カタールのドーハに来ています。
先日書いたように(「オバマ大統領のサウジ訪問でGCCの内紛は収まるのか」)、オバマ大統領のサウジ訪問の際に行われる予定だった米・GCC首脳会議が中止になり、GCCの内紛の激化が印象づけられましたが、その渦中のカタールです。
といっても、私の出る会議は宗教・政治の関係なので、直接外交問題については議論にならないだろう。若干、一人の参加者に陰で聞けたらいいなと思うことはあるが、そもそもこの状況下では来ないかも・・・
クウェートで25・26日に行われるアラブ連盟首脳会議に先立って、22日にアラブ連盟外相会議が行われてアジェンダ設定がなされたが、シリア問題でも、エジプト問題でも、対イランでも歩調が合わず(「アラブ連盟サミットを対立が支配する」アル=ジャジーラ3月24日)、GCCの内紛の調停についても表立っては進展がなさそう。
今回の議長国はクウェートだが、サウジとカタールの対立ではクウェートは中間の立場におり、仲介役が期待されている。クウェートはGCC諸国の中で唯一、それなりに権限のある議会を選挙で選出しており、メディアの自由度も高い。ムスリム同胞団やシーア派にも政治的な発言権や事実上の結社の自由を与えている。
この点で、「シーア派⇒完全に沈黙させる」「ムスリム同胞団⇒テロ組織と認定して完全に息の根を止める」というサウジ・バーレーン・UAEの立場とは異なる。
かといってカタールのやっている、自国では政治的権利を厳しく制限しておきながら、他国ではムスリム同胞団などを支援し、カタールを批判しないという暗黙の了解の下で民主化活動家にカタール内に拠点を作らせ資金を与える、というような手法はクウェートは取っていない。
こういった背景から、クウェートの立場はサウジとカタールの中間に位置する。
カタールとしてはクウェートを引きつけておいてGCC内での孤立を防ぎつつ、サウジとの緊張緩和の糸口も探りたいのか、クウェートでのアラブ連盟首脳会議には積極的に参加しているようだ。
カタールとしては、舞台裏で和解に向けた協議が行われそうだ、という印象は醸し出して、先行き不安を打ち消そうとしている模様です。
サウジの方は、国王もサミットに来ないし、多国間の枠組みは当面無視して、エジプトの軍主導の政権を個別に支援する、シリアで忠実なイスラーム主義勢力を選別して支援する、といった動きを強めそうです。
エジプトでは3月24日に、南部メニヤの裁判所がムスリム同胞団の主要幹部から末端の活動家まで529名に一度に死刑判決を出すという、馬鹿馬鹿しい状況になっていますが(政府に反対する者には何でもかんでも「懲役」「死刑」を宣告する一人の判事が中心にいます)、こういった動きの増長の背景には、サウジとUAEの個別経済支援への期待があることは確かです。