ISISが急激にイラクで勢力を伸張させている件、各紙が競って地図を作っています。
先日は6月10日ごろまでの情勢に対応した地図を各種紹介しましたが(【地図と解説】イラクとシャームのイスラーム国家(ISIS)の支配領域)、たぶん好評だったので調子に乗って続編。
ウォール・ストリート・ジャーナルはモースルを制圧してから南下するISISの動きを中心に、代替の勢力範囲を図示。都市の外は砂漠なので領域は確定しがたいですが。また、6月11~12日ごろから、クルド勢力がイラク政府軍のイラク北部での崩壊・撤退に乗じてキルクークなどを制圧している件も図示してあります。
エコノミストも、シリアのラッカ県からデリゾール県、イラクのニネヴェ県からアンバール県一帯を、ISISが支配下に置いたか進出した範囲として薄茶色で表示しています(本当にこのエリア一体を領域支配できているかは分かりませんが)。
さらに、シリア北部のクルド勢力の飛び地的な自治領域を黄緑色で図示し、イラク北部でもクルド地域政府(KRG)の領域(北部三県)を超えて、キルクークなどを含む拡大クルド勢力圏を「事実上の(de facto)クルド地域」として薄緑色で塗っています。
なかなか芸が細かいです。クルド勢力の支配エリアを、北部3県のクルド地域政府の正式な領域を超えて、現在の実勢に合う形で塗りかえてあります。イラク北部ニネヴェ県のうちモースルより北はクルド勢力が支配し、モースルとそれより南はISISの支配領域としています。同様に、キルクーク県も県都キルクークより北はクルド勢力の領域、それより南はISISの支配領域とし、中部のサラーフッディーン県もその東側のクルド地域に食い込んだ部分はクルド勢力の支配下、西のバイジーやティクリートやサーマッラーを含む地域にISISが進出していると示しています。
シリアのクルド勢力は黄緑色、イラクのクルド勢力は薄緑色と分けているのも秀逸。両者はあまり連携していませんし、派閥・党派対立もしているから。
薄茶色のISISの領域はべったり領域支配しているとは限りませんし、細かい所は確認しようがありませんが、エコノミストはそこは上手に「presence, city controled or contested」と幅広く定義してあります。さすが英語上手だ。
マニアックなのはFTで、イラクからシリアの国境を中心にしたISISの進出エリアと、油田地帯の地図を重ねています。ISISが自律的な領域支配を持続しうるか、油田の確保という視点から見たものと言えます。クルド勢力の版図と油田の関係も分かります。
さて、次は本丸というべきイランの影響力について、地図で考えてみましょう。シリア・イラクだけでなくもっと広域になります。続けて読んでいる方はご自分で探してみてもいいでしょう。