【日めくり古典】政治とイデオロギーは古来不可分(理論的分析は別の視点から)

もう少し、モーゲンソーの『国際政治』を。4回目。

政治の理論的な分析は、往々にして人びとの同意を得ることができないとモーゲンソーはいう。それは人びとが政治を理念やイデオロギーと絡めて理解しているからで、それ自体は不可避であるし正当であるとも言える。リベラルな理念からは権力政治はあってはならない、やがてなくなるものに見えるし、イデオロギーは権力闘争を覆い隠す。それが政治である。人間は「思いちがい」をすることで政治に満足する、とモーゲンソーは達観する。その上で、政治理論はそれらの思いちがいから中立であるようにしていかないといけない、と宣言するのである。


モーゲンソー『国際政治(上)――権力と平和』(岩波文庫)

「日々機能している人間精神は、政治の真理をまともに直視することができないのである。それは、真理を偽り、歪曲し、見くびり、そして粉飾するにちがいない。しかも、そうであればあるほど、個人はますます政治の過程、とくに国際政治の過程に積極的にかかわることになる。なぜなら人間は、政治の本性と、彼が政治舞台で演ずる役割とについて思いちがいをすることによって初めて、政治的動物として自分自身および他の人びととともに満足して生きていくことができるからである。
 だから、人びとがその目で見たいと思う国際政治よりも、むしろ、現にあるがままの国際政治や、その本質からいって当然そうあるべき国際政治を理解しようとする理論は、他の大半の学問分野がしなくてもすむような心理的抵抗を必ずや克服しなければならないのである。したがって、国際政治の理論的理解にあてられた書物は、特別の説明と正当化を必要とするわけである。(原彬久訳、上巻、68−69頁)