1月22日に「トルコはもう三丁目の夕日じゃないよ」と書いてから、トルコ経済はずいぶん動いた。
劇的だったのはトルコ中央銀行が1月28日深夜に緊急の金融政策決定会合を開いて、翌日未明にかけて、直前の予想よりもさらに大きな幅の利上げを行ったこと。
1月末に世界中の新興国に伝染した通貨危機の不安を打ち消すための果断な措置。これが効果をもたらすか、注目されている。
これは単にトルコ一国の経済に関わることではない。世界経済の変化の中で、近年にブーム的な発展を遂げてきた新興国が今後どうなるか、トルコはその試金石と言っていい。新興国相互の影響関係や、日本などに及ぼす影響も深く大きい。
基本的なところをおさえておくと、1月28日-29日のトルコ中央銀行の動きが注目を集めて、ある意味驚かれたのは、「政治的な理由で、トルコはこのような果断な金融政策を採用できないのではないか」と疑念が持たれていたからだ。エルドアン首相は政権維持のために景気の維持にこだわって利上げを渋っており、トルコの中央銀行に独立性があるかどうか疑われていた。
それにもかかわらず、トルコ中央銀行が予想を上回る幅の利上げを行ったことで、新興国に広がる通貨危機への対処能力を市場に対して示した、肯定的な動きと基本的には見るべきだろう。
ただ、それが功を奏するかはいろいろな要素が絡むので予想がつかない。
そして、「ここまでしなければならないということは、よほど危機的な状態なのか」「トルコ中央銀行は事態がコントロール不能になっていることを認めた」「ということはほかの新興国でも」といった憶測を呼んで、かえってパニックを誘発しかねない要因にもなっている。
パニックを誘発して稼ぎたい人もいっぱいいますからね。
そしてエルドアン政権はもっぱら現在の危機を投機筋の陰謀に帰している。陰謀はあるかもしれないが問題はトルコの経済に隙があること。それを中央銀行が塞ごうとしていることは確かだ。
ただそこには当然副作用があって、何よりも、これでもう急成長は見込めない。問題は崩壊するまでいくかということ。
当面は劇的な変化は起っていないようだが、危機を回避したとは到底言えない。トルコの経済発展を支えた欧米や中国などの状況は様変わりしている。トルコ内政やシリア問題・イラン問題など外交も思うようにいっておらず、トルコの「勢力範囲」「経済的後背地」である中東が不安定性を増している。
しかし何よりもトルコそのものの経済的な基礎の脆弱さが、他の新興国と同様に、あぶりだされている。
前のめりの成長と、繁栄を先取りするような生活を享受してきた近年のトルコだが、苦しい段階に来ている。
中東の中で唯一、東アジアの経済発展と若干似たタイプの発展経路をたどってきたトルコは、実は日本や韓国などが抱える問題もかなり共有している。
そんなところも含めてトルコの経済・社会にはこのブログでも注目していこうと思う。