刊行されました。
池内恵「現象全体の仕組みを捉える分析力」東大EMP・横山禎徳編『東大エグゼクティブ・マネジメント デザインする思考力』東京大学出版会、83-123頁
東大EMP(エグゼクティブ・マネッジメント・プログラム)という、大学と経済社会をつなげる特設プログラムが東大の赤門のそばの新しいきれいな建物の中で行われております。EMPで半年に1回、講師をしている関係で、ご指名を受け、プログラム・ディレクターの横山さんからインタビューを受けたものです。
厳密には私の著作というよりは横山さんとEMPによる著作ということになるのでしょうが、テープ起こしをして提案されたテキストに私が抜本的に手を入れて書き直しています。けっこうな長さになりました。
「私に対するよくある質問」にすべて答えた形になっています。
もちろん私としては(今回のインタビューに限らず)、「もっとほかの事も聞いてくれ」と言いたい面はありますが、世の中の関心とはこういうものなのだ、という意味では私にとってもきちんと答える意欲を持たせてくれるものでした。書き直すの大変でしたけれども。
「EMP」ということで企業人を読者に念頭にしていますが、新入学の学生が、大学で何をやっているのかを知り、自分が何をやるべきか考えるためのヒントにもなるでしょう。私としてはどちらかというと今からゼロの地点から考える人向けに話しています。
内容は、「なぜイスラーム研究をするようになったのですか?」というあらゆる場所で聞かれる質問に対する答えが半分程度を占めます。
この質問には過去にも応えており、『イスラーム世界の論じ方』中央公論新社、2008年に収録されていますが、それをさらに敷衍したのが今回のものです。
私にとってイスラーム世界やイスラーム教への興味は、「冷戦後の国際秩序、特にその根底を方向づける理念はどうなっていくのか」という関心の延長線上にあります。
最近の中東情勢を「米国の覇権の希薄化」との関係で論じていることも、ウクライナ情勢について狭い意味では「専門分野」ではないにもかかわらず熱心にこのブログで考えているのも、「冷戦後の国際秩序」に大きな変更を及ぼす可能性のある事象として共通しているからです。
以下、今回の本で語ったことの項目の一部。
*イスラーム×政治というテーマの「戦略的選択」
*フクヤマとハンチントンが基調となる冷戦後の国際秩序理念(に関する議論)
*コーランは問題集ではなく「解答集」の形式を取っている
*中世の合理主義と啓示の永遠の対立は現在も続く問題であること
*イスラーム教はなぜ近代科学と衝突しないのか
*アラブの春は冷戦後の国際秩序という問題にどのようなインパクトを与えたのか
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