比谷線神谷町駅

プログラム
(予定)

14:30~14:40
趣旨説明
鈴木均(新領域研究センター上席主任調査研究員)

14:40~15:10 講演1 「イランからみた中東域内政治」
鈴木均

15:10~15:40
講演2 「トルコからみた中東域内政治」
今井宏平(地域研究センター 中東研究グループ研究員)
15:40~15:55 休憩

15:55~16:25
講演3 「サウジアラビアからみた中東域内政治」
福田安志(新領域研究センター 上席主任調査研究員)

16:25~17:05
質疑応答・討議、総括
<モデレーター>
池内恵 氏(東京大学先端科学技術研究センター准教授)
<パネリスト>
鈴木均
今井宏平
福田安志

使用言語
日本語

主催
ジェトロ・アジア経済研究所

参加費
無料

定員
200名 ※定員になり次第、締め切ります。

お申し込み締切
2016年11月1日(火曜)17時00分 (ただし、定員に達した場合、事前に締め切らせていただきます。)

※ 取材のため会場内にメディアのカメラや撮影チームが入る可能性もありますのでご了承ください。