土曜日朝の「NHK 週刊ニュース深読み」で話していたことの続報(2)。
対「イスラーム国」で周辺諸国の足並みがそろわない理由として、トルコについては「イスラーム国のモースル制圧の際に、トルコ総領事館員ら49人を人質に取ったままである」点が常岡さんより言及されていましたが、ちょうどこの日、現地トルコの時間で早朝、人質が全員解放されたようです。
これはかなり大きなニュースです。
“Turkey says hostages held by ISIL are free,” Today’s Zaman, September 20, 2014.
“PM DAVUTOĞLU: TURKISH HOSTAGES SEIZED BY ISIS FREED,” Daily Sabah, September 20, 2014.
人質たちはすでにトルコのシャンルウルファに移送されたようです。サイクス・ピコ協定ではフランス勢力圏のシリアに含まれていたのが、トルコ共和国の独立戦争でフランスから取り戻した都市のひとつ、旧ウルファですね。これについては「トルコの戦勝記念日(共和国の領土の確保)」(2014/08/30)のエントリを参照。
6月11日に人質に取られて以来、これまで表面上は行方も知れなかったので、どこに隠されていたのか、どうやって解放させたのか、なぜこの時期に?など大いに関心を引きますが、それよりもなお、専門家の念頭に浮かんでくるのは、「トルコは今後どうするのだろう?」ということでしょう。
というのは、「トルコのエルドアン政権はイスラーム国への介入をやりたがっていない」というのは周知の事実だからである。これまで「人質取られているから」というのを消極姿勢・非協力の口実にしていたのが、それがなくなってしまうとどうなるのか?あるいはこれはトルコの政策変化の結果なのか、あるいは政策変化をもたらすのか?あるいはトルコにおかまいなしにアメリカが軍事介入を深めるきっかけなのか?など、人質略取と解放そのものよりも、波及や背景が気になります。
トルコはシリアへのジハード義勇兵の越境や資金の流れについては制限するようになっているが、米国が期待する地上軍を含めた戦闘部隊の派遣や、米国の「イスラーム国」空爆への空軍基地の提供を拒否している。ウォール・ストリート・ジャーナルなどは「トルコはもはや同盟国ではない」と気勢を上げている。
そんな中でのトルコ人人質全員が一度に解放されたことには、なんだか唐突感がある。そして、今、「イスラーム国」とそれへの対処をめぐるあらゆるニュースに、この「不審な感じ」がどことなくある。その由来が何かは突き止められないのだけれども。
「イスラーム国」への対処という形で、限定的と言いながら、いつの間にか再び大規模な戦争状態に陥りかねない、誰がどこで糸を引いているのか分からない、不透明な現状への疑心暗鬼が募る。