【今日の一枚】(16)シリア内戦 クルド人勢力の台頭(その2)

昨日に示したように、クルド人勢力が主導して、今年3月には「西クルディスターン」の自治政府設立・シリアの連邦化を宣言するまでになりました。

2013年9月の段階で描かれたこの地図では、クルド人勢力の台頭の兆しと、それに対して、反体制勢力の側でもアラブ人が優勢で、クルド人の民族運動が台頭することを嫌っている様子が見えました。

シリア勢力地図2013年9月26日ロイター
“Arabs battle Syrian Kurds as Assad’s foes fragment,” Reuters, September 27, 2013.

この地図では、反体制派(クルド民族主義的ではないが、クルド人も含む)や、ヌスラ戦線などアル=カーイダ系が優勢のエリアをピンクで塗ってあります。この時点では、現在クルド人勢力が優勢である地域や、クルド人が多くを占める地域も反体制派が優勢なエリアに含まれいます。例えば西のアフリーンで今時点ではYPGではなく他の反体制派が優勢だったり、東のイラク北部との国境エリアでも非クルドの反体制派の優勢の地域があったりします。トルコとの国境のラアス・アインではアル=カーイダ系が優勢でした。

それが、「イスラーム国」が2014年前半に台頭し、反体制派の多くが排除されるか、「イスラーム国」の支配下に入ったことで、かえってクルド人勢力、特にYPGにとって台頭の余地が生まれます。

YPGは反体制勢力とは異なり、アサド政権とも明確には対立せず、同時に米国やロシアとも接近して、現地の同盟勢力としての有用性を示すことで、自治への後ろ盾となってもらうよう働きかけていく。シリア内戦の激化、「イスラーム国」の台頭、それに対する当事者能力を持つ勢力が国際的な信認を高めるという状況を背景に、クルド人の民族主義的な運動が力を得ていくのです。