【寄稿】伊奈久喜さんの追悼文を『公研』に

日経新聞の記者で、外交コラムで著名だった伊奈久喜さんが昨年4月に亡くなりましたが、今年の1月に追悼の会が開かれたのをきっかけに、追悼文を書いてみました。『公研』2月号に掲載されています。

池内恵「伊奈久喜さんとの2時間」『公研』2017年2月号(第642号), 12-15頁

「めいん・すとりいと」という『公研』の巻頭のエッセー欄には、定期的に依頼を受けて寄稿してきましたが(以前は他の執筆者とものすごく年齢が離れていたのですが、最近、世代交代が進み、多くの同世代の研究者が寄稿するようになっています)、今回もこの枠へのご依頼に対して寄稿したものです。ただし、追悼文ということもあり、言葉を尽くして書くうちに、長大なものになってしまい、通常は見開き2頁のところを、例外的に、おそらくこのコーナー始まって以来初の、4頁の紙幅ををいただいて、なんとか収めました。

『公研』への寄稿は、この雑誌が会員企業のみに送付される、ウェブで全く公開していない雑誌であるため、ご興味を持った方が編集部に問い合わせをしたりすると、対応しきれないと思いまして、このブログでは通常はお知らせしていません

ただ、最近、編集側では、刊行から一定期間を経れば、著者による公開を許可する方針を定めたとのことですので、将来は告知をより頻繁に行い、ウェブ上での公開も考えたいと思います。

ただし、今回は、追悼文という性質からも、ウェブで公開することがふさわしいのかどうか私も判断がつきかねておりますので、当面は公開を見合わせておきます。

おそらく、私が公の場で書いた、初めての追悼文です。

【追記:掲載誌をおそるおそる読んでみたところ、一点、不正確な記述を発見しました。伊奈さんがワシントンで所属したのは「ジョンズ・ホプキンス大学高等国際問題研究大学院」の「外交政策研究所」であるところが、これを無意識に足し合わせたように「ジョンズ・ホプキンス大学高等国際問題研究所」と記してしまっておりました。また、14頁の上の段「サウジとイランの対立はどこまで対立しているのか」は→「サウジとイランの対立はどこまで緊迫しているのか」ですね。あと、「偲ぶ会」の冒頭に行われたのは「乾杯」ではなく「献杯」なのか形式としては。私の書く初めての追悼文ということで緊張して、ミスが出ています。なにしろ名うての文章家の伊奈さんへの追悼文ですから、上手に書いて見せないといけません。そして合格点になる程度には上手く書けたと内心自負していたのですが、やはり内心の動揺は隠せない。細部に気が及ばなくなるのですね。伊奈さんに見られたら、ささっと「朱を入れ」られるでしょう・・・】

2017年度の学会報告予定

行政的には2016年度がそろそろ終わる時期で、報告書や予算・決算書類作成、必要証票を揃えるので忙しくしていますが、来週末にも、東欧にちょっと行って学会発表をしたり、そして年度末には、マイレージを利用して、将来面白そうなテーマに今のうちに探りを入れるべく、某大陸に踏み入ってきたりします。

しかし新年度の学会発表の依頼を次々に受け、いずれも興味深いand/or断りにくい方面からのご依頼のため次々にお引受けてしていたら年間を通してスケジュールが埋まってしまっている模様です。自分が入っている学会での報告も考えなければならないのに、依頼に応えるだけで精一杯になっている状態です。なんとかならないのか。

考えてみますと、昨年・一昨年度は、日本国際政治学会で企画委員をやっていたので、もっぱら企画し、依頼し、お世話する側の仕事をしていました(一部、例外的に企画委員でかつ登壇したこともありましたが)。企画委員の任期が終わったタイミングでいろいろ依頼が来て、お引き受けしていたところ、何が何だか分からなくなって来たので、ちょっと整理しています。

これ以外に、非公開の研究会や会員のみに向けた報告・講演の依頼が多く入っており、またその間に海外での研究発表に行くことがあるので、実際には来年度の週末はすでにほとんど埋まってしまっているような状態です。

肝心の、自分が入っている学会での自発的な報告を企画・応募する余裕がなさそうなのが、なんとなく気になります。そろそろ生活を変えないといけないのかもしれませんね。しかしまあこれらのご依頼はいずれも私の研究の成果を発表したり、今行なっている研究を発展させる機会になってくれそうなものなので、頑張って対応したら私のためになりそうです。

自分への備忘録も兼ねて、ある程度公開されていそうなものをリスト化しておきます。引き受けていてもとっさに思い出せないものや、原則非公開のものは挙げていませんが、もしかすると会員以外には非公開なものも混じっているかもしれません。また、報告タイトルは仮のもので、セッションの趣旨・主催者からのご要望を勘案し、私の報告論文の執筆を進めて行く過程で、大幅に変更される可能性があります。

それぞれが違うテーマなので、報告論文を各種揃えねばならず、もしかして学会大会ピークの春・秋は1分も休めないのでは、と恐ろしくなってきます。早めに準備をしておきましょう(自分に言い聞かせています)。

4月23日:戦略研究学会
池内恵「紅海岸地域に転移するグレートゲーム」共通論題「国際環境の変化と戦略」
戦略研究学会第15回大会(明治大学駿河台キャンパス リバティタワー7階、2017年4月23日開催)

なお、戦略研究学会では理事と大会・研究会委員というのも命ぜられていて、今年は共通テーマの「国際環境の変化と戦略」に沿った基調講演を中西寛先生にご依頼する役目を拝命いたしております。ご快諾いただき、研究大会の重みがぐっと増しました。

〔基調講演〕中西 寛氏(京都大学大学院法学研究科教授・公共政策大学院長)「現代世界における戦略的思考について」(仮)

また、共通テーマに関するシンポジウムでは、ロシア軍事研究の小泉悠さんなど、世代交代も意図した構成で活発な議論を喚起する予定です。非会員でも学会全体を聞きに行くことができますので、ご興味のある方はぜひ。

5月27日:政治思想学会
池内恵「グローバル言説圏における「イスラーム」をめぐる保守/リベラルの位相」(仮)
政治思想学会第24回大会・シンポジウムⅡ保守の多様性」共通テーマ「政治思想における「保守」の再検討」(早稲田大学、2017年5月27・28日開催)

6月10日:宗教法学会
池内恵「何が宗教過激主義をもたらすのか――イスラーム法学解釈の権威の構造とその近現代における変化」
第35回宗教法制研究会・第74回宗教法学会(青山学院大学、2017年6月10日開催)

6月17日:日本ピューリタニズム学会
「イスラーム教における寛容と政教分離、そして宗教改革」(仮)
日本ピューリタニズム学会第12回大会・シンポジウム「ピューリタニズムとイスラームの対話――政教分離と寛容思想をめぐって」(仮)(青山学院大学、2017年6月17日開催)

11月4日:社会思想史学会
池内恵「社会思想史におけるイスラーム教」(仮)
第42回社会思想史学会大会・シンポジウム「社会思想史における宗教」(京都大学、2017年11月4日・5日開催)