本日6月13日の、テレビ朝日報道ステーションに録画のコメントが使われるかもしれません。
テーマはISISのイラクでの勢力拡大について。
池内恵(いけうち さとし)が、中東情勢とイスラーム教やその思想について、日々少しずつ解説します。有用な情報源や、助けになる解説を見つけたらリンクを張って案内したり、これまでに書いてきた論文や著書の「さわり」の部分なども紹介したりしていきます。予想外に評判となってしまったFC2ブログ「中東・イスラーム学の風姿花伝(http://chutoislam.blog.fc2.com/)」からすべての項目を移行しました。過去の項目もここから全て読めます。経歴・所属等は本ブログのプロフィール(http://ikeuchisatoshi.com/profile/)からご覧ください。
本日6月13日の、テレビ朝日報道ステーションに録画のコメントが使われるかもしれません。
テーマはISISのイラクでの勢力拡大について。
イラク情勢について、『フォーサイト』で基本的な見方をまとめました。
池内恵「イラクとシャームのイスラーム国家(ISIS)はイラク国家を崩壊させるか」『フォーサイト』専門家の部屋、2014年6月13日
6月10日にイラク北部モースルを、イスラーム主義過激派集団の「イラクとシャームのイスラーム国家(ISIS)」が掌握した。ISISの勢いは収まらず、南下して、バイジーやティクリートといったイラク中部の主要都市を制圧し、首都バグダードに迫ろうという勢いである。
2003年のイラク戦争以後、テロが止まず不安定と混乱でぐずつくイラク情勢だが、ISISの伸長が、全体構図に玉突き状に変更を迫り、周辺諸国や地域大国を巻き込んだ内戦に発展する危険性がある。
「国際テロ組織」の範囲を超えた武装民兵組織
ISISは「アル=カーイダ系の国際テロ組織」と通常形容されるが、現在の活動はそのような形容の範囲を超えている。昨年3月にはシリア東部の主要都市ラッカを制圧し、今年1月にはイラク西部アンバール県のファッルージャを掌握、県都ラマーディーの多くも支配下に置いていた。
確かに組織の発端はイラク戦争でフセイン政権が倒れたのちの米駐留軍に対抗する武装勢力の一つとして現れた「イラクのアル・カーイダ」だった。しかしシリア内戦への介入をめぐって、ビン・ラーディンやその後継者をもって任ずるアイマン・ザワーヒリーの「アル・カーイダ中枢」とは対立し、袂を分かっている。
自爆テロを多用する手法には共通している面があるが、それは手段の一部であり、領域支配といったより大きな政治的野心を持つに至っているようである。イラク北部・西部や、シリア東部での活動ではテロを実行するだけでなく、内戦・紛争の混乱状況の中とはいえ、局地的に実効支配を試みている。所在を隠したテロ集団ではなく、政治勢力の一角に場所を確保する存在となりつつある。
【以下はフォーサイトで…】
ISISの背景や関連する問題については、次のような文章も書いています。
シリアのアル=カーイダ系組織の不穏な動向『フォーサイト』2013年4月12日
シリアの地場のイスラーム系諸民兵集団が連合組織を結成『フォーサイト』2013年11月23日
シリア問題を「対テロ戦争」にすり替えようと試みるアサド政権『フォーサイト』2014年1月23日