チュニジアの風景(10)前菜はハリッサ

チュニジアで飲む(その2)

どこのレストランでも飲み屋でも、前菜というとこのハリッサという赤いディップみたいな前菜が出てくる。唐辛子が効いている。辛さは店によってまちまち。

チュニジア食前菜はハリッサ

たいていは上にツナが載っている。オリーブの実が添えられていたり、オリーブ・オイルに浸してあったりする。

チュニジア食前菜ハリッサ高級

高級レストランの前菜にもやはりハリッサがちょびっと(スィーディー・ブーサイードの「アブー・ザッルーク」)。

チュニジア食前菜

前菜によく添えられている、玉ねぎとセロリと白菜の中間ぐらいな野菜。ばりばり食べます。

チュニジア食焼きサラダ2

チュニジア名物焼きサラダ。

チュニジア食焼きサラダ

こっちでも。

チュニジア食飲み屋のつまみセット

簡素な前菜セット。ソラマメのふかしたのも。

チュニジア飲み屋セルティア

チュニジアのビールといえばセルティア。泡が多すぎたのでしばし待つ。

チュニジアの風景(9)酒が飲めるぞ

チュニジアは酒が飲めます。

薄暗い酒場で地元ワインをいただく。

チュニジア酒場2
シャトー・モルナーグのロゼ

チュニジア酒場1
マゴンの赤

チュニジア飲み屋4
思い思いにくつろぐ。

ブルギバ広場飲み屋街
夜更けの飲み屋街。そろそろどこも閉店。ブルギバ通りの横道。

チュニジアの風景(8)色鮮やかな扉

チュニジアといえば、色鮮やかな、風合い豊かな、ドアで有名。

絵葉書とかでも様々に売っています。

いくつか写真を撮ってみました。あくまでも偶然通りかかったところだけ。

チュニジアのドア1

チュニジアのドア2

チュニジアのドア3

チュニジアの風景(7)雨に打たれるイブン・ハルドゥーン像

イブン・ハルドゥーン像について書きかけて、『歴史序説』日本語訳が文庫でまで絶版(なんのための文庫なんだろう)と知って絶望してしまったが、気を取り直してチュニジア報告。

ブルギバ広場のイブン・ハルドゥーン像。ちょっと別のアングルで見てみましょう。

正面から、少し引いたところから。

ん?

イブン・ハルドゥーン像3

有刺鉄線が写っていますね。

実は、ここのところ、ブルギバ広場のイブン・ハルドゥーン像は、こうして有刺鉄線で囲まれてしまっているのです。

もう少し引いて横から。

イブン・ハルドゥーン像とフランス大使館

見えにくいかもしれませんが、ぐるっと有刺鉄線で囲まれてしまっています。

これはテロ対策でしょう。

といっても、イブン・ハルドゥーン像がテロで狙われるというのではないでしょう。写真の背後の赤みがかった建物が、フランス大使館で、おそらくここを狙ったテロを防止するか、この前でのデモを阻止するために、イブン・ハルドゥーン像のある一体に有刺鉄線を張って、入りにくくしているのです。

大聖堂イブン・ハルドゥーン像前

ちなみに、イブン・ハルドゥーン像を挟んで、フランス大使館とブルギバ広場の反対側で向かい合うのは、カソリックの大聖堂(Cathedral of St. Vincent de Paul)です。大司教を擁する、最高位の大聖堂です。

イスラーム世界の社会と政治を宗教的ドグマにこだわらずに客観視したイブン・ハルドゥーンの像が、フランス大使館とカソリック大聖堂に挟まれて、内務省当局が張った有刺鉄線に囲まれ(守られ)てかろうじて存立し得ているように見えるのは、現在のアラブ世界の混迷を象徴しているようであります。

そう思って、上のように、イブン・ハルドゥーン像が雨に打たれている寂しい写真を撮ってみました。

チュニジアの風景(6)イブン・ハルドゥーン像

チュニジア生まれのイブン・ハルドゥーン。

言わずと知れた、不朽の名著『歴史序説』の著者。

ブルギバ広場の、時計塔とは逆の端に、銅像が建っています。

イブン・ハルドゥーン像1

『歴史序説』は歴史学者(東大寺管長でもあった)の森本公誠氏による名訳が岩波文庫に入っている・・・・

と書いたところで調べたら、なんと、品切れ・・・・

いくらなんでもひどいんじゃないかと思いますよ。

アマゾンで品切れになっているだけでなく、岩波ブックサーチャーでもはっきり品切れと出ています。絶版かどうかはっきりさせていませんが、入手不能ということです。

最近、まともな本、今読むべき本が、ことごとく品切れあるいは絶版であることに気づき、本当に日本の出版界はダメになったな、と痛感するのだが、イブン・ハルドゥーン『歴史序説』なんて、「日本人はイスラームを知らない」とか説教する意識高い系出版人たちなら、当然品切れなんてさせちゃいけないはずの本ですが。適当な本を乱造する前に、すでにあるまともな本を流通させなさい。

もちろん、『歴史序説』の英訳本は、常に、英語圏で簡単に手に入ります。本屋にも売っているし、アマゾンですぐに買える。

ということは、これからは日本人は『歴史序説』を読みたければアラビア語で読めなければ英語で読むしかなくなるのか。途上国ではそれが当たり前です。自国語ではまともな本が手に入らないから、知識人・エリートは英語で読むようになる。一般人向けとされる低劣な書物が現地語では行き渡る。陰謀論とかそういう類の本ばかりになる。

もうなってるか日本でも。

日本語の言論空間は、出版社が低レベルの本を短期間に売る競争を繰り返すうちに、先進国とは言えないものになってきたことを痛感しました。

おしまい。

チュニジアの風景(5)ブルギバ通りの内務省ビル向かいにてお茶

チュニス・ブルギバ通りのランドマークの時計塔が見えるカフェに座って新聞でも読んでみようか。

朝ごはんの直後ですので、長い影が差しています。

チュニジア内務省前3

ん?

チュニジア内務省前1

なんだかいかつい黒服の人が多いような。

実はここは内務省ビルの向かいなのです。右手に黒い門があって、金色で内務省と書いてありました。

チュニジア内務省前2

内務省ビル前は有刺鉄線が張ってあって通行人が近づきにくくしてある。

チュニジア内務省前4

新聞の一面トップは、

「内務省爆破を計画した32名の過激派を拘束」

でした。

早々に退散。

(まあこういうおふざけはしないほうがいい。その後、バルドー博物館のテロがあり、そしてその後、さらなるテロを予告する「イスラーム国」賛同者あるいは愉快犯が、まさにこの場所で撮影した映像をネット上に公開し、「ターゲットの前に潜入」したことを誇示して当局を嘲笑し、話題になった。チュニジアがある程度自由だからこそそういうこともできてしまうのだが、これがブルギバ広場での本当のテロに結びつくかどうか注視しないといけない。というか今こんな記事をわざわざ持って写真を撮っていたら「御用」となるかもしれない)

チュニジアの風景(4)ブルギバ通りの眺望

チュニスといえばブルギバ通り(広場)。2011年1月14日にベン・アリー政権を崩壊させた大規模デモも、ここに集まりました。「アラブの春」の導火線となった事件です。

ブルギバ通りの端にある、ランドマークの時計塔。

ブルギバ通り時計塔

上から見るとこんな感じ。写真の中央部に写っているの無表情なビルが内務省。大規模デモはここを目指した。向かいは与党立憲民主連合(RCD)の本部でした。

ブルギバ通り見下ろす1

この大通り・広場を群衆が埋め尽くしたのですね。それがアラブ世界の動乱の全ての始まりだった・・・

ブルギバ通りとホテルアフリカ

高いビルはホテル・アフリカ。

チュニジアの風景(3)スィーディー・ブーサイードはこんなところ

昨日は、チュニス近郊スィーディー・ブーサイードへの行き帰りの電車の中の親子の写真だけを紹介しましたが、スィーディー・ブーサイードそのものの写真を載せていませんでしたね。

日曜日に、ふと思い立って、チュニジアの一般人の休日の過ごし方を写真に撮りに行ったのでした。昼前に出かけて昼過ぎには帰ってきました。たいして時間はかかりません。

チュニスのど真ん中のブルギバ広場の端から少し行ったところにあるチュニス・マリン駅から近郊電車に乗って、20分から30分ぐらい揺られていくと、スィーディー・ブーサイード駅に着く。

スィーディー・ブーサイード1

みんな降りますから降りましょう。降りるとみな一方向に、ざっくざっくと歩く。カップルたちに遅れないように必死で歩きましょう。

街路樹に柑橘類が実っています。ちなみにこれ2月です。日本並みに寒いのでみな着込んでいますね。

スィーディー・ブーサイード2

坂道をざっくざっくと歩く。土産物屋などが見えてきました。京都の清水寺へ向かう参道の坂道みたいな感じですね。

スィーディー・ブーサイード4

道すがらに

スィーディー・ブーサイード8

こういうカフェなどが立ち並んでいるわけです。

スィーディー・ブーサイード5

中に入るとこんな風景が一望できたりするわけです。

スィーディー・ブーサイード9

記念撮影とかしているわけです。

スィーディー・ブーサイード7

テラスに出るとこれがまたいいんです。

それはともかくみなさん脇目も振らずざっくざっく歩くわけです。そして岬の突端まで行くと、絶景なんです。

スィーディー・ブーサイード3

そこで記念撮影するんです。

マリーナ・スィーディー・ブーサイード1

眼下にはこじんまりとしたマリーナが。

マリーナ・スィーディー・ブーサイード3

いろんなポーズ取るんです。

スィーディー・ブーサイード11

男の友情なんです。

ではまた。

チュニジアの風景(2)スィーディー・ブーサイードの休日

チュニジアの休日。チュニスの休日の過ごし方の定番は、近郊の景勝地スィーディー・ブーサイードへの遠足。

地元の人たちと一緒に電車に揺られて行ってみた。混んでます。

チュニジア・スィーディー・ブーサイード1

ユースフ君(3歳)

チュニジア・スィーディー・ブーサイード5

くれました〜。

チュニジア・スィーディー・ブーサイード8

もうあげないよ。

チュニジア・スィーディー・ブーサイード12

あー全部取られるところだった。もう降りる。

チュニジア・スィーディー・ブーサイード13

帰路は、ヌールちゃん(1歳)と。まだしゃべれません。

チュニジアの風景(1)ザイトゥーナ・モスク

〜原稿が佳境に入っているため、ブログ更新は風景画像に切り替わりました〜

チュニジア・ザイトゥーナ・モスク1

チュニジア、チュニスのザイトゥーナ・モスク

チュニジア・ザイトゥーナ・モスクから見下ろす

ザイトゥーナ・モスクから見下ろす

『中東戦記』が少部数のみ増刷に

ほぼ品切れで、店頭に残ったもののみになっていた、ジル・ケペル著『中東戦記  ポスト9・11時代への政治的ガイドブック』(池内恵訳、講談社選書メチエ)が、600部という少部数で増刷が決まりました。4月27日には店頭に出回る予定です。

ケペル『中東戦記』

邦訳で副題につけたように、中東の政治・社会を読み解くための、最高度の専門家の目を通した不滅の「ガイドブック」です。

「ジル・ケペル『中東戦記』を、市場からなくなる前にどうぞ」(2015/04/04)と書いておきましたが、もともと出版社の元にはほとんど残っておらず、書店の棚にあったものが売れて、入手が難しくなっているようです。

少部数のみの増刷で、もう増刷されない可能性もあるので、ご要望の方は今のうちにアマゾン書店でご予約を。予約していただければ27日頃に届くと思います。

イメージは「名著復刻」の企画みたいな感じですね。

しかし600部というと、講談社のような大きな出版社にとっては、増刷にかかる労力と売り上げ(もし売れたとして)を比較考量すれば、持ち出しみたいなものだ。よく増刷してくれた、と思うとともに、そこから翻訳者に回ってくる印税など微々たるものなので、ここまでの小規模ロットで出荷できるようになると、末端の書き手にとってビジネスとして成り立つのか?という疑問は沸きます。私は今のところ原稿料収入で生活しているわけではないので、公共の情報提供として採算を考えずにやっているが、将来はどうなるかわからないので、水準を保った文章を書く職業が存在し続けられる経済環境が維持されるか、発展するかは気になります。

しかしともあれ、こうして本が生き続けることはうれしい。

今年の桜

休日の先端研。

うららかな陽気。

先端研2015_0418

気がついたら桜は散っていた。緑の枝が風にそよいでいる。気持ちがいい。実は動画も撮ってみました。鳥の鳴き声が入っています。

先端研2015年4月

大正時代からの建物と、現代建築が並存する先端研・生産研。

左側は原広司設計。生産研の先生でもあったんですね。

何か見覚えがあると思う人がいるかもしれません。原広司は京都駅ビルの設計者。時期もほぼ同じです。

今年は3・4月に何をしていたのか思い出せない。おそらくひたすら講演や研究会報告のために移動しながら、分秒を争って部屋の中でずっと原稿を書く作業をしていた。気づいたら先端研の満開の桜を見逃してしまった。

去年のをどうぞ

去年も忙しかったが、4月はちょうど桜の季節に、一瞬だけ時間が空いて、これを撮ったのだった。

昨年は3月末にかけてばたばたっと論文が出たのでした。それまでが大変だった。しかしそれがあったので、2014年の暮れには今度はすごい速さで『イスラーム国の衝撃』を書くことができた。

今年は苦しい積み上げをもう一度、やり直さないといけない。できるのか。

生産研下2015_04_18

駒場の教養学部のキャンパスに本を買いに行った。八重桜はまだ咲き誇っており、深まる緑とのコントラストが目に優しかった。

駒場I_八重桜_2015-0418

駒場I_八重桜2_2015_0418

駒場_日本民藝館2015_0418

中東政策の「オバマ・ドクトリン」が詳細に明かされる

週末の視聴。今週はこれを推奨。先週に出ていましたが、忙しいのでじっくり検討する時間がなかった。聞いてみると、やはり色々考えさせられた。

Thomas L. Friedman, “Iran and the Obama Doctrine,” The New York Tims, APRIL 5, 2015.

4月5日にニューヨーク・タイムズのウェブサイトで公開された、オバマ大統領の中東政策をめぐる詳細なインタビュー。聞き手はトマス・フリードマン。46分もある。

4月2日のイラン核開発問題での暫定合意を受けたもの。

イランをどう評価するか。合意によってイランの行動や性質をどう変えられるのか。合意がイスラエルや湾岸産油国との関係をどう変えるか。非常に論理的に、理知的に、解き明かしています。

外交に関する「レガシー」構築を狙うオバマ大統領の、後々まで参照され検証されることになるインタビューでしょう。

言っていることは、分析としては、かなり納得がいく。問題のとらえ方、概念の使い方などが非常に正確で、また実態に即したニュアンスが込められている。

ただし、中東の現地に及ぼす強大な権力を持つ米大統領がこれを語ることが、中東諸国・中東国際政治に与える影響は、また別だろう。

これまで敵対してきたイランを、中東の地域大国として認める表現が繰り返される。慎重に留保をつけながらも明らかに大統領の本心は、かなり信頼できる地域大国としてイランを評価していることが分かるようになっている。それに対して、これまで同盟国として扱ってきた国に対する姿勢は厳しい、あるいは冷淡だ。

フリードマンの要約文から引用すると、
“The conversations I want to have with the Gulf countries is, first and foremost, how do they build more effective defense capabilities,” the president said. “I think when you look at what happens in Syria, for example, there’s been a great desire for the United States to get in there and do something. But the question is: Why is it that we can’t have Arabs fighting [against] the terrible human rights abuses that have been perpetrated, or fighting against what Assad has done? I also think that I can send a message to them about the U.S.’s commitments to work with them and ensure that they are not invaded from the outside, and that perhaps will ease some of their concerns and allow them to have a more fruitful conversation with the Iranians. What I can’t do, though, is commit to dealing with some of these internal issues that they have without them making some changes that are more responsive to their people.”

同様の問題意識は繰り返して念を押される。
As for protecting our Sunni Arab allies, like Saudi Arabia, the president said, they have some very real external threats, but they also have some internal threats — “populations that, in some cases, are alienated, youth that are underemployed, an ideology that is destructive and nihilistic, and in some cases, just a belief that there are no legitimate political outlets for grievances. And so part of our job is to work with these states and say, ‘How can we build your defense capabilities against external threats, but also, how can we strengthen the body politic in these countries, so that Sunni youth feel that they’ve got something other than [the Islamic State, or ISIS] to choose from. … I think the biggest threats that they face may not be coming from Iran invading. It’s going to be from dissatisfaction inside their own countries. … That’s a tough conversation to have, but it’s one that we have to have.”

さらにフレーズを抜き書きすると、

・・・the question is: Why is it that we can’t have Arabs fighting [against] the terrible human rights abuses that have been perpetrated, or fighting against what Assad has done?

・・・how can we strengthen the body politic in these countries, so that Sunni youth feel that they’ve got something other than [the Islamic State, or ISIS] to choose from. … I think the biggest threats that they face may not be coming from Iran invading. It’s going to be from dissatisfaction inside their own countries.

といった形の非常に痛烈な改革要求です。これを安全保障支援と引き換えに要請された湾岸産油国がどう反応するか。すでにちらほら反応が伝えられていますが・・・

今年春にキャンプデービッドで開かれるとされる、湾岸安全保障をめぐる会議に注目しましょう。ここでイランを含む湾岸安全保障枠組みができるのであれば、まさにレガシーでしょう。

単にGCCを集めて説教して武器を(有料で)つけてあげるだけでは、たぶん実効性は乏しいでしょう。

カーターの人権外交のように、善意は分かるが現地の社会や政治指導部の反応は全く意図に反するもので、結果的に混乱と紛争をもたらすことにならないか、不安である。

なお、米国が湾岸産油国に核の傘を差し伸べるという形での安全保障は与えられるのか、という点について、米国の元クウェート大使は「国益と価値を共有していないので、やめておいたほうがいい」とのこと

Some have suggested extending a nuclear umbrella over the GCC states and other regional allies as a confidence-building measure and to convince them not to develop their own nuclear weapons capacity. However, Richard LeBaron, a former US ambassador to Kuwait, said at a recent Washington event that that would be a “bad idea” because such guarantees should go only to “people who share very closely our interests and values.”

My lecture on the spontanuous mechanism of participation-mobilization of global jihadists

A short lecture given to Yomiufi Shimbun last month was translated on The Japan News. The comment revolves around the mechanism behind the spontaneous proliferation of global jihadists in dis-contiguous pockets of disturbances.

“Radicals spontaneously join ISIL network.” The Japan News, April 12, 2015.

元になる日本語のインタビューはこれ。
「【インタビュー】読売新聞3月25日付「解説スペシャル」欄でイスラーム国とチュニジアについて」(2015/03/26)

これを英語向けに表現を改め、論理を明確にしています。日本語の新聞は非常に曖昧な表現が多用される。そのまま英語に訳されると、私が朦朧とした論理の人だと思われて致命的ですので、ぴしぴしと書き改めました。

ちなみに日本語版のこのインタビューを拡大して、この本の日本の出版・文化現象としての意味を縦横に語ったのが、有料版の別立てインタビュー。

「「読売プレミアム」で長尺インタビューが公開」(2015/03/28)

実はこれはもっと読んでほしいなあ。よそでは言わないことを言っています。お試し版でも登録してみてください。

サウジの石油価格下落放置の究極の狙いは「需要の維持」とする説

石油価格が低下傾向に入ってから10ヶ月ほど。米国のシェールオイルの生産の落ち込みが始まり、今年1月にはブレント指標で50ドル/1バレルを割り込んだが、サウジのイエメン介入が地政学リスクの認識を高めたせいなのか、4月14日には58ドルまで上がっている

しかし、昨年後半以来の石油価格低下を、サウジが止めようとしなかったこと、特に、OPECでの価格引き上げ策を積極的に拒否して下落を加速させたことについては、透明性のないサウジの意思決定メカニズムも絡んで、盛大な憶測を呼んできた。

例えば、

(1)市場コモディティ化や非OPEC産油国の増大から下落を止める能力がない以上、シェアの確保を優先して価格低下は見逃している、という経済学的説明。

まあこれはそうでしょう。もっと攻撃的な意図を推測すると、

(2)米国のシェール・オイル潰し。

という、まあありそうな政治的な経営戦略の推測、

さらには検証のしようのない、

(3)実は裏で米国と結託して原油価格低下を推進しウクライナ問題で対立するロシア・プーチンを追い詰める策謀を行っている。

という話も飛び交い、さらに、その動機は

(4)老舗産油国のプライド(?)

等々といろいろな説明もなされていた。

しかし非常にわかりやすい、筋のとおった説明の記事が出た。

上記の戦略・戦術・策謀がないとは言えないが、もっと長期的に、需要の維持こそが大局的にサウジの国益となるのであって、そのためには石油価格は安くないといけないという判断がある、という説である。石油価格が高止まりしていると、代替エネルギーの開発が進んでしまうことは確かだ。

Peter Waldman, “Saudi Arabia’s Plan to Extend the Age of Oil,” Bloomberg, April 13, 2015.

Supply was only half the calculus, though. While the new Saudi stance was being trumpeted as a war on shale, Naimi’s not-so-invisible hand pushing prices lower also addressed an even deeper Saudi fear: flagging long-term demand.

ここでナイーミ石油相を大きく取り上げています。叩き上げで石油産業と市場の生き字引のようなナイーミ石油相に、深い叡智と先を見通す目が備わっているとみなすこの記事自体が、サウジの安定性を宣伝するサウジの広報戦略の一環である可能性はありますが、確かにサウジの指導部にはこの方面では非常に深い知見が蓄積されているでしょう。

「石器時代は石が枯渇したから終わったわけではない」というのはサウジのヤマニー元石油大臣の有名な台詞ですが、供給が問題なのではなく、需要がなくなることこそが恐怖、というのが、枯渇を考えなくていいほどの埋蔵量を誇るサウジの、他の産油国より一歩先を行った視点と言えるでしょう。

こういった記事が出ることも織り込んでいるのか、サウジ政府は、他の輸出国が協力しないなら生産調整しないよ、という価格低下構わずの姿勢を維持し、さらに「シェールも代替資源も歓迎してるよ」と余裕の構え

石油超大国としてこういうところはさすがに深いですが、アキレス腱は社会内部の過激な宗教勢力とか、寄せ集め地上軍の信頼性とかなのであろう。

「イスラーム国」とフセイン政権残党のつながり『ワシントン・ポスト』紙

「イスラーム国」のイラクの指導部にフセイン政権の関係者が入っているという『ワシントン・ポスト』紙の報道。

よく言われている話で、『イスラーム国の衝撃』でも言及しておいたが、特に決定的な目新しい情報があるわけでもない。しかしアラビア語紙でもそのまま転載されていることが多い。話題になっているので、参考読み物としてポストしておきます。写真も付いているし。

“The hidden hand behind the Islamic State militants? Saddam Hussein’s,” The Washington Post, April 4, 2015.