エジプトでは昨日1月24日、複数の大規模な爆弾テロがあった。
最も重要なのは、カイロ警察本部の爆破。写真を見る限り、これはもう局地的な「内戦」「軍事攻撃」に近い規模になっているのではないかと思われる。
タハリール広場に近い内務省のビルは、近くの通りをブロックで封鎖して近づけないようにしてあるので、犯人側は、警察本部を標的にしたようだ。エジプトの治安の総本山が、道路に面した部分だけとはいえ、大破するような大規模な攻撃が起こるというのは、元来が治安が良く、一般市民の武装の度合いが低かったエジプトが変質したことを表わしている。
カイロ警察本部はポート・サイード通りという大通りに面していて、ここの交通を止めてしまうわけにはいかないので、守りにくいのは確かだ。
なお、ポート・サイード通りを挟んだ向かいには「イスラーム美術博物館」があり、その裏には「国立図書館」の新館で、中世の高価なマニュスクリプトなどを展示するコーラン展示室がある。どうやらここにも被害は及んだようだ。攻撃あるいは戦闘の規模の大きさをうかがわせる。
エジプトのテロはムバーラク政権時代に抑え込まれ、大規模な攻撃が生じるのはシナイ半島など、辺境地帯に限られていて、カイロなど中心部では事件が起きても小規模だった。それがムバーラク政権の末期から雲行きが怪しくなり、2011年の政権崩壊後に拡散を始めた。
特に、シナイ半島からスエズ運河を超えて、エジプト「本土」に大規模な攻撃が及ぶようになったことは、基本的に「安全」であるといえたエジプト社会が、根底から変わりつつあることを示すのではないか。
2013年9月5日のカイロでの内相爆殺未遂事件【「エジプト内相暗殺未遂事件の深刻さ」『フォーサイト』2013年9月6日」】、同年12月24日の北部マンスーラでの県警本部爆破事件【「エジプトの軍と過激派との全面衝突は「自由からの逃走」を加速させるか」『フォーサイト』2013年12月25日】、と「本土」では前例のない規模の大規模なテロが続いたうえでの、1月24日のカイロ警察本部を標的とした爆破・攻撃だった。
エジプトはどうなってしまうのか。