【今日の一枚】(33)トルコ侵攻後のシリア・イラク地図2016年9月

シリア内戦の最新の地図です。BBCが、IHS Conflict Monitorの情報に基づいて作成したもの。同様の地図をISWに基づいて出している報道機関も多くあります。

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“Islamic State group: Crisis in seven charts,” BBC, 7 September 2016.

ジュネーブで2016年9月9日深夜から10日未明にかけて、ロシアと米国の間で、シリア内戦の戦闘の緩和を目指すある種の合意が結ばれ9月22日にまず48時間の停戦が発効しました。しかし数日間・数週間程度は表面上戦闘の規模が収まっても(あるいは単に戦闘の報道が収まっても)現地の情勢が大きく変わるとは思えません。アサド政権とロシアは、反体制派を「テロリスト」と任意に指定して攻撃を続けることを認めるという、従来からの実効性のなかった停戦合意と構造は変わらないからです。

おそらく現地でもっと重要なのは、トルコ軍のアレッポ北方への侵攻と、トルコ軍に支援されたシリア反政府勢力による、シリア・トルコ国境地帯での支配領域確保でしょう。この地図では紫色で示されている部分です。シリアのトルコとの国境地帯の細い範囲が、過去の地図と比較すると新たに塗られています。2016年8月末から9月前半にかけての動きです。

この付近一帯への、トルコが設定を主張するがアメリカが認めていない「飛行禁止区域」がどの程度現実化するか。それが当面の鍵となりそうです。

そして、シリアからイラクを一体のものとして描き、アサド政権の支配領域、シリアからイラクにかけてのクルド人の支配地、トルコに支援されたシリア反体制派の支配地、シリアからイラクにかけての「イスラーム国」の支配地に描き分ける地図の描き方、その認識の視座が定着することこそが、今後のシリア内戦の終結に向けての国際合意や、イラクを含めた

シリアの反体制派の支配地がトルコと隣接した地域に集約されていく様子も、この地図から見えてきます。

さらに数年以内には、トルコの国内の、シリアに隣接したクルド人領域もこの地図に加えて描かれるなどということがあるのでしょうか。全くないとは言えません。