秋は学会(1)日本国際政治学会(10月14日〜16日)

秋は特に学会が多いですね。週末がほとんど潰れてしまいます。今時の大学教員は事務作業が多く、平日は研究をほとんどできませんので、週末の学会のための準備を別の週末や深夜にやるということが多くなります。

今年の秋の学会は、自分で報告するよりも、「お世話する」ことが多くなりました。いくつか挙げておきます。一般聴衆向けの公開講演会も含まれますので、ご関心のある方はぜひ。

日本国際政治学会・2016年度研究大会(10月14日〜16日・幕張メッセ国際会議場)

日本国際政治学会では、任期2年間の企画・研究委員会という役を2015年から引き受けていましたが、昨年あまりに忙しくて企画を出せなかったので今年は部会企画を三つ出したところ全部通ってしまいました。そのうち二つは直接運営のお世話をしますので、作業で目が回っています(なお、内規により企画委員はパネル報告やコメントをしないのが原則なので、あくまで裏方です)。2年分のお仕事をして、無事放免される予定です。当分こういったお世話の仕事はやらないのではないかと思います。

10月14日(金) 13:00-15:30 部会2「多元的政軍関係」
司会・討論
宮本悟(聖学院大学)

報告
佐野秀太郎(防衛大学校)「21世紀における軍事組織の在り方~民間軍事警備会社(PMSC)が提起する課題」
山尾大(九州大学)「分断社会の多元的な政軍関係――戦後イラクを事例に」
吉岡明子(日本エネルギー経済研究所中東研究センター)「未承認国家の「国軍」形成における課題:イラク・クルディスタンの事例から」

討論
池田明史(東洋英和女学院大学)

 

10月15日(土) 9:30-12:00 部会7「インサージェンシーの地域比較」
討論・司会
中西嘉宏(京都大学)

報告
山根健至(福岡女子大学)「フィリピンにおけるカウンター・インサージェンシーと非国家主体の役割」
髙岡豊(公益財団法人中東調査会)「シリア紛争に伴う非国家主体の台頭:シリア北東部の事例から」
馬場香織(アジア経済研究所)「近年のメキシコにみる麻薬紛争と自警団の台頭」

討論
本名純(立命館大学)
小泉悠(公益財団法人 未来工学研究所)

 

10月16日(日) 9:30-12:00 部会8「帝国の解体と再生(サイクス=ピコ協定100周年)」
司会
浅野豊美(早稲田大学)

報告
坂元一哉(大阪大学)
「戦後日本と『帝国』再生の条件:憲法、平和条約、安保条約」
廣瀬陽子(慶應義塾大学)
「未承認国家の誕生と存続:帝国・連邦の遺産」
赤川尚平(慶應義塾大学)
「オスマン帝国の解体とイギリス外交」

討論
岡本隆司(京都府立大学)
佐藤尚平(金沢大学)

このうち上二つは「政軍関係」について、特に中東で非国家主体が大きく関わってきていることをどう捉えるか、という問題関心から企画したもので、連続性・一貫性があります。二つの部会で出てくる多くの事例から、新たな状況を踏まえた政軍関係論が立ち上がってくることを期待しています。

私自身がこのテーマを含む課題に取り組んでいるところでもありまして、企画をして様々な研究者に知見を報告してもらうことは、私個人に取っても有益であり、楽しみにしています。

また、部会8「帝国の解体と再生」も、タイトルと、括弧の中の添え書きを見れば、やはり私の最近の仕事と直接に関わっています。

これと・・・

これですね。

裏方をやって何が楽しいかというと、自分の興味のある対象について、自分ではできないことを他の人にやってもらうことができることです。

日本国際政治学会の研究大会の多くは、研究者向けですね。ただし一般向けを意識した「市民公開講座」もあります。

今年は60周年記念大会なのでひときわ規模も大きく、海外から招聘して英語パネルも多くなっています。

非会員でも登録して参加費を払えば聴くことができますが、専門的にその分野に取り組む訓練を受けたことがない人には、それほど強くお勧めしません。

専門家の間の議論の積み重ねの成果が、将来なんらかの形で一般読者の目に触れるところに来ると思いますので、その時までお待ちください。