【寄稿】『週刊エコノミスト』の読書日記、ついでに資源安で商社は、重信房子の出身校など

本日発売です。

池内恵「世間が関心を持つと本質は見えなくなる」『週刊エコノミスト』2015年6月23日号(第93巻第25号・通巻4402号、6月15日発売)、57頁

『週刊エコノミスト』の読書日記連載も12回目になりました。先日このブログでお伝えしましたように、今回は開沼博さんの『はじめての福島学』(イースト・プレス、2015年)併せて著者の最初の本『「フクシマ」論 原子力ムラはなぜ生まれたのか』(青土社、2011年)

なお今回も電子版には収録されていません。


『エコノミスト』2015年 6/23 号

今回の特集は「商社の下克上」だそうで。

資源価格の低下は中東の産油国にも影響を与えるけれども、日本の商社にも影響を与えるのですね。

私はあんまり熱心に読んでないが「名門高校の校風と人脈」という連載があって、それなりに歴史のある高校の有名な卒業生を列挙しているのだが、今回は「都立第一商業」。

重信房子がここの卒業生だそうだ。

紹介文によれば「日本では犯罪者だが、アラブ世界では英雄視されている」という。間違いではないが、これは多分に日本側に流布している言説で、あちらのパレスチナ・ゲリラ筋の間で日本と関わりがある人が義理で「重信房子」の名前を言及するかもしれないが、一般的には誰も知らない。そもそもパレスチナのゲリラの非主流派の組織や人物のことを、アラブ世界の人々の大多数は忘れている。

東西冷戦が激しかった頃の日本と欧米の言説空間の中で「重信房子」幻想が生まれただけで、あまりアラブ世界の現実政治にも社会にも関係がなかった。日本との接点がなさすぎるので微かな接点ということで重信房子は取り上げられるけれども、基本は日本側の幻想・神話であると思った方がいい。

ただ、最近暇つぶしに(暇じゃないが逃避で)、「重信房子」幻想が炸裂している1970年代〜80年代前半の娯楽小説を1円とか100円とかで買ってきて読んでいるのでそのうちご紹介したい。〜くだらなくて脳みそが溶けそうになります〜

ちなみに『週刊エコノミスト』の記事では重信房子は辛淑玉と並べられていた。