【今日の一枚】(12)「イスラーム国」のイラクとシリアでの領域支配の変遷(その2)2014年後半の拡大・定着

2016年6月10日以来の2年間の「イスラーム国」の領域支配の拡大・縮小を、地図でつらつらと辿ってみましょう。今日は第2回。

ここではシリアに特化してみましょう。この地図は、2014年の8月31日と、2015年1月10日で、「イスラーム国」のシリアでの領域支配の状況を比較したもの。

Isis Syria 2014 expantion Wall Street Journal
“Months of Airstrikes Fail to Slow Islamic State in Syria,” The Wall Street Journal, January 14, 2015.

今度はウォール・ストリート・ジャーナル紙から借りてきてみました。

2015年1月の段階の記事ですが、「イスラーム国」が出現してから半年の間、米国などが空爆を行っても、勢力範囲は狭まるどころか、むしろ広がり、支配を固めた地域が多くあった、ということを示しています。

この段階ではそのような状況があり、認識があったのですね。2015年を通じて、この趨勢を覆していく軍事的な国際包囲網が、一直線ではないですが、進んでいきます。

その過程では、(これは「イスラーム国」に直接忠誠を誓った集団ではありませんが)、2015年1月のパリでのシャルリー・エブド紙襲撃事件のような、グローバルなテロの事象が目立ったこと、それによって「イスラーム国」への各国からの義勇兵の結集が、その後の帰還兵問題として各国の国内問題としてテロの拡散・強化につながると危惧されたことが、対「イスラーム国」の軍事的な介入を各国政府・社会に決断させた、という事情がありました。

日本ではこの間、1月20日−2月1日に関してのシリアでの「イスラーム国」による人質殺害事件に関する、固有のドメスティックな議論が展開されたことを、遠くに記憶しています。