ガザでのイスラエルとハマースの紛争が収束に向かっています。
8月5日朝から、72時間の期間限定した停戦が発効しており、現在のところ破られておりません。明日8月8日金曜朝で停戦の期限が切れますが、カイロでハマースを含むパレスチナ代表団とイスラエル代表団が、エジプトの諜報機関を媒介者とする間接対話で交渉を行っており、ひとまず1週間程度の延長が議論されているようです。
7月8日のイスラエルによる空爆開始から数えると29日目に、ある程度持続する停戦が初めて発効した形です。
イスラエルが8月4日から5日にかけて地上部隊を全面的にガザから引き揚げたことと、ハマースのロケット弾発射装置そしてイスラエルにつながる地下トンネルの破壊(32とも言われる)という目的をほぼ達成したこと、ハマースが交渉に参加していることから、停戦期間の延長を繰り返しながら長期的な停戦につながっていく可能性が出てきました。それが恒久的な和平に至る道なのかどうかは議論が分かれますが、いずれにせよ当面の一般市民の犠牲がこれ以上増えないという意味では肯定的な流れでしょう。
今回のガザでの紛争については、このブログの以下のエントリで取り上げてきました。
【寄稿】ガザ紛争激化の背景、一方的停戦の怪、来るなと言われたケリー等々(2014年7月16日)
【地図と解説】イスラエル・ガザ紛争の3週間と、今後の見通し(2014年07月28日)
7月30日の報道ステーションでの解説でも示したように、3週間が過ぎた段階(7月28日ごろ)で、将来に関して二つの異なるシナリオが考えられました。
(1)これまでと同様に、イスラエルがハマースの戦闘能力を弱めて目標を達成して撤退していくことで収束し、数年後にまた再燃する。
(2)これまでとは異なり、ネタニヤフ政権がハマースの根絶を図る大規模で徹底的な地上戦を行い、ハマースの軍事部門を壊滅させ、政治部門からガザの支配件を奪う。もしそうなった場合、その後のガザを統治する主体がファタハなのか国際的な停戦監視部隊なのかあるいはイスラエルによる再占領なのかがはっきりとせず、「イスラーム国家」のような超国家的な過激派が台頭する恐れもある。
この時点では、ネタニヤフ首相と側近、イスラエル軍上層部以外の誰も、本当のところどこまで掃討作戦を拡大するのかは分からなかったと思われます。ですので、上記のような、帰結を大きく異にするシナリオの両方が考えられる、というところが、客観分析を主眼とする分析を行う専門家の共通認識だったと思います。
結局、(1)の路線だが、若干(2)に近く、ハマースのガザでの支配権を一部ファタハに移管したり、国際監視部隊によってガザ・エジプト間の国境を管理する体制を導入することで、一定の封鎖解除を行い、ハマースの再武装にも一定の歯止め・監視の制度を導入することで、紛争の再燃を防ぐ機構を組み込んだ形での中長期的停戦の可能性が見えてきました。
それがガザの問題を完全に解決するものではなく、イスラエル・パレスチナの和平そのものをもそれほど前進させるとは言えないものの、ガザの置かれた政治的状況とその人道的影響という意味では、現状よりはまだ「まし」な方向に行く可能性もあるという見通しが、若干、出てきたというのが現在言えることではないでしょうか。
この件は長い話になるので、小分けして書いていきましょう。それではまた。