年度末なので、成果物の取りまとめ。まずは論文。
戦略研究学会の特集号が「戦略とリーダーシップ」だったので、会員になって投稿してみました。依頼される原稿ばかり書いていると自分のテーマが掘り進められませんので、意識して学会・学術論文誌に投稿するよう心掛けています。しかしそうして仕事を増やし過ぎて、依頼された原稿を落としたり遅らせたりするので、昨年は編者にとってはかなり「危険な香り」のする書き手になっていました・・・
池内恵「「指導者なきジハード」の戦略と組織」『戦略研究』第14号《戦略とリーダーシップ》、戦略研究学会、2014年3月20日、19-36頁
9・11と「対テロ戦争」以後のグローバル・ジハード運動の側の戦略論の新展開を、特に2004年末に出たアブー・ムスアブ・アッスーリーの理論を中心にまとめたもの。
関連論文としては「2013年に書いた論文(イスラーム政治思想)」(1月19日)で挙げておいた下記の(1)(2)と、「2020年に中東は、イスラーム世界はどうなっている?」で挙げておいた(3)があります。
(1)池内恵「グローバル・ジハードの変容」『年報政治学』2013年第Ⅰ号、2013年6月、189-214頁
(2)池内恵「一匹狼(ローン・ウルフ)型ジハードの思想・理論的背景」『警察学論集』第66巻第12号、2013年12月、88-115頁
(3)池内恵「アル=カーイダの夢──2020年、世界カリフ国家構想」『外交』第23号、2014年1月、32-37頁
(1)では近現代のイスラーム政治思想史の文脈の上に、最近のグローバル・ジハード理論の展開はどのような意味があるのかを問題にしたのに対して、今回の論文「「指導者なきジハード」の戦略と組織」では、グローバル事・ジハード論の最近の展開が戦略論的にみてどのような性質を持ったものといえるのかを検討した。
(2)ではより戦術レベルの話「一匹狼型テロ」を奨励する「個別ジハード」論や、それを国際的に宣伝するメディア『インスパイア』の分析など。
これらはいずれもスーリーの理論についての分析を主にしていたのだけれども、(3)ではそれ以外の若い世代の認識や世界観、見通しについて、2005年に発表されたヨルダン人ジャーナリストによる研究をもとに議論している。
ジハード思想がグローバル化し、かつ宗教・倫理思想よりも戦略論・戦術論の方向に流れていった2000年代前後について、地道にまとめる作業をしています。