書評まとめ(2)『イスラーム国の衝撃』

『イスラーム国の衝撃』への書評のまとめの続きです。(1)はこちら

3.週刊誌

『週刊新潮』2015年2月5日号(1月29日発売)、《書評欄》「『イスラーム国の衝撃』 池内恵著」(評者・林操)

この号は「イスラーム国」一色だったようですね。

『週刊ダイヤモンド』2015年2月7日号、《Book Reviews 知を磨く読書》「敵意を増大させる過剰な警戒」(評者・佐藤優)、84頁

第6章の帰還兵問題の項から「シリア・イラクからの帰還兵をすべて過激なテロリストととらえ、法を逸脱した対処策を適用すれば、かえって欧米への敵意を増大させ、実際にテロ組織の側に追いやりかねない。帰還兵への過剰な警戒は、自己成就的な予言となりかねないため注意が必要である」という部分を引き、佐藤氏は「確かにその通りであるが、過剰反応するのがインテリジェンス(諜報)の本性なので、帰還兵をめぐっては、「自己成就的な予言」が成就するのではないかと思う」と、自らが拠り所とするインテリジェンスへの悲観主義的なひねりを加えて返している。こういう発想と表現の反射神経は、「さすが」と思いますね。

『週刊エコノミスト』2015年2月10日号(第93巻第6号・通巻4383号)《話題の本》「『イスラーム国の衝撃』 池内恵著」

「読書日記」の連載もしているので取り上げてくれたのかな。

『週刊文春』2月19日号、《永江朗の充電完了》「電子書籍 危機一髪!」

次々と現れる電子書籍を読む、という趣旨の連載だと思われるコーナーで、こんなアプリやデバイスがあるのか、と普段興味深く読んでいるが、そこに自分の本が出てくると驚く。読んでみると、「ある仕事で池内恵の『イスラーム国の衝撃』の書評を書くことになった」とある。ところが書店を回ってもネット書店でも、売り切れで手に入らない。1月後半の品薄の時期ですね。締め切りは1月30日で、刻一刻と迫るがなおも手に入らない。それが1月28日発売のKindle版で「あいててよかった」(懐かしい)となり、危うく救われた、という話。

なお、永江さんは「紙版と同時発売だったらもっとよかったのに」と書いていらっしゃいます。

なぜ紙版と同時発売でなかったかというと、よく知りませんが、もしかすると私が書いたのがギリギリなので、単純に間に合わなかったのかもしれません。電子版にまで手が回らなかった。

私も個人的には、1月20日の人質殺害脅迫ビデオ公開で勃発した狂騒状態の1週間にKindle版が存在していたらおそらくフラッシュマーケティング的にとてつもなく売れて稼げたと思いますので機会損失は大きいと思いますが、それよりも「必要とする本が手に入らない」という体験を多くの人がしたことがいいのではないかなと思う。そこから本来存在するべき本のあり方、書店のあり方、自分自身の本の買い方について考え直す人が何人か出てきてくれればそれでいい。

肝心の書評そのものは、どこに載ったのか、あるいは載らなかったのか、分かりません。

しかし週刊文春の記事の中では「あの自称国家のルーツがアル=カーイダにあり、アル=カーイダのルーツがソ連によるアフガン侵攻時のアメリカの政策にあったことを知った」となっていますが、これは間違いではないが、私の本から読み取るべき点はそこではないだろうと思う。そういう話なら私の本を読まないでもそこらへんの本でいくらでも出回っている。何もかもアメリカ原因・責任論にしてしまうとわからなくなる、広く深い世界がその外にありますよ、というのが私の本の基本的な方向性だと思うのだが・・・

もしかして電子書籍で読むとそうなるのかな?