【寄稿】『文學界』の「反知性主義」特集に

文芸誌の『文學界』の特集「『反知性主義』に陥らないための必読書50冊」に寄稿しました。

池内恵「『日亜対訳クルアーン』(中田考監修、作品社)」文學界、2015年7月号、167-169頁


文學界2015年7月号

タイトルを読んで字のごとく、中田考訳・監修の『日亜対訳 クルアーン』を一冊に挙げているのですが、そもそも反知性主義批判を主張する人たちの反知性主義っぷりに呆れて、特集全体に物申している内容のコラムです。

冒頭から、飛ばしています。

(前略)「反知性主義」が日本の出版業界のちょっとした流行りとなってこんな依頼が舞い込んだのだが、世に出る「反知性主義関連本」の著者はというと、どう考えてもまさに反知性主義者そのもの、といった面々が並ぶ。反知性主義に陥りたくなければまず、声高に他人を「反知性主義」と罵っているような人々の名前で出た本は読まない、というところから始めることが鉄則だろう。(以下略)

で、雑誌の頁をめくると前後に早速そういう面々とも数多く出会えるというオツな趣向です。

続きは読んでみてください。

Kindle版『イスラーム国の衝撃』が半額ポイントバックの対象に

ブログ再構築を指南してもらっている「ほっともっとの人」(→分からない人は検索機能を活用してみましょう)に指摘されて気づいたのですが、『イスラーム国の衝撃』のKindle版が、アマゾンの半額ポイントバック・キャンペーンの対象になっているとのことです。つまり、今買うと、800円の定価に対して400円分のポイントがついて実質半額だそうです。このキャンペーンがいつまで続くか分かりませんが、一度買ったらアマゾンが潰れるまで読めるわけですので、予備の電子版をお求めの方などはこの機会にどうぞ。
(追記:いつまで続いているか分かりませんので、よく確認してからご購入ください)

売れ筋アイキャッチ商品だということなんですね。なんだか隔世の感があります。

ザッカーバーグは読書会の課題図書にイブン・ハルドゥーン『歴史序説』を指定

マーク•ザッカーバーグのフェイスブック上の読書サロンA Year of Booksで次に取り上げるのはイブン・ハルドゥーンの『歴史序説』だという。

https://www.facebook.com/zuck/posts/10102158767549321

これはもちろん話題になっている。

http://english.alarabiya.net/en/media/digital/2015/06/02/What-s-Zuckerberg-reading-A-book-by-Muslim-historian-Ibn-Khaldun.html

http://www.businessinsider.com/mark-zuckerberg-the-muqaddimah-2015-6

このブログでもチュニジア紀行文の連載で『歴史序説』を取り上げましたね。ザッカーバーグの使っている写真もチュニスのブルギバ広場のイブン・ハルドゥーン像です。

http://ikeuchisatoshi.com/i-1319/

http://ikeuchisatoshi.com/i-1320/

ブログで記しましたが、日本では責任を持つべき岩波文庫が、『歴史序説』を品切れにして恬然として恥じない。これって『コーラン』が絶版、みたいな話ですよ。これ抜きにしてイスラーム文明を語れるはずがない。中東諸国の混乱を理解するためのヒントも、イスラーム世界が宗教を相対化するための視点も、ここに秘められている。


イブン・ハルドゥーン(森本公誠訳)『歴史序説 (1)』 (岩波文庫)

「英語圏ではすぐ手に入る」ということの意味、彼我の差を、感じてください。

システムで負けてるんです。欧米と違って中東で手を汚していない云々とか日本人の魂とか根性とか細かさが美質だとか気質とか言う前に、システムで対抗してくださいエラい人たち。

すでに各種の英訳が継続して入手可能になっていることを前提に、ザッカーバーグのような訴求力のある人が一声かけると、一層売れる。産業の好循環ができている。

日本だとこれが縮小循環で、非力な私が「これいいよ」と声かけるだけでも例えば数十人が競って買ってしまえば、もう手に入らなくなる。

ザッカーバーグに言われてこんな分厚い本を何千人、いや何万人が「試しに読んでみようか」となって、それに供給するシステムがちゃんとある国にかなうと思いますか?

別の話だが、とあるアメリカの田舎の実業家と交流プログラムで会話させられた時、ハンチントン『文明の衝突』について、「自分は難しい本の良し悪しはわからないが、この本を読んで、自分の子供たちがティーネイジャーになる前に、ハンチントンが示した文明圏をなるべく多く見せてあげたいと思ったんだ」と語り、すでに4つ回った、来年はインドに行くことにしている、といったことをつらつらと語るのを聞いて、その大らかさと突き抜け方に感銘を受けた。

日本だとちまちまと「ハンチントンのここが違う、あれが違う」「アメリカの世界支配のイデオロギーだ」とか文句つけて、知識人たる者ハンチントンを蔑んで見せないといかん、という空気に順応しないといけなくなる。そうではなくて「文明というものがいくつもあるらしいから、自分はそれを知らなかったから、子供達には頭が出来上がってしまう前に見せてあげたい」と考えて本当に連れ歩いてしまうような人がいる国、そういう国に日本もなればいいし、なれると私は思っている。


サミュエル・ハンチントン『文明の衝突』

実は、私は授業で学生に読ませたい本については、意識的にブログで紹介しなかったりしたこともあるんです。すみません。市場にちょっとしかない本を一般読者が好奇心でもって購入すると(すばらしいことです)、日本は本の出版と流通に問題を抱えているから、職業的に今すぐ手にとって線を引いて読んでいなければならない学生の手に渡らないということになり、教育に差し支えるので。

でも今後は手加減しないことにします。学生は好奇心旺盛なオジ様・大姉様・おジー様BAR様方に買い負けるな。得るものは若いうちに読んだ方が大きいはずだ。

なお、イブン・ハルドゥーン『歴史序説』の訳業を成し遂げた森本公誠先生は、イブン・ハルドゥーンの伝記を書いている。これは今読んでも高い水準。文庫版には、僭越ながら私が解説文を寄せさせていただきました。足元にも及ばぬ者が紙幅を費やしたことは恐縮至極だが、せめて普及にお役に立ちたい。

これも品切れっぽいが、Kindle版は買えます。


イブン=ハルドゥーン 講談社学術文庫

ブログをリニューアルしました

ブログをリニューアルしました。

2014年の1月に、ふと思い立ってブログを立ち上げたのですが、その時は技術的な知識はまったくゼロ。

米国や英国の若手研究者が専門分野に絞ったブログを設定し、それがその問題に関するポータルサイトのようになって、大学に職を得ることもなく早々と第一人者として扱われていくのを見て、研究者にとって新しいやり方だなあと思って、自分でもやってみるか、と気軽に始めたのがきっかけ。

日本語のブログを読むことはほとんどなかったし、mixiなども使ったことがなかった。

そのため、どのようなサービスがあるのか、どのようなツールを用いるのかもまったく知らず。探したり調べたりする時間もない。wordpressとか一瞬は興味を持ったものの、ちょっと調べると、これは私の現在の生活では習得や管理・維持は不可能、と早々に諦めた。

で、研究室に居ついている、いえいえ長い間研究支援でお世話になっている某研究員に、発注したわけですね。どこで始めればいいか、調べて提案するように、と。

こちらが示した条件が、

(1)使い方がとにかく簡単であること。なーんにも知らんでもできるやつ。

(2)アホな大学生が読んでそうなところであること。

イメージとしては、日本全国の大学生が、レポート書けと言われた時に、適当にググったら出てくるようなものを提供しておけば、成果の普及にはいいんじゃないの?と思ったわけなんです(「ググったら出てくる」状態にするにはどれだけ技術的な仕掛けが必要かなんてことも知りさえもしなかった)。

そうすると、若干ミスコミュニケーションがあった感じもする某研究員の絶妙の提案が、「FC2」だったんですね。とにかく簡単だ、と。

今から考えると、ある意味で的確に、こちらの出した二点の条件を踏まえた提案だったんですね・・・意図してのことかどうかはともかく。

こちらとしては何一つ情報がないので、是も非もなくこの案を採用して設定してみたところ、確かに簡単。ブログについて何一つ知らなくとも始めることができました。

それが、『中東・イスラーム学の風姿花伝』旧バージョン(http://chutoislam.blog.fc2.com/)でした。

しかし予想外に、ブログへのアクセス数が上がって行ったんですね。元来が、じわじわと読者が増えている感触はあったのだが、昨年10月の「北大生イスラーム国渡航未遂」事件に「中田考」というコンテンツが加わって倍増。そして「人質事件」で爆発的にアクセスが上昇してしまい、あらゆるところで「読んでますよ」と言われるようになってしまった。ほんのイタズラのつもりで始めたんですが・・・

SEOとか一切考えず、というかそもそもこの言葉すらよく知らずに、ただ簡単だ便利だといってあれこれ書き込んでいたら、私の扱うテーマの方が勝手に「炎上」してしまってブログの読者が増えてしまったのですね。

おかげで、本を出して新聞・雑誌に書いているだけでは到底得られない読者の広がりを持つようになりました。ありがたいことです。

しかしそうなると、いつまでも無料のブログ、それもいわくつきのFC2でやり続けることは不適切ではないかとのご指摘を方々から受けるようになりました。そうはいっても私としては技術的な知識ゼロのままやってきたので、ブログ移行なんて無理無理。そのための技術を勉強するなんて時間も気力も、まったくない。本業の方で必死に勉強するだけでも溺れそうです。

原付バイクみたいなものが置いてあったから乗っかって試しに動かしてみたらすごい勢いで動き始めてしまい、気づいたらサーキットで先頭を走っていて、しかし実は止め方も降り方も知らない、というような状態(加速の仕方だけはなぜか知っているんですが)。

しかしいつまでもそうしていられないな、と思っていたところ、手を差し伸べてくれる方がいたので(わかる人にはわかる、「ほっともっと」の人)、こうして独自のドメインまで得て、こちらが理想と考えていたデザイン・構成で、再出発することになりました。

というわけで、新バージョンの「中東・イスラーム学の風姿花伝」(ikeuchisatoshi.com)をよろしく。

旧バージョンからの記事も移行を済ませておりますので、これまでの記事を全て読むことができます。右側のサイドバーの下の方のアーカイブやカレンダーをたどって読んでみてください。

唯一残念なのは、旧ブログでついたFacebookの「いいね」は、移行できないのです。記事のURLが変わりますから。歴史的事件に際して、数万の読者を得た記事などは、歴史的記録として「いいね」の数も保存しておきたいものですが、そうもいかないようです。

むしろ、そのような短期的に高い関心を呼ぶ「フロー」ではなく、積み重ねの「ストック」として、新ブログは長く読まれていくことを願っています。

そうはいっても、「フロー」としての活用も意識して、新ブログは設計しました。

画面右にツイッターの窓を設け、@chutoislamというアカウントから、英語の記事をリツイートする形で、中東・イスラーム世界に関する最新の議論を紹介していくことにします。絞り込んだ数のアカウントをフォローして、手が空いた時に見てささっとリツイートするだけですので、網羅的ではありませんが、世界の中東をめぐる議論がフラッシュニュースのように流れる趣向になっています。

また、カテゴリーを一つの記事に複数設定できるようになりましたので、新たに「本の紹介」というカテゴリーを設け、いろいろなテーマの話をしながらちょこっとずつ本を紹介してきたものを、ひとまとめにできるようになりました。本は厳選して紹介してきましたので、読書案内にもなっているかと思います。

それではまた。