ジャカルタ泊

ところで、今日はジャカルタに来ています。先週のドーハに続き1泊3日の弾丸出張。今日夕方着いてさっそく晩御飯から行事があり、明日一日会議をして、深夜にはもう日本に向けて発ってしまいます。ですので街は一切見られません。おまけに帰国は関空でそのまま別の仕事に。

こういう生活をしていると本が書けないのでそろそろ閉じこもらないといけません。

非公開の会議の写真を載せてしまうといけないので、ホテルの窓からの風景。あんまりよく撮れていませんが、特にどうという光景ではありませんが、ジャカルタらしいとも言える、特徴のない風景。
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まさに激変する湾岸の安全保障環境

先ほど、「激変する湾岸の安全保障環境」についての最近の論考についてアップしましたが、まさにペルシア湾岸産油国のもっとも重要な国、サウジで気になる動きが相次いでいます。

5月20日に発表されたところによれば、サウジのアブドッラー国王がモロッコで静養し、サルマーン皇太子が執務を代行するとのこと。
Saudi king on holiday, crown prince in charge: royal court, Reuters, May 20, 2014 11:12am EDT

アブドッラー国王は今年で90歳とされる高齢ですから、過去にも手術や長期静養で国を離れることがあり、アラブ圏のいかがわしいニュースサイトではしょっちゅう危篤説や死亡説が流れています。

今回も、単に静養や治療で国を離れて、また戻ってくるだけかもしれません。

そもそも「アラブの春」の変動が起こる前は、サウジの国王は長い夏休みをとって国を離れて、保養地に行ってしまったものでした。「アラブの春」の時も海外で静養していましたが、急遽戻ってきて、2011年は真夏もサウジのお役人さんたちが自国でせっせと働いているという珍しい光景が見られました。体制の存続がかかっていましたからね・・・

というわけで、国王が以前のように治療・療養で国を離れられるというのは、変動が一段落して安定したとみることもできないことはありませんが、年が年ですから、「ついにXデーか」という憶測が出回るのは不可避でしょう。

最近、サウジの最高指導層の人事移動が激しい、というところが、こういった憶測を加速させます。

時間がないのでデータはまたの機会に回しますが、次のような意味を持った人事が頻繁に行われています。

(1)すでに高齢化したサルマーン皇太子の次の「第二皇太子」に、第2世代王子では最年少のムクリン王子を任命した。→初代アブドルアジーズ国王の子の世代(第2世代)での権力継承の手順を確定した。

(2)第三世代王子の中から、軍・国家防衛隊など治安機構の副大臣を任命し始めている。→第3世代への権力継承の漸進的な進行。
(3)アブドッラー国王の子息が重用される一方、有力家系のスデイリ・セブン系統の第三世代王子で更迭されている者がいる。→ファハド前国王やスルターン前皇太子などのスデイリ・セブン系統の王子と、アブドッラー国王とその子孫および「その他」連合との権力闘争の発生?(そんな単純ではないでしょうけれども)

→はよくある憶測・推測・解釈(の一部)。

しかしこれらの人事が相互に必ずしも一貫していなかったり、一度任命された人がすぐに更迭されたりしているので、スムーズにいっているようにも見えないのです。アブドッラー国王が次世代に及ぶ安定的な体制を確立しようとする動きとも見えるのですが、逆に、権力闘争が激化して主導権が頻繁に移ることによってあらわれている動きかとも邪推させます。

さらに、国際関係では、3月13日、サウード・ビン・ファイサル外相(ずっと以前から登用されている第三世代王子ですね)が、突如、イランのザリーフ外相をリヤードに招くと発表。

イランの台頭におびえ、米国の弱腰や対イラン接近に憤り、突出した行動をとって攪乱するカタールとそれに支援された中東各地の諸勢力の引き締めに本腰を入れる、というのが昨年来のサウジの動きで、湾岸国際政治の基調となっていますが、今回のサウジによるイランへの手の差し伸べが何を意味するか、大変注目されています。

サウジの内外の動きが激しくなっています。

どうなるのでしょう。

【寄稿】中東・湾岸地域の安全保障『アジ研ワールド・トレンド』6月号

最新の寄稿です。

日本貿易振興機構アジア経済研究所の発展途上国分析の専門誌『アジ研ワールド・トレンド』6月号の特集「激変する湾岸の安全保障環境」に、論考を寄稿しました。

(現在は目次が載っているだけですが、刊行後2か月たつと各記事がPDFで無料ダウンロードできるようになります)

池内恵「中東地域の政治・安全保障における湾岸産油国の影響力──「アラブの春」後のGCC諸国の台頭とその持続性──」『アジ研ワールド・トレンド』第224号、2014年6月号、10-14頁

ペルシア湾岸の安全保障環境はまさに「激変」中で、この特集に皆で論文を出した後にも急速に動いています。

この特集が対象にするのは、ペルシア湾岸地域すなわち主にGCC諸国+イラン・イラクですが、それらの国を中心にして、パキスタンなど南アジアの一部を含んだ国際関係を考察したり、より広域の中東・北アフリカ(シリアなどの中東、エジプト、チュニジア、モロッコなどの北アフリカを含むエリア)の国際関係にペルシア湾岸諸国の最近の変動がどのような影響を及ぼしているか、といった課題を含んでいます。

私の論考は、ペルシア湾岸のアラブ産油国(GCC諸国)が、「アラブの春」以後に、より広い中東・北アフリカ国際政治へ影響力を増大させた「現象」を叙述し、その要因を考察し、今後の持続可能性について検討した・・・といったものです。米国の影響力の希薄化の「印象」がそこにどう影響を及ぼしているか、なども多少考慮しています。