「植民地の第一次世界大戦」についてNHKBS世界のドキュメンタリーで秀作が

本の入稿で毎日朝晩一章ずつ締め切りが設定されていたので、身動きが取れないでいた。

危険水域を抜け出しつつある。

まあこの本が終わってももっと大変な本が何冊も待ち構えているのだが。数年分の成果が一度に出そうな来年前半。

執筆に没頭していると、授業に出ているか、講演・研究会などに出ている時以外はずっと書いていることになるので、テレビも見られなくなる。まあ、ふだんテレビを見るといってもNHKBSの外国ニュースとかだけれども。

一瞬だけ録画一覧を見たら、これが録れていた。

「忘れられた犠牲~アジア・アフリカ“非白人兵”たちの戦い~」
The World’s War Forgotten Soldiers of Empire,” BBC, 2014.

2014年12月9日 火曜深夜[水曜午前 0時00分~0時50分]

再放送が明後日水曜日の夕方にあるようなので、見逃した方はぜひ。

再放送14年12月17日 水曜 午後6時00分~6時50分

(今ウェブサイトを確認してみたら、1月1日の午前4時にも再放送日程が加わっていた。初詣に行って帰ってきてから見る番組なのか・・・)

高校の世界史の授業などにもいいのでは。大学教養課程なら英語で見ると良い。

NHKBSの深夜0時からの「BS世界のドキュメンタリー」はまず毎日録画してしまって、必要なもの以外はハードディスク容量を圧迫してきたら消すということにしている。この番組を見るためだけにでも受信料を払っていいぐらいの価値がある。

作業をしながら流してチラ見したが、なかなか面白い。中東やアフリカの世界史・近代史に興味がある人にはぴったり当てはまる。

日本語タイトルはかなり特定の部分を読み込んで意訳してあるけれども(確かにそういう内容も含まれている)、もっと大枠を言えば、「世界帝国領民にとっての第一次世界大戦」ということ。本当に各地で戦っているが、一般的には「アラビアのロレンス」の活躍するアラビア半島など、ごく限られた部分しか知られていない。

今年は第1次世界大戦の勃発から100年ということで盛んに本も出て、このBS世界のドキュメンタリーでも色々な番組が放送されているけれども、どうしても西欧の西部戦線の話が多くなる。西欧文明・文化に深甚な影響を及ぼした大戦だから、詩から小説から、ノンフィクションまでが刊行され続け、西欧社会の大事件として記録や記憶が形成されてきた。その締めくくりの100周年なのだから当然だが、文字通り「世界帝国同士が世界中で戦った世界大戦だった」という事実が忘れられてしまいがちだ。「忘れないで」と盛んに言い続けて認めさせているのも、ANZAC(Australian and New Zealand Army Corps)ぐらいか。オーストラリア・ニュージーランドも英植民地で、大英帝国の戦争に若者が徴用され、トルコのガリポリ上陸作戦で大勢命を落としている。オーストラリアやニュージーランドの国民意識がこれで芽生えたとすら言われている。

そういった物語を紡いでこなかった中東やアフリカの兵士たちは忘れ去られている。

冒頭の「つかみ」がいい。大戦勃発に伴い、オスマン帝国がジハードを宣言する。イスラーム共同体はオスマン帝国領内にとどまらないから、英・仏・露の植民地領内の膨大な数のムスリムが、敵のオスマン帝国・ドイツ・オーストリア側に立って蜂起するのではないか・・・という英・仏・露側の警戒心を描くところから始まる。そうさせないようにどうやって英・仏が植民地の民族を動員していったか。英・仏と独の植民地部隊同士が戦った事例などが興味深い。