人質殺害脅迫の犯行グループが期限を24時間に:生じうる交渉の結果を比較する

「イスラーム国」より、24時間以内の後藤さんの殺害を脅迫し、サージダ・リーシャーウィーの釈放を要求する声明が出ました。

交渉の内側について私は情報を持ちません。交渉論的に、生じうる結果を場合分けし、それぞれの政治的帰結を考えてみました。

1月28日午前2時の段階でフェイスブックに投稿しておいたポスト(https://www.facebook.com/satoshi.ikeuchi/posts/10202573053326596)を再録しておきます。

(1)非常に悪い結果
イスラーム国:ムアーズ中尉(パイロット)を殺害、後藤さんを殺害。ヨルダン政府:サージダ死刑囚を釈放→ヨルダン政府の体面失墜、武装集団の威信高揚。
 死刑囚を釈放したのに対して、相手方は殺害した遺体を送りつけてくる、という最悪の結果は、中東諸国が他のイスラーム主義武装集団と行った交渉ではあった。ヨルダン政府は、「イスラーム国」が本当にムアーズ中尉が今も生きているのか、生きて返す意思があるのかを、必死に見極めようとしているだろう。ヨルダン政府にとっては、そこが絶対に譲れない一線だ。日本人人質を併せて解放してもらえるかどうかは、あくまで副次的な要素だろう。
(2)悪い結果
イスラーム国:ムアーズ中尉を殺害、後藤さんを解放。ヨルダン政府:サージダ死刑囚を釈放→ヨルダン政府は、日本の金でヨルダン人パイロットを売ったと嘲笑・非難される。
 私は、イスラーム国がムアーズ中尉を生きて返す可能性は極めて低いと思う。付随して、ヨルダン政府を嘲笑するために、「より罪の軽い」通りがかりと言っていい日本人を返す可能性はないわけではない。その時日本は手放しで喜ぶというわけにはいかない。
(3)最良に見えるが実際には重大な帰結を付随する結果
イスラーム国:ムアーズ中尉を解放、後藤さんを解放。ヨルダン政府:サージダ死刑囚を釈放→日本にとっては良い結果に見えるが、イスラーム国はサージダを宣伝に活用し、おそらく仲介者を通じて資金も受け取る。ヨルダン政府は死刑囚への寛大な措置と、日本人人質も救った英明さを強調できるが、アンマン・テロ事件の重要実行犯を解放する超法規的措置で、威信を問われる。日本政府は、ヨルダン政府に大きな借りを作り、金銭面だけでなく、政治的、そして人的支援を、ヨルダン政府に一旦緩急ある時求められる。自衛隊派遣等を求められる事態も将来に生じないとも限らない。ヨルダン政府は、すでに人員の危険を冒して、日本人人質の奪還に動いている。テロリストを解放すれば、将来の危険が増す。裏で渡る身代金はイスラーム国とその中核の武装集団の活動を支える。より酷くない悪を選ぶしかないが、中長期的に見てどれが最も「悪い」結果なのかは、判断がつきかねる。
(4)このままでは最も可能性が高い、悪い結果
人質が殺害され、ヨルダン政府は死刑囚を解放しない。ヨルダン政府の方針は守られるが、日本政府の目的は達せられない。時間が切迫しているが、取れる手段は限られている。
 可能性はこれらだけではない。今回も映像の編集が貧弱で、これまでの脅迫映像で使われていた背景映像がなく白無地の背景で、動画による人質の発言などが盛り込まれていない、等を考えると、(1)武装集団が従来の機材を使えない状態にある。すなわち軍事的にかなり打撃を受けている。処刑人が第2回の映像から出てこないのは、負傷・死亡したか、別の場所にいて撮影の場に来られないといった理由が考えられる。(2)第2回の映像以来、それまでとは違う武装集団が後藤さんの身柄を奪った、という可能性もないわけではない。これらの武装集団側の状況変化によって、展開は早まりもするし、新たな要求が出る可能性もある。