【寄稿】新潮社『波』6月号は新潮選書フェアの別冊が綴じ込みに

新潮社『波』2016年6月号

新潮社の『波』で、新刊『サイクス=ピコ協定 百年の呪縛』(新潮選書)について、インタビュー仕立ての解説を自分で書いています。

編集者との掛け合い、という形です。実際にこういう会話を編集者としながら本の企画を立てていったので、それを私が再現したという形です。

池内恵「日本人が陥る中東問題のワナ」[池内 恵『【中東大混迷を解く】 サイクス=ピコ協定 百年の呪縛』著者インタビュー]『波』2016年6月号

なお、このインタビュー形式のコラムは、月刊のPR誌『波』の中ほどに別冊のようにして綴じ込まれています。誌面の中ほどに、緑色の表紙がもう一度ついた別冊が入っていて、そこで新潮選書を特集しています。ちょうど新潮選書は5月に「ベストセレクション2016」というフェアをやっているのです。

『波』6月号の目次から新潮選書フェアの部分だけ抜き出してみましょう(この部分だけ紙質が変わり、ページ数が付されていません)。

新潮選書フェア
[猪木武徳『自由の思想史 市場とデモクラシーは擁護できるか』著者対談]
猪木武徳×宇野重規/自由と不自由のあいだ

阿川尚之『憲法改正とは何か―アメリカ改憲史から考える―』
待鳥聡史/憲法はどう生かされているか

[池内 恵『【中東大混迷を解く】 サイクス=ピコ協定 百年の呪縛』著者インタビュー] 池内 恵/日本人が陥る中東問題のワナ

[服部泰宏『採用学』著者インタビュー]
服部泰宏/うちの会社にとっての優秀さとは何か?

高坂正堯『世界地図の中で考える』
細谷雄一/なぜ「悪」を取り込む必要があるのか

新潮選書ベストセレクション2016

 

最後の新潮選書ベストセレクション2016ではフェアの一覧表が載っており、私の『中東 危機の震源を読む』も挙げてもらっています。

選書フェアに合わせてなのか、新潮選書の今月のラインナップは特に力が入っています。猪木武徳先生の『自由の思想史 市場とデモクラシーは擁護できるか』と、阿川尚之先生の『憲法改正とは何か―アメリカ改憲史から考える―』が同時に出ています。

また、名著として知られる高坂正堯『世界地図の中で考える』を再刊しています。

いずれも政治学や思想史、現代社会論や国際関係論の教科書として大学の教養課程で使えるようなものです。

そして上に目次を示した『波』6月号挟み込みの選書特集では、猪木先生の本については著者ご本人と東大の宇野重規先生の対談「自由と不自由のあいだ」が、阿川先生の本については京大の待鳥聡史先生の書評「憲法はどう生かされているか」が収録されています。

関連して調べていたら、待鳥先生が共編著でこんな本を出されるということも知りました。駒村圭吾・待鳥聡史編『「憲法改正」の比較政治学』弘文堂、2016年6月29日刊行予定

さらに『波』では高坂『世界地図の中で考える』について、慶應義塾大の細谷雄一先生が力の入った論考「なぜ「悪」を取り込む必要があるのか」を寄せています。

『波』そのものは書店に置いてあれば無料でもらえますし、年間定期購読しても送料程度しかかかりません。

今月号は特にお勧めです。

なお、新潮選書が、どこかかつての中央公論の趣を漂わせているのはなぜなのか、などと思ったりもします。

猪木・阿川先生の新刊や、高坂正堯の旧著も、いずれもかつての中公叢書で出ていてもおかしくないものでしょう。

「著者インタビュー」でも少し書きましたが、出版状況が激変する中で、私は選書という媒体を学術書や教科書を流通させるメディアとして活用できるのではないかと考えています。大学の学部課程で教科書として使うのに最適な本を、選書として出して、本屋の棚に常に置かれるようにし、少しずつ着実に売って広めていくようになれば、学術の発展・維持のためのインフラにもなり、出版産業の安定にも資することと思います。