お昼休みにウクライナ情勢チェック。当面はクリミアの帰属に焦点が当たっている。
3月11日にクリミア自治共和国議会で独立宣言採択。
3月16日の国民投票でウクライナからの分離・独立及びロシアへの編入の承認。
3月17日にロシア・プーチン大統領がクリミアを独立国として承認する大統領令に署名。←今ここ。
今日(3月18日)夜にはプーチンが上下両院の議員や連邦政府幹部らが出席する連邦会議でクリミア問題について演説するという。
この演説の内容が、次のどれになるかが、近い将来の展開を分けそうです。
(1)クリミアの編入を行うと宣言し、そのための法的手続きの開始を命じる。
(2)クリミアの独立を称賛、援助を惜しまないと宣言。
(2)であれば、編入カードを残したまま欧米との交渉の余地を残す意図を示した、宥和的なものとして欧米側では受け止められるだろう。(1)だと当分の間制裁合戦などで国際政治経済が荒れそうですね。ロシアはメディアを使ってかなり盛り上げてしまっているので、「編入してください」という決議・国民投票が曲りなりにもあるのに、プーチンは「まあ待て」と言えるのかどうか。
日本は頭を低くしているしかないですが、経済制裁に追随する必要はあり、制裁への報復だとか言って日本企業の資産が凍結や接収されたりすると困ります。
合弁企業で日本の持ち分が凍結された上に、働くだけ働かされ続けたりして。
さて、その次はどうなるか、ロシア専門家やウクライナ専門家【~日本にもいらっしゃいます~】【クリミア半島奪取でロシアの得た勘定と失った感情】の議論をいろいろ読んでみている。
クリミアにワッペン外した軍を送り込んで制圧、というロシアの行動はいかにも荒っぽくてお友達になりたくない感じがするが、しかし欧米も国際法・秩序の原則に挑戦するものとして批判はしても、実際に実力行使でクリミアからロシアの影響力を排除するとは思えない。
ロシアによるクリミアの国家承認に限定するのであれば、欧米側はクリミアを承認しないと言い続け、当分の間制裁をしつつ、やがては現状黙認、となってしまいそうだ。編入の場合は当分の間比喩的には「冷戦」的な激しい言葉のやり取りと制裁合戦による関係冷却化が続くだろうけど、「もともとロシアのものだったんだし」というところもある。
ただ、これがロシアの拡張主義の第一歩で、今後、ソ連だのロシア帝国だのの再興を目指していく、ということになると西欧諸国は黙っていられないだろう。
そうなるとロシアの「クリミア後」に何をしたいのか、意図を探るのが、次の段階の展開を見通すのに不可欠だ。クリミア併合は一回きりの現象で、周辺諸国には影響を与えないのか。それともロシアはこれを皮切りにどんどんせり出してくるのか。
もちろん「東部ウクライナへの侵攻」なんてことがあれば意図は明白だし混乱は計り知れないが、たぶんそんなことしないでしょう。
クリミアを承認するだけでなく編入し、さらに、他のロシア系列の「非承認国家」を編入していく動きが始まるのであれば、欧米は最高度の警戒態勢に入り、文字通り「新冷戦」が始まることになってしまうかもしれない。
現在の段階(独立宣言、ロシアだけが承認)のクリミアと同様の国は、グルジアから独立を宣言してロシア軍の軍事力で維持されていて実質上はロシアだけが承認しているアブハジア、南オセチアがあり、モルドバから実質上独立しロシア軍が駐留しているがロシアは公式には承認していない沿ドニエストル(英語ではTransnistria)がある。
特に、ウクライナと隣接するモルドバの沿ドニエストルについて、ロシアが公式に承認する、さらに編入する、といった動きがあるのであれば、クリミア後の次の一歩ということになり重大な意味を持つ。その動きがないのであれば、当面は、事態はクリミアに限定されるとみていいのではないのか。
現状ではモルドバ(沿ドニエストル)情勢は変化なし、だそうです。
以上は黒海沿岸諸国の専門家トマス・ド・ワールさんの下記の分析を読んでまとめてみたものです。専門家って大事ですね。
Thomas de Waal “Watching Moldova,” Eurasia Outook, Carnegie Moscow Center, March 12, 2014.