「イスラーム国」による人質殺害声明の基礎情報:さらに情報があればフェイスブックで発信します

午後11時過ぎ(日本時間)にツイッター上に公開された映像の中で、シリアで「イスラーム国」によって拘束されていた二人の日本人人質のうち、湯川遥菜さんの殺害が発表されました。

私はこの映像の真偽を判断する能力を持ちません。

テロリズム調査会社のSiTEが映像を分析して真正と判断している模様です。SiTEはこれまでに、高い精度の分析能力を示してきました。

(SiTEのリリースには繋がりにくくなっています)

https://news.siteintelgroup.com/Jihadist-News/japanese-hostage-haruna-yukawa-beheaded-second-hostage-stipulates-new-is-demand-in-video.html

前日にSiTEはツイッター上の、イスラーム国に関係のあるとみられる人物らの流す噂として、すでに人質一人が殺害されたとされたと報じていた。

https://news.siteintelgroup.com/Jihadist-News/jihadists-on-twitter-circulate-unverified-rumor-that-islamic-state-japanese-hostages-have-been-killed.html

映像では、静止画像で後藤健二さんの姿が映っており、手にした写真には湯川さんと見られる殺害された遺体が映っています。

私自身が元の映像を確認しましたが、ここにはリンクを掲載しません。SiTEのリリースでは残虐な部分はぼかしてあります。

映像には後藤さんと見られる音声が重ねられており、その中で犯行を行った勢力は、新たな要求を出しています。

新たな要求によれば、これまでの身代金の要求は明確に取り下げ、代わりに、後藤さんの命と引き換えに、ヨルダンで死刑判決を受けている、サージダ・リーシャーウィー(Sajida al-Rishawi)の釈放を要求しているようです。

サージダ・リーシャーウィーは、イラクのアル=カーイダ(「イスラーム国」の前身)の創設者ザルカーウィーの側近の妹で、2005年11月9日のアンマン・ホテル同時多発自爆事件(グランド・ハイアット、ラディソン等を爆破して60人が死亡した、ヨルダンの近年の最大のテロ)の際にも自爆テロ要員だったが生き残り、逮捕されて死刑判決を受け、上告中です。サージダの夫アリー・フセイン・アリー・アル=シャンマリー(Ali Hussein Ali al-Shamari) はラディソン・ホテルで自爆し38名を殺害しています。彼女自身が自爆ベルトを身につけて起爆させようとして失敗し、逮捕されました。

この要求は、日本政府が人質解放交渉の拠点を置いたヨルダンに矛先を向けてきたことを意味します。正確には、それによって日本・日本国民と、ヨルダン政府・ヨルダン国民との間に亀裂を走らせようとする戦術と思われます。

ヨルダン政府が、歴然とした自爆テロ実行未遂犯を釈放する可能性は低いと思いますが、日本政府あるいは国民がヨルダンに釈放せよと圧力をかける事態が生じれば、それは別の国際問題を引き起こすと考えられます。そのことが「イスラーム国」側の狙いと考えられます。

私自身は、犯行勢力にいかなる情報源も持っていませんので、この殺害事件そのものについては有益な情報提供をできません。

その政治的・外交的波及については注視し、適宜発信していく所存です。

参考情報があれば、フェイスブックで発信します。
https://www.facebook.com/satoshi.ikeuchi