論文が刊行されました。
池内恵「冷戦後の社会思想史における「アラブ世界のイスラーム教」という問題」『社会思想史研究』No. 42, 藤原書店, 2018年9月, 9-19頁
昨年、学会の基調講演的なものを多く行ったため、今年度はそれらを論文にして学会誌に掲載していく作業を延々と続けています。
先ほど別のエントリにも記しましたが、時間がなくてブログを書けない時も、主要論文は固定ページの「論文」欄に厳選して掲載しています。
池内恵(いけうち さとし)が、中東情勢とイスラーム教やその思想について、日々少しずつ解説します。有用な情報源や、助けになる解説を見つけたらリンクを張って案内したり、これまでに書いてきた論文や著書の「さわり」の部分なども紹介したりしていきます。予想外に評判となってしまったFC2ブログ「中東・イスラーム学の風姿花伝(http://chutoislam.blog.fc2.com/)」からすべての項目を移行しました。過去の項目もここから全て読めます。経歴・所属等は本ブログのプロフィール(http://ikeuchisatoshi.com/profile/)からご覧ください。
論文が刊行されました。
池内恵「冷戦後の社会思想史における「アラブ世界のイスラーム教」という問題」『社会思想史研究』No. 42, 藤原書店, 2018年9月, 9-19頁
昨年、学会の基調講演的なものを多く行ったため、今年度はそれらを論文にして学会誌に掲載していく作業を延々と続けています。
先ほど別のエントリにも記しましたが、時間がなくてブログを書けない時も、主要論文は固定ページの「論文」欄に厳選して掲載しています。
シンポジウムに登壇しました。
2018年9月24日にイイノホールで行われた、朝日新聞社主催の朝日地球会議2018の初日に、来賓挨拶に続く第1セッションのGLOBE企画「中東はどこに向かうのか――紛争、イスラム、国際秩序」に登壇し、ジョージ・ワシントン大学中東研究所長のネイサン・ブラウン教授と、GLOBE編集長の国末憲人氏と共に、報告とパネルディスカッションを行いました。他の登壇者はいずれも旧知で気心の知れた、そしてその仕事を尊敬する先達であり、楽しみながら、緊張感に満ちたディスカッションとなりました。
シンポジウムについて、早速本日朝の朝日新聞で紹介されています。
「対立越えた世界へ 朝日地球会議2018〈1〉」朝日新聞, 2018年9月25日
報告と討論の私の部分については、次の箇所が紹介されています。
「東京大先端科学技術研究センターの池内恵准教授は、日本と中東の関係の転機として、15年1月に表面化したシリアでの日本人拘束事件を挙げ、「日本ではISが国際問題から国内問題になった」と述べた。「ISの理念はおそらく今も生きている」とする一方、領域支配がほぼ消滅したことで、中東で「ISという共通の何かがなくなることで、秩序が見えにくくなっている」と説明した。
ブラウンさんが中東と日本の政策の関わりを尋ねると、池内さんは、中東難民が選挙の争点になっている欧州と比べて「まだ遠い世界だ」と指摘。ただ、日本で今後、アジアからのイスラム教徒の移民受け入れが進めば、中東問題で「欧州が何をしたのか、どこが失敗だったのかを、15年後くらいには議論しているのではないか」と語った。」
【記録】
以下が事前にウェブサイトに掲載されていたシンポジウムの企画趣旨です。
GLOBE企画「中東はどこに向かうのか――紛争、イスラム、国際秩序」
中東が混迷を深めている。人々の期待を集めた「アラブの春」の民主化が頓挫し、テロや紛争、暴力も止まらない。アメリカの後退とロシアの介入、イランやサウジアラビアといった地域大国の対立、過激派の拡散など、情勢の流動化と枠組みの変化は、国際秩序にも影響しかねない。中東はどこに向かうのか。私たちはこの変化をどう受け止め、どう行動したらいいのか。イスラム研究で名高いネイサン・J・ブラウン氏と池内恵氏を迎え、朝日新聞GLOBEの現地取材報告も交えて、打開の糸口を探る。
パネリスト
ジョージ・ワシントン大学教授 ネイサン・J・ブラウン
東京大学先端科学技術研究センター准教授 池内 恵
ネイサン・J・ブラウン池内 恵
コーディネーター
朝日新聞GLOBE編集長 国末 憲人
少し遅くなりましたが、インタビューの掲載情報です。
「各国の言い分を「宣伝戦」と引いた眼で見る 池内恵氏の「中東を読むヒント」」朝日新聞GLOBE+, 2018年9月14日
GLOBE+は朝日新聞の日曜日に挟み込まれている国際情報誌GLOBEのウェブ版という位置づけです。
日本記者クラブで講演を行いました。
「著者と語る『【中東大混迷を解く】シーア派とスンニ派』池内恵・東京大学先端科学技術研究センター准教授」日本記者クラブ9階会見場, 2018年08月21日
講演の概要(担当記者によるまとめ)が日本記者クラブのウェブサイトに掲載されています。
ここのところブログの更新が途絶えていました。公的にも私的にもさまざまなことが重なって積もっており、整理しないといけないことが多く、なかなか時間が取れません。
ですが、主要論文については、固定ページの「論文」のところに書き込んでいっています。2017年度は様々な学会の基調講演的なものを行ったので、その成果を論文化する作業を2018年度は行っており、それらが順に活字になって手元に届きます(非会員だと送ってくれない学会もありますが)。今年度中にあと三つか4つほどこの欄に項目が増えそうです。
ここのところの活動について近くまとめてアップしたいと思います。
新潮社『波』6月号に挟み込まれている新潮選書のパンフレットに掲載されたインタビュー「やわらかい頭で中東を知りたい人に」が、このたび『フォーサイト』に転載されました。
5月25日に、新潮選書『シーア派とスンニ派』が発売されます。都内の早いところでは23日から書店に置かれるそうです。
ちょうど「新潮選書ベストセレクション2018」のフェアが各地の書店で開催されていまして、前作『サイクス=ピコ協定 百年の呪縛』もベストセレクションのリストに入っております。
これに合わせて、書店に配布される新潮選書のパンフレットにエッセーを寄稿しました。担当編集者によるインタビューの形です。このパンフレットは新潮社のPR誌『波』の6月号にも挟み込まれると思います。
池内恵「やわらかい頭で中東を知りたい人に」『新潮選書ベストセレクション2018』2018年5月(1−4頁)。
編集者とのQ&Aのスタイルで、この本の意図や、「中東ブックレット」のシリーズとしての目標、また中東情勢分析の基本ツールや、SNSによる情報収拾や読者とのコミュニケーションなどについて、かなり長く語っています(実際には編集者と書面でやりとりしましたが。本そのものを書くので忙しくて時間がなかったものですから)。『フォーサイト』での連載以来、私の担当をしてくださっていて、日々のFacebookやTwitterでの活動などもウォッチしておられる編集者ですので、的確な設問で、隙間時間にあっという間に、語るようにかけました。
なおこの新潮選書のパンフレットは、挟み込まれる『波』本体と比べてもなかなか質が高いものです。新潮選書の今月の新刊、牧野邦昭『経済学者たちの日米開戦 秋丸機関「幻の報告書」の謎を解く』については、猪木武徳先生と筒井清忠先生がエッセーを寄せています(猪木武徳「『ゆがめられた通説』に挑む」、筒井清忠「エリートは『暗愚』だったか」)。
この著者の前作も読んだことがあります(こちらは中公叢書)。こちらも「秋丸機関」をめぐるものです。
「秋丸機関」の戦時経済分析については一部でよく知られていますが、「正しい分析をした経済学者」「都合の悪いものだったから軍部が焼却した」という勧善懲悪的な構図で論じられがちです。
しかし猪木先生と筒井先生のエッセーをも読むと、牧野先生の新刊は、その通説を問い直して、開戦に踏み切った判断の作られ方について新たな説を打ち出したものであるようで、大いに楽しみです。
***
ちょうど2年前の2016年5月に『サイクス=ピコ協定 百年の呪縛』を出版した時も、ベストセレクションのパンフレットに書かせてもらいました。また、昨年9月には新潮選書の創立50周年を記念して『波』に選書について寄稿しています。
『シーア派とスンニ派』で、「中東ブックレット」がシリーズ化されたことになります。このフォーマットを使って、選書という媒体を用いた出版と情報発信の可能性を追求してみたいと思います。
本日のテレビ出演の記録。
2018年5月18日7:05−に、BSジャパンの「日経モーニングプラス」に出演しました。【番組Facebookアカウントのまとめ】
実際の出演時間は7時25分−7時45分の間で、八木ひとみキャスター、豊嶋広キャスター、そしてレギュラー・ゲストの松尾博文日本経済新聞論説委員と共に議論を行いました。
米国の中東におけるプレゼンスの低下を前提に、米のイラン核合意(JCPOA)離脱、米の在イスラエル大使館のテルアビブからエルサレムへの移転、シーア派とスンニ派の競合と対立、サウジとイスラエルの接近、サウジとイランの覇権競争の激化、そして近年のイラクでの選挙でムクタダー・サドルの台頭、ロシアの中東への影響力の増大といった問題について、解説を加えました。
番組には刷り上がったばかりの新潮選書『シーア派とスンニ派』を持参して宣伝もしていただきました。
『シーア派とスンニ派』の参考文献リストは、索引と共に、新潮社ウェブサイトに掲載することにしてあるので、本日、リストを選定して登録完了。やっと全て手が離れました。5月25日の発売日の前後に、参考文献リストも公開されるでしょう。『サイクス=ピコ協定 百年の呪縛』で立ち上げた「中東ブックレット」シリーズでは、単行本並みの内容ながら定価(本体)は1000円に収めようとしているため、ページ数を極限まで抑えるために、索引や参考文献リストについては新潮社ウェブサイトを適宜活用することにしています。
この「中東・イスラーム学の風姿花伝」ブログでも新潮選書『シーア派とスンニ派』の「サポート」を行なっていきたいと思います。
それでは皆さん良い週末を!
『ブリタニカ国際年鑑』の「宗教」の項目の中の「イスラム教」を、今年も執筆しました。
池内恵「イスラム教」『ブリタニカ国際年鑑』2018年版、2018年4月, 210−211頁.
『ブリタニカ国際年鑑』のこの欄を執筆するのは、今年で5年目。今年は、次の3点を重要事項として選定しました。
「イスラム国支配の終焉と小規模テロの拡散」
「トランプ政権のムスリム入国禁止と法廷闘争」
「啓蒙専制君主による改革の呼号」
ちなみに、過去4年間には次の事項を選んできました。
2017年版
「グローバル・ジハード現象の拡散」
「反イスラム感情とトランプ当選」
「イスラム教は例外か」
2016年版
「『イスラム国』による日本人人質殺害事件」
「グローバル・ジハードの理念に呼応したテロの拡散」
「イスラム教とテロとの関係」
2015年版
「『イスラム国』による領域支配」
「ローンウルフ型テロの続発」
「日本人イスラム国渡航計画事件」
2014年版
「アルジェリア人質事件」
「ボストン・マラソン爆破テロ事件」
「『開放された戦線』の拡大」
政治思想学会の学会誌『政治思想研究』に論文が掲載されました。
池内恵「米国オバマ政権末期におけるイスラーム認識の新潮流──「イスラーム国」の衝撃を受けて」政治思想学会編『政治思想研究』第18号(2018年5月)71−106頁
【目次はここから】
『中東協力センターニュース』4月号に、近年に高まる「1979年以前のサウジアラビア」という政治言説について、分析を寄稿しました。
池内恵「ムハンマド皇太子と『1979年以前のサウジアラビア』」『中東協力センターニュース』2018年4月号, 28 −41頁
近年に、サウジアラビアをめぐる言説の中で、支配的な要素となりつつあるのが、「1979年以前のサウジアラビアは、宗教的に寛容で、女性も社会参加をしていた」という言説です。
これは研究史から見て全く無根拠とは言えないのですが、かなり意図的に歴史認識を変更しています。国際テロリズムとジハードの関係、その背後の国家の支援や社会の規範に関する限り、「歴史修正主義」とすらなりかねないものです。
この言説が世界の言説空間に広まったのは、サウジのムハンマド皇太子がこれを用いたからですが、それをニューヨーク・タイムズ紙のトマス・フリードマンがどのように「援護」したか、代表的な論説を特定して、その言説を分析しました。
アジア経済研究所の研究雑誌『中東レビュー』に、米中東政策についての分析が掲載されました。3月末にウェブにアップロードされました『中東レビュー』第5号の、「政治経済レポート」の中に収録されています。エルサレム問題について、2017年末から2018年初にかけての段階で、少し踏み込んだ分析をまとめておきました。
池内恵「トランプ大統領のエルサレム首都認定宣言の言説分析」『中東レビュー』Vol. 5, 2018年3月, 6-12頁 【雑誌全体を無料でダウンロードできます】
『中東レビュー』には編集に助言しながら、なるべく欠かさず投稿し、地域研究と国際政治の手法・知見を踏まえて現状をたゆまず観察し、かつ日々の短期的な動きに追いまくられることなく1年ぐらいのタイムスパンで対象を分析し、論文として育てようとしています。
寄稿しました。
一般財団法人安全保障貿易情報センターの『CISTECジャーナル』3月号に、トランプ時代の中東国際秩序について、大まかな見取り図を記してみました。
池内恵「トランプ政権と中東秩序の再編」『CISTECジャーナル』2018年3月号・通巻174号, 111-116頁
ウェブからも読めますが、会員企業のみ、と思われます。
私の論考はともかく、輸出規制に引っかかりそうな品目と相手国との貿易をされている方は、ぜひ入会をご検討ください(ここでは冗談ですが、真面目な話でもあります)。
安全保障貿易情報センターは、3月17日に研究大会に招聘いただいた、日本安全保障貿易学会の事務局になっており、この『CISTECジャーナル』への寄稿も、学会発表の論文の事前草稿のようなつもりで起稿しました。こういった機会に刺激を受けて、少しずつ考えを深めていきます。
3月17日の研究大会では、第1セッションの「日本の安全保障貿易管理の30年」も聴講させていただいたのですが、安全保障貿易管理について政治・制度・学術研究の三つの方面から、発端と発展の経緯を、その道の大家が振り返ってくださる、門外漢にとって非常に蒙を啓かされるものでした。自分の専門分野の成果を持ち寄り、代わりにこういった別の分野の深い専門知識を持った方々から知見を分けてもらえるこのような機会に、学問をやっていてよかったと思います。
2009年に研究員として滞在したワシントンDC のウッドロー・ウィルソン国際学術センター(Woodrow Wilson International Center for Scholars)が最近立ち上げた、元研究員の同窓会ネットワーク(Alumni Network)の ブログ(Alumni Spotlight)に、コメントが掲載されていました。
2009年後半にウッドロー・ウィルソン・センターに所属して、支給される滞在費(月額を日本円にすると、これまで給料としてもらったことがないような結構な額なのですが)の大部分を費やして、ど真ん中、議会図書館と最高裁判所の裏に陣取り、ワシントンの政策決定の動き方、政策のアイデア競争を支えるシンクタンクとその背後の党派や資金源などをつぶさに観察する機会がありました。
ウィルソン・センターは50周年。大学ともシンクタンクとも違う、米国の政治と学術をつなぐ、類似したもののない独特の制度として定着しています。
2009年の滞在時の経験は、2011年初頭に勃発した「アラブの春」、その後の民主化の試みやムスリム同胞団の台頭、そして「イスラーム国」の出現などに際して、中東の現地の動きだけでなく、米国の反応をよりいっそう仔細に見極めなければならなくなった時に、大いに役に立ちました。「米国の中東・イスラーム政策」が、私のその後の継続的な研究テーマにもなっています。ある程度ながくやっていると、私があるテーマに取り組んで何かをするというよりは、テーマの方が私のことを助けてくれるような、そんな気になることがあります。
2007年だったでしょうか、私を米国に呼びたいとおっしゃる方、お世話してくださる方がいて、いろいろ工夫していただいたことで、ニューヨークとワシントンDCをかなりゆったり回って見聞を深め、ワシントンDCではジョンズ・ホプキンスのSAISに短期間ですが籍を置いたことにしてもらって調査して発表したり、大使館から、DCの学生たちまでの、さまざまな人たちに会うこともできました。
その後、2009年の夏いっぱいを、これまたどなたかが推薦してくださったようで、米国のアスペン研究所(The Aspen Institute)の年に一度の大きなイベントであるAspen Ideas FestivalとSocrates Program Seminarに、若い学者・実務家の卵が推薦されて来るAspen Ideas Festival Scholarとして招待していただいて(今どういうプログラムになっているか知りませんが、当時は、ビジネスクラスのチケットが送られてきて、ホテルも会場の一番いいところに用意されていて、高額の参加費は全額免除、義務は、スカラーのリストとプロフィールがプログラムに記載され、名札に小さくスカラーと書かれて、会場の好きなところをウロウロしていていろいろなセッションを傍聴して積極的に発言し、議論をふっかけて来る参加者がいたら相手する、という感じのものだったので、最高に恵まれていましたね)、政治家・官僚・学者・ジャーナリストが非公式に意見をすり合わせるための場の設定について、体感したことも、ウィルソン・センターでの調査に先立つ、目を開かせる体験であり、アメリカでの公的な議論の仕方に馴染むための、絶好のイントロダクションとなりました。
ウィルソン・センターやアスペン研究所やSAISなどへの訪問・在籍の機会は、ほとんど(あるいは全く)会ったこともない方々の推薦や尽力があって実現してきたものでした。「池内は中東だけではなく米国もやるといい」という、かなり多くの人たちの後押し、導きがあって、米国の最良の部分に触れられたことは、私の研究にいろいろな形で影響を及ぼしています。
それらの経験を栄養として成果を出し、世の中一般に向けて発表することが、どこかで私の仕事に目を留めてくださって、機会を与えようと取り計らってくださった方々への恩返しと考えています。
寄稿しました。
池内恵「中東の紛争は『シーア派とスンニ派の対立』なのか? 宗派主義という課題」『UP』第47巻第3号・通巻545号、東京大学出版会、2018年3月、40−46頁
「中東問題はシーア派とスンニ派の宗派対立である」と、よく言われますが、それは本当なのか。どの部分で本当で、どの部分では本当ではないのか。イラク戦争後のイラク新体制をめぐる紛争と、「アラブの春」後の中東諸国の混乱で、「シーア派とスンニ派の対立」「宗派対立」といった言葉は人口に膾炙するようになりましたが、実態はどうなのか。より適切な分析概念は何なのか。考察しました。
これは次に出る私の本の主題でもあります。
また、この論考は、「文献案内」として、大学の授業などで中東の近年の政治について考えていく際の、副読本のように用いることができるように工夫してあります。「アラブの春」後の政治変動をめぐる文献を、(1)大規模デモによる社会からの異議申し立ての原因や効果、(2)統治する側に回ったイスラーム主義勢力、(3)政軍関係、(4)国際的介入、などに分類して紹介した上で、近年の動向として、(5)宗派主義論の研究が多く現れていることを示してあります。中東について、最新の研究動向を追いながら現実を見ていくようなタイプの授業の、副読本、文献案内となるように考えて書いた論考です。
大学が変化していく中で、必ずしも各教員が自分の専門分野そのものだけを教えるのではなく、変化するニーズに応えて授業をしていくという傾向がある中で、中東現代政治を、大学の教養課程で、今では容易に手に入る英語文献に取り組みながら、勉強していけるための道しるべとして書いてみました。
学会報告の予定の通知です。同志社大学で行われる、日本安全保障貿易学会25回研究大会で、トランプ時代の中東地域の構造変容について大きな見取り図を出してみたいと思います。
池内恵「トランプ政権と中東秩序の再編」日本安全保障貿易学会・第25回研究大会・第2セッション「中東情勢及び中東に対する輸出管理」2018年3月17日(同志社大学室町キャンパス)【プログラム】
これが今年度の学会報告としては最後になりそうです。
2017年度は各学会の共通論題パネル(「シンポジウム」等の呼び名がそれぞれ違いますが)での報告の依頼が、集中的に舞い込みました【学会報告の一覧はこちら(日本語のもののみ)】。ほとんど毎週末のようにどこかの学会で報告していたような時期もありました。これまでの研究をまとめる良い機会と考え、お引き受けして精一杯務めさせていただきましたが、報告が終わると今度は学会誌への論文投稿が待っており、そこで苦労しているのが現在です。出口が見えつつありますが・・・
与えられた共通論題のテーマに沿わせて私の関心事項や懸案の課題についてまとめて発表したのですが、メディアの変化がイスラーム法の解釈の制度に及ぼす影響について(宗教法学会)、イスラーム思想とリベラリズムの関係をめぐるもの(政治思想学会、日本社会思想史学会、日本ピューリタニズム学会)といった、少しずつ重なり合ったテーマに取り組むことになりました。これらをそれぞれの学会誌の性質に合わせて論文として構成し直しております。これらが、全体として、私の研究を前に進めるものとなればいいのですが。
これ以外に、日本国際政治学会や戦略研究学会では自ら応募して、ジハードの国際政治や中東の戦略環境の変化について報告しました。これらも近く学会誌などに論文として投稿する予定です。
(年度末までにアンカラのシンポジウムで英語での報告の予定がありますが、これらを総合したような内容になりそうです)。