ターリバーンのクンドゥズ制圧を受けて、10月1日にアフガニスタンの地図を載せておいたのですが、アフガニスタン国軍による奪還作戦を支援した米軍のクンドゥズ空爆が、「国境なき医師団」の病院を誤爆したということで、大きな問題になっています。
今日はもう一枚アフガニスタンの地図を掲げておきましょう。
出典:“Afghan conflict: US investigates Kunduz hospital bombing,” BBC, 4 October 2015.
米軍の撤退を受けて、各地でターリバーンが復活し攻勢に出ています。また、ターリバーンの中で、これまで生きているとされていた最高指導者オマル師の裁可を受けて進められていた(ように見せられていた)アフガニスタン政府との和平交渉が不透明になり、分裂の様相を呈しているようです。つまり、ターリバーンをターリバーンも統制できない。そして、ターリバーンの一部、あるいはそれになびいていた勢力が近年に国際的知名度や維新を高めた「イスラーム国」に呼応してそれを名乗って攻勢に出る動きも出ています。
アフガニスタン政府軍はクンドゥズ中心部からはターリバーン勢力を放逐したとみられますが、周辺部に戦闘は拡散しているようです。
1970年代に始まった内戦以来のアフガニスタンの混乱は、収まりそうにありません。
なお、クンドゥズの誤爆は、アフガニスタン情勢にとどまらない意味があります。
アメリカとしては、ロシアのシリア介入で、名目としている「イスラーム国」を狙っていない、一般人を殺傷している、と批判を高めようとしたところにこれですから、即刻オバマ大統領が徹底的な検証を約束する事態になりました。
もちろんロシアとシリア・アサド政権の方は、テンプレートで「殺した相手は全部テロリスト」「誤爆は欧米メディアのでっち上げ」と言い続ければいいので、調査や検証が行われることもありません。「アメリカではホワイトハウスの前でアメリカ大統領の悪口を言えるが、ロシアでは赤の広場でアメリカ大統領の悪口を言える」という冷戦時代のジョークが復活している様子です。
日本の某公共放送局もホームページでうっかり「米ソ」の対立を報じてしまったそうですが、世界的に、冷戦時代を知っている論者たちが昔を思い出して小躍りするような状況が生まれています。
ただ、実際にロシアがかつてのソ連のような超大国としての力があるのかは、エコノミストやフィナンシャル・タイムズといった欧米の有力メディアでは疑問符が付されることが多いです。私はこれを「プーチン栄えて国滅ぶ」テーゼと呼んでいますが、それが一体どういう論拠での議論なのか、どの程度妥当なのか、そのあたりを考えていくことが、ロシアそのものの「台頭」や、その中東への影響について検討していく手がかりとなると思います。私自身もまだ結論は出せていませんが。
ただ、冷戦時代の初期の雰囲気はもしかしてこのようなものだったのかな?などとも思います。