イスラーム政治思想のことば(8)ムスリム同胞団の失敗は、感情の捌け口を求める動き、暴力へと発展する

ムスリム同胞団の問題と限界3:

「第二の失敗はこれと関連するが、ある意味では、それは運動としての同胞団の失敗というよりはむしろ、その活動舞台となった社会の失敗である。つまり、その社会は、もはや【260頁】暴力がほとんど避けられない地点まで悪化してしまっているのである。同胞団がそれを救済しようと試みることは、その暴力に機会を与えるだけのものであったろう。そこでは、イスラムを再確認しようとすることは、現代生活での失敗に立ち向かう努力であるが、それを超克することには成功しないであろう。不幸にして、同胞団のある成員たち、さらには彼らに同調したり、また彼らと同じ道をたどる多くの人々にとっては、このイスラムの再確認は、納得のいくようなプラン、周知の目的、あるいはせめて切実に感じられている理想に基づく建設的なプログラムを意味するのではなく、むしろ感情のはけ口であった。それは永い間、貧困、無能、恐怖の餌食となっていた人々の憎悪、欲求不満、虚栄、破壊的暴力の表現であった。近代的世界にはもう飽き飽きしている人々の不満は、すべて同胞団のような運動にその行動と充足を見出すことができるものである。」W・C・スミス(中村廣治郎訳)『現代イスラムの歴史』(上巻、中公文庫、259-260頁)(2013年8月26日