ウクライナ問題で問われているもの(1)プーチンはバブルか実体か

ウクライナ情勢の展開が速い。早いだけでなく、逐一衛星放送やインターネットで状況が伝えられる。

2011年の「アラブの春」は、国際メディア上での瞬時の情報伝達とフィードバックによって状況そのものが加速していく、新しい速度での国際問題の先駆けだったのだろう。

2014年の国際問題の最大の関心事は、昨年に中東を中心に明らかになったアメリカの内向き志向と覇権撤退の流れがどの程度進むか、その影響がどこにどのように出るか。あるいはアメリカがどうにかして持ち直し、押し返すのか。

ここでも書いたことですね。

「アメリカの覇権にはもう期待できない──大国なき後の戦略を作れ」『文藝春秋』2014年3月号(第92巻第4号)、158-166頁。

アメリカの覇権の帰趨が、引き続き中東問題を巡って問われるのか。あるいはもしかして日中関係や中・フィリピン関係など東シナ海や南シナ海をめぐる紛争で問われることになるのかと、スペキュレーションを混みで盛んに議論されたのが今年の1月から2月前半にかけてだった。

3月初頭のイスラエルのネタニヤフ首相の訪米で、どの程度アメリカの影響力を示せるか(示せないか)が最初の試金石となるとされていたし、4月のオバマ大統領の日本、韓国への訪問も、いがみ合う両国をどれだけ米大統領の威光で説得できるか(できないか)も、ある程度注目されていた。

おそらく、イスラエルも日本も韓国もほとんどオバマの言うことを聞かず、多少の失言も双方から漏れ出て、そうこうするうちにアメリカの影響力の低下の印象が一層強まるのだろうなあ、というのがもっぱらの予想だったのだが、そういった話がいったん棚上げになるような事態が生じた。鎮静化したかに見られていたウクライナ情勢が、ソチ・オリンピックのさなかに急転した。

クリミア半島という、帝政ロシア時代以来の戦略的要地を巡って、「列強が角逐」するという、見かけ上は、19世紀的な紛争の寸前に世界は追い込まれてしまった。

これはプーチンにとっても、シリア問題への関与やエジプトへの接近などとは比べ物にならない重大な問題だろう。

昨年の特に中東問題への関与は、ロシアとプーチン大統領への威信や期待を高めたけれども、それが実体を伴っているかどうかは依然として未知数だ。半ばアメリカへの「当て馬」として高まったロシアへの期待にプーチンが応えられるかどうかはまだ分からないのである。

ウクライナではその実体が問われる。

下手をすると「プーチン・バブル」がはじけかねない。

ウクライナ東部に接した国境地帯で大規模な演習を行って威嚇したプーチン大統領は、危惧された東部への軍事侵攻を一転して控える一方、ロシア軍と名乗らず、国旗や記章を外した武装集団をクリミア半島に展開し、掌握している。ロシアにとって譲れない利益はクリミア半島であって、ウクライナ東部への侵攻はブラフだったのだろう。

事態が長期化すればやがてはウクライナ東部は経済的つながりからもロシア側に戻ってこざるを得ないという可能性はあり、プーチンからいえば焦って事を荒立てることはない。

地政学的に絶対的な重要性があり、かつ歴史的にロシアが直轄の勢力圏としてきた時期が長いクリミア半島については、国際社会の批判をものともせずに、正体不明の武装集団=ロシア軍を送り込んで制圧してしまうというなりふり構わぬ手法を取りながら、東部ウクライナへの侵攻を当面控えることで、欧米との交渉の糸口を探る、というのは、少なくとも軍事的・外交的な戦略における巧みさという意味では、プーチン顕在という感じである。

ただし中長期的にプーチンの大国外交をロシアの経済や国力全体が支えられるのかは定かではない。

でも、これを機会に西欧がウクライナを支援するというのなら、ロシアにとってもいいのかな?

ウクライナ情勢は直接的にも間接的にも中東情勢に大きな影響を与える。これについては少しずつ考えていきたい。

まず、黒海の対岸に位置し、クリミア・タタール人を同じチュルク系と考えるトルコはもっとも身近にこの問題を感じているだろう。ウクライナ問題についてトルコの新聞の論調を読んでいると、西欧ともロシアとも別の角度からものを見ていることがわかる。

民族的なつながりよりも大事なのが、地政学的要因。黒海の出口をイスタンブールで扼するという位置にいるトルコにとって、クリミアの帰属がどうなるかは重大な意味がある。

そしてNATO加盟国でありつつロシアやイランと良好な関係を築くという点に活路を見出してきたトルコにとって、ウクライナを巡って欧米とロシアが全面的な対決に至ることはきわめて望ましくない。両者がほどほどに距離があるぐらいの時には、「橋渡し」をしたり、漁夫の利を得たりできるのだが、対決が決定的になってしまうと、「どっちにつくのか」と迫られるからだ。

このあたりは、最近の日本も似た立場にある。

なぜだかわからないが、「プーチンの権力が強まれば北方領土が返ってくる(大意)」という議論が日本のロシア通からは匂わされて、下心のある政治家やらそれにくっついてくる学者やらが散々煽ったのだが、安倍政権はかなりそういった期待にかなり応えて動いてきていた。

もちろん、領土問題というのは政治的なモメンタムをつけるためで、実際には政権や経産省などは資源エネルギー政策の観点からロシアとの関係を重視しているのだけれども。

しかしウクライナ問題で緊張が高まって、たとえば今年ソチで開催されるはずのG8に欧米諸国は出ません、といったことになると、日本の立場が厳しく問われることになる。欧米諸国に追随してソチのG8サミットをボイコットすれば、それは北方領土は帰ってきませんよね。

そうでなくても、なぜ「プーチンだったら帰ってくる(かも)」などという議論をしていたのか、だれがどういう思惑で言っていたのかは、きちんと検証しなければなりません。そういうことをやらずに、単に話が面白い人の話を過剰に取り上げて読者を楽しませることしかしないのが、日本のメディアが国際基準では一流になれない最大の原因。

「もうちょっとのところまでいったけどウクライナ問題でダメになったんだよ」などという話にしてごまかす気だなあ。

まあ、西欧が本当に腹をくくって、アメリカからシェール・ガスも回してもらうことにして、ロシアの天然ガスは買いません、というところまでやれば世界全体は大きく変わるけれども。

その場合も日本が余ったロシアの天然ガスをどんどん買いますよ、ということになれば、今度は欧米との関係はもたないでしょう。

領土問題やらエネルギー資源での下心で日本がロシアにすり寄った、と見られれば、「価値を共有しない国」として日米関係はきわめて悪化するだろう。そこはもちろん中国や韓国がつついてくるだろう。

なお、アメリカから突き放された日本にプーチンが見向きもしないことは明らかだから、ここでロシア側に回って日本だけいい目を見ようなどというナイーブな考えは絶対に起こさないほうがいい。

そもそもロシアが「クリミアは絶対に返さないが北方領土は返す」などという結論を出すはずもないでしょう。

G8ボイコットというところまで行ってしまえば、欧米側につくというのが、日本の取りうる選択肢だろう。

事態がそこまでこじれる前に止める手段が日本にあるかというと・・・ないですね。

とにかくアメリカに対しても、ロシアに対しても、目立たないようにしているしかない、というのが現状です。

変に格好つけてロシアに人権と民主化で説教したりすると、今の殺気立ったプーチンだと、北方領土を中国に租借・・・などという話すら荒唐無稽ではなくなるかもしれません。

また、「アメリカが衰退した」という議論を変に狭い意味で文字通り真に受ける人たちは右派にも左派にもいて、そういった人たちが相乗作用で日本の外交を急転回させたりしないか、劇画みたいな話ですが、激動期には何が起こるかわかりません。

右派の反米ナショナリスト路線の言説が成算なくエスカレートする一方で、劣勢の左派も依然としてあらゆる機会をとらえて陰湿に反米で画策し続けており(しかし右派を叩くときだけアメリカのご威光・ご意向を振りかざす)、両者が合流すると、「アメリカ衰退」の時流に乗れという掛け声に乗って、もっと怖ーいプーチンの誘いに身を委ねたりしかねない。

そうなると、エジプトのように、アメリカと関係が悪化した(旧)同盟国が外交的自傷行為を繰り返す、という方向に日本までも落ちていくことになる。そんなことをして損をするのは日本国民なのだから、正気を保たないといけない。

アメリカが影響力を低下させていくのは当分の間続くのだろうし、そこで煮え湯を飲まされる機会が増えるのは日本のような親米の地域大国。しかしそこでキレたりスネたりしてしまえば、打撃を受けるのはもっぱら日本だ。

あくまでも高水準の生活を保つ(旧)米同盟国で歩調を合わせましょうね、という話をしているのだが、「反米か、親米か」のどちらか一本で議論をしないと理解してもらえない、というのがどうにも歯がゆい。

ウクライナをめぐるロシアと欧米の争いについては、意図的に日本の存在を消しておいて、万が一ロシアがものすごく困った状態に追い込まれて、なおかつそれが長期化した時には、日本にとって都合の良い状況になるかもしれません。それまで待っているしかないですね。ここでいきなり飛びつくという話ではないでしょう。

日本と国際メディア情報戦

数日前、NHKディレクターでノンフィクション作家の高木徹さんと対談をしていました。そのうちとある雑誌に出る予定ですが、対談の内容は出た時に紹介するとして、対談でも素材にした、高木さんの新刊をご紹介。

高木徹『国際メディア情報戦』(講談社現代新書)

高木さんとの対談は3度目で、最初は2003年に遡る。

(1)高木徹・池内恵「戦争と情報戦略 国際政治の中の目立たない国・日本」『本』2003年10月号、8-14頁
(2)高木徹・池内恵「世界中から日本人が「消えた」? 普天間、トヨタ問題で後手に回る背景」『中央公論』2010年6月号、176-184頁
(3)今回。某誌。まだゲラも出ていないので記しません。2014年4月号ぐらいなのかな。

また、高木さんの『ドキュメント 戦争広告代理店〜情報操作とボスニア紛争』 (講談社文庫)の文庫版解説や、『大仏破壊 バーミアン遺跡はなぜ破壊されたか』書評も書いたことがある(『書物の運命』に収録されています)。

映像の人なので、私には感覚的に分かり難いところもあるが、従来の活字派・団塊・早稲田的(偏見ですが)な、単調な善悪二元論で暑苦しくしばしば見当はずれに描かれる戦争ものとは異なる、現代世界の本当の「戦場」をクールに描いている視点は一貫していて、また現実の進展とシンクロして発展していく。毎回対談が楽しみだ。

いずれの対談でも、「国家のPR」あるいは「国際メディア情報戦」について、高木さんが観察している最新の動向を伺いながら、日本の置かれた立場の変化や将来の見通しについて考えてきた。

今回対談をしたことをきっかけに過去の対談も読み返してみたのだけれども、10年間での変化の大きさ、特に日本の置かれた立場の様変わりは著しい。

皆様も対談を読み返していただければ、そのような将来の変化についての、二人の「見通し」というか「予感」は、まったくはずれていなかったと思う。このブログにでもいずれテキストを部分的にでも掲載したい。

お互いに「そうなってほしくはないが・・・」という文脈で語っていた悪い方のシナリオがどんどん現実化しているように見える。

先日書いたコメントも、そういった長期間かけて積み重なってきた関心と危機意識の上でのものです。

高木さんとの対談を含め、この問題についはまた書きましょう。

「右派から距離をおく日本政府」の必死の情報戦

印象に残った記事。

“Japan distances itself from right-wing statements” Washingotn Post(AP), February 24.
「日本は右派の発言から距離を置く」

ワシントンポストがAP通信配信の記事を掲載したもの。画面には岸田外務大臣が両手で口と鼻を覆った、「苦悩」するかのような表情が大写しになる。

“Japan’s foreign minister is trying to distance his government from recent right-wing comments on World War II, calling them “regrettable” and saying they don’t represent the government’s views.”

外務省がホームページに「仮訳」を出している。上に引用した部分は「日本の外務大臣は,第二次世界大戦に関する最近の右派的な発言は「遺憾である」とし,日本政府の見解と違うと述べて,これらの発言から距離を置こうと試みた」

昨年末の安倍首相の靖国訪問の波紋が表面的に収まったかのように見えていたが、1月25日のNHK籾井会長の発言で、英米の有力メディアの日本に関する議論は一気に厳しくなった。

外務省のこの情報発信は、かなり思い切ったものだ。NHK籾井会長は安倍首相本人あるいはその近い側近の強い意向を受けて就任したと広く信じられており、だからこそ発言への本気の反省の意志は伺われず、辞任する気もないようだ。それどころか、辞表を書かせた理事たちを解任して「お友達」を連れてきかねないとすら想像してしまうような現実感のなさだ。

外相がそれを「右派の発言」として「政府は距離をおく」と明言するのは、籾井会長側からは「安倍総理自身の本心から距離をおく」ものだとねじ込まれかねないものだ。事なかれ主義なら避けるところだろう。

しかし尖閣諸島をめぐるかなり緊迫した状況と、中国が世界中でかなり優勢に対日宣伝戦を展開している現状からは、危機管理上必要なダメージ・コントロールである。ぎりぎりのところでよく頑張ったと思う。

記事はかなりに好意的に書いてくれている。

しかしもちろん一方的に日本の主張を流してはくれない。翌日には同じ欄で同じくAP配信の記事

“China labels Japan a ‘trouble maker’”Washington Post(AP), February 25, 2014.

が掲載されている。

China on Tuesday labeled Japan a “trouble maker” that is damaging regional peace and stability, firing back at earlier criticism from Tokyo over a spike in tensions in northeast Asia.

内容は、中国外務省報道官の反論で、
Foreign Ministry spokeswoman Hua Chunying was responding to comments by Foreign Minister Fumio Kishida that China’s military expansion in the region is a concern, although Kishida stopped short of calling China a threat.

Hua told a regularly scheduled news conference that China’s military posture is purely defensive and Japan is stirring up trouble with its own moves to expand its armed forces and alter its pacifist constitution. She accused Japanese officials of making inflammatory statements aimed at denying or glorifying the country’s militarist past, and said Japan should explain its strategic intentions.

“I think everybody will agree with me that Japan has already become a de facto trouble-maker harming regional peace and stability,” Hua said.

といった中国側の主張が続く。中国側は「日本とナチス・ドイツに対する第二次世界大戦を共に戦った中・米両国の絆」を強調する作戦を近年に強めている。

日中(それに韓も)のグローバルな情報戦で、日本は苦しい立場に立たされている。多くの場合は、日本の政治家、あるいはその取り巻きの、国際世論が作られる構造に関する極端な無知に基づく、不用意な発言によって揚げ足を取られて攻め込まれ傷口を広げている。

「立場」が文字通り「モノを言う」、一方向的なコミュニケーションを一生続けてきて何の不自由も感じてこなかった、日本社会の「成功者」たちは、国際世論を味方につけるための、不利な場での情報発信には、極めて不向きであるようだ。要するに「内弁慶」なのである。

国際世論は大部分は欧米で作られる。この現実はいかんともしがたい。世界はもとより不公平にできている。「そんなの不公平だ」と日本の偉い人たちがへそを曲げてしまえば、いっそう不利になり、不利益は日本国民が蒙る。

国内の議論で権力・上下関係を笠に着て、反対者を怒号で黙らせてきた人たちは、国際的な場で日本の側に支持を集めることがいかに困難かを、思い知る経験がなかったようだ。かつて日本の経済規模が中国を圧倒していた時期に現役世代だったせいもあるだろう。「ゲタ」を履かされていたのである。

今は逆に、中国の成長にあやかりたいという色眼鏡で欧米は見るから、すっかり経済規模を小さくし、成長の幅が小さく「儲からない」日本への点数は過剰に辛くなる。年初から「アベノミクス」の先行きへの不安が浮上した現状では、いっそうそれが加速される。

本来なら欧米という第三者の心象を奪い合う宣伝戦では、日本は圧倒的に有利なはずだった。「戦後」の民主化や人権尊重の実績という政治的な「ファンダメンタルズ」で、中国に引けを取るはずはない。本来は国際宣伝戦で狡猾にここを強調すべきなのであるが、できていない。「戦後レジームからの脱却」を信念とする安倍首相が長期政権を予想されている状況で、阿り、追従して、本来なら自由に活発に発言し警鐘を鳴らすべき学者・知識人すらもが口を閉ざしているのではないかと疑われる事例も散見される。

欧米の有力メディアからは、最近急速に日中は「どっちもどっち」と見られるようになっている。欧米の主要メディアの論調を見ると、日本が欧米と「価値観を共有する自由民主主義国」であることがしばしば忘れられた記述が目立つようになった。

そして実際に、民主主義や人権規範を共有していないのではないかと疑われる人たちがメディアなどの有力なポストに就き、不用意な発言を繰り返すので、こういった海外の論調が日本の現実をまったく反映していないと論じることは難しい。

ましてや自由な立場にいるはずの学者や知識人もが栄達を願って口を閉ざし、そのような人たちが政府でもメディアでも重用されるというのであれば、やはり日本は欧米先進国とは価値を共有していないのである。

安倍首相本人は、第二次政権では「戦後レジームからの脱却」という持論をあからさまに述べることは避けてきたようだ。このことは戦略判断として正しい。威圧を強める中国に対する対抗策はまず、戦後、翻っては近代の国際法秩序を守ってきた日本、それを侵食しようとする中国、という構図を事実に基づいて明確にし、法的・倫理的優越性を確保するところから始まるからだ。

もちろん、オバマ政権の同盟国に対する態度に問題が多いことは確かであり、客観的にみて反米ナショナリストが勢力を伸張させる条件は整っている。しかしあえて日本側から日米同盟の船を揺らすのは愚策だ。まさに中国側の日米離間策に嵌る。

問題は、政権発足後1年で、右派の取り巻きの抑えが利かなくなってきた様子が見られることだ。靖国参拝は、こういった取り巻きに「ゴーサイン」を出した形になったのではないか。

続発する不用意な発言や、それを黙認するかのような政権の対応は、即座に「日本人はやはり民主主義も人権も受け入れていない。そもそも経済発展しただけできちんと近代化していない。戦後秩序も本心では受け入れていない」という欧米メディアの主要論客に拭いがたく染みついた偏見と優越感に基づいた不信感を裏打ちする証拠として記録・記憶されていく。

これらの発言は英語でデータベースに記録され、中国側はいつでもこれを検索して引用して宣伝戦に用いることができるし、第三者もまたこれらの発言を手掛かりに日中関係や日米関係を論じていくだろう。

歯を食いしばって西洋文明を取り入れ近代化に尽くした明治人、そして廃墟の中から屈辱に耐えて経済復興を果たした昭和戦後の先人たちの努力を無にしてはならない。

トルコ経済はどうなる(3)「低体温化」どうでしょう

米国でのテーパリング(超金融緩和政策の縮小)がなぜトルコ経済に影響を与えるかというと、私は専門ではないので、関わったお仕事でエコノミストの皆様に教えていただいた話を引き写します。

PHP総合研究所で「グローバル・リスク分析プロジェクト」というのがあるのですが、これに2013年版から参加させてもらっていましたが、2014年版が昨年12月後半にちょうど出たところでした。
cover_PHP_GlobalRisks_2014.jpg
「PHPグローバル・リスク分析」2014年版、2013年12月

無料でPDFがダウンロードできます。

この報告書は2014年に顕在化しかねないリスクを10挙げるという趣向のもの。リスク②で「米国の量的緩和縮小による新興国の低体温化」という項目を挙げてあります。

それによると、

「(前略)2014 年は米国の金融政策動向が、新興国経済の行方を左右するだろう(リスク②)。近年の新興国ブームの背景には先進国、とりわけ米国の緩和マネーの存在があったが、2013 年12 月、連邦公開市場委員会(FOMC)は、2014 年1 月からの量的緩和縮小を決断し、加えて、今後の経済状況が許せば「さらなる慎重な歩み(further measured steps)」により資産購入ペースを縮小するだろうとの見通しを示した。量的緩和策の修正は、新興国から米国にマネーを逆流させることになる可能性が高い。」【6頁】

ということです。そこで新興国が「低体温化」するわけですな。

「2014 年は、2013 年末に開始が決定された米国の量的緩和縮小の影響で、新興国の景気が冷え込む「新興国経済の低体温化」がみられる可能性が高い。」【14頁】

「低体温化」という形容がどれだけ適切かは、今後の展開によって評価されるかな。

どういうメカニズムかというと、

「とりわけ、経常収支が赤字でインフレ傾向の新興国は、経常赤字をファイナンスすることが難しくなる上、通貨下落によりインフレに拍車がかかり、緊縮政策をとらざるをえなくなる。」【6頁】

なんだそうです。

しかも、この緊縮政策が政治的理由で取れなくて、いっそう危機を引き起こす可能性があるという。

「2014 年には4 月にインドネシアで総選挙、7 月に大統領選挙、5 月までにインドで総選挙、8 月にトルコが大統領選挙と重要新興国が選挙を迎えるが、これらの国々はまさにインフレ懸念、貿易収支赤字国でもある。有力新興国のうち、ブラジルでも10 月に大統領選挙が行われる。選挙イヤーにおける政治の不安定性に米国の量的緩和政策の修正が重なると、これらの国々の経済の脆弱性は一気に高まり、しかも適切な経済政策をとることが政治的に難しいかもしれない。」【6頁】

「これらの国々の経済政策は、中央銀行によるインフレ抑制のための金融引締め(金利引上げ)と、選挙対策を意識した経済成長を志向した政策との間で立ち往生する可能性も考えられないではない。」【15頁】

トルコ中央銀行の1月28-29日にかけての大幅利上げは、こういった疑念を払拭するため、というかもはや「立ち往生」していられなくなったのですね。

そして、日本にとっては、

「対中ヘッジに不可欠のパートナーであるインド、インドネシア、ベトナム、そしてインフラ輸出や中東政策における橋頭堡の一つであるトルコといった戦略的重要性の高い新興国が、米国の緩和縮小に脆弱な国々であるという点は2014 年の日本にとって見逃せないポイントである。」【7頁】

なのです。

トルコ内政の混乱に関しては、予想通りというよりも予想をはるかに超えた大立ち回りになってしまっていますが、それについてはまた別の機会で。

ちなみにこのレポートで挙げた10のリスクは次のようなもの。

1. 新南北戦争がもたらす米国経済のジェットコースター化
2. 米国の量的緩和縮小による新興国の低体温化
3. 改革志向のリコノミクスが「倍返し」する中国の社会的矛盾
4. 「手の焼ける隣人」韓国が狂わす朝鮮半島を巡る東アジア戦略バランス
5. 2015 年共同体創設目前で大国に揺さぶられツイストするASEAN 諸国
6. 中央アジア・ロシアへと延びる「不安定のベルト地帯」
7. サウジ「拒否」で加速される中東秩序の液状化
8. 過激派の聖域が増殖するアフリカ大陸「テロのラリー」
9. 米-イラン核合意で揺らぐ核不拡散体制
10. 過剰コンプライアンスが攪乱する民主国家インテリジェンス

1と2が世界経済、3,4,5が東アジア・東南アジア、6,7,8,9が中東を中心に中央アジアやアフリカに及ぶイスラーム世界。

(10はこういうリスク評価などインテリジェンス的な問題に関わっている専門家が感じる職業上の不安、でしょうか。)

なお、リスクの順位付けはしていないので、リスク①がリスク⑩よりも重大だとか可能性が高いとかいったことは意味していません。

念のため、私は執筆者の欄では50音順で筆頭になってしまっていますが、もちろん経済関係の箇所は書いていませんのでご安心ください。中東に関わる部分も、数次にわたる検討会や文案の検討に参加して議論しましたが、それほど大きな貢献をしてはいません。

所属先との関係で名前が出せない人も多いので、実際にはもっと多くの人が関わっています。

中東やイスラーム世界というと危険や動乱や不安定を伴うので、こういったリスクや将来予測についての地域・分野横断的な作業に混ぜてもらうことが多く、勉強させてもらっています。来年も呼んでくれるかな。

しかし「不安定のベルト地帯」と「秩序の液状化」を抱え、「テロのラリー」が始まっていて、それどころか「核の不拡散体制も揺らいでいる」って、中東・イスラーム世界は何なんでしょうか。そんな危険かなあ(自分でリスクを指摘しておいてなんですが)。

テーパリング自体は昨年後半ずっと「やるぞやるぞ」という話になっていたので、このリスク予測プロジェクトのかっこいいエコノミストのおじ様、お姉さまたちからさんざん聞かされており、分かったつもりになっておりましたが、実際にここまではっきり影響が出るとは、実感していませんでした。

まさに12月末というこのレポートの発表予定日あたりに、テーパリングが実施されるかされないか、という話になっており、もしレポートを発表した翌日に実施されたりすると一瞬にして古くなった感じになるのではらはらしましたが、エコノミストの方々は「予定原稿」みたいなものを事前に作っておられて、ちょうどレポート刊行直前に発表されたテーパリング翌月実施の決定に対応して、ささっと直して無事予定通りに最新の情勢を踏まえて刊行いたしました。さすが。

トルコ経済はどうなる(2)テーパリングって何だっけ

経済専門家にとっては初歩中の初歩なようだけど、ここでおさらいしておくと、トルコがその渦中にある問題は、トルコ一国の問題ではなく、米国の金融緩和縮小が途上国にどう及ぶかという問題。

昨年半ばごろから世界経済の時限爆弾というか自爆スイッチのように恐れられてきた、米国が続けてきた超金融緩和政策の見直し、いわゆる「テーパリング(tapering)」が、ブームを超えてバブルのようになっていた新興国経済にどう影響を与えるかということ。

「テーパリング」というのは、昨年から経済関係者によって急に使われるようになった言葉で、蛇口を徐々に占めて水の流れを先細りにしていくようなイメージ。平易な解説は例えばこれ

アメリカも決して金融「引き締め」に回るのではないが、「蛇口を全開にするようにしてマネーを供給してきた超金融緩和政策を、徐々に絞って先細りにしていくよ」という意味で用いられている言葉のようだ。

経済って状況変化によっていろんな言葉が発明されていきますね。

で、このテーパリングで一番打撃を受けるのが、アメリカが不況対策で盛大に提供してきた安いマネーの恩恵にあずかって経済発展してきた、近年羽振りのよかった新興国。

新興国といっても数は多く種類は様々なので、「どこの国がもっとも危ないか」が昨年後半から盛んに議論されてきた。

トルコはめでたく(?)その最有力候補に挙げられていた。

トルコ経済はどうなる(1)深夜の果断な利上げ

1月22日に「トルコはもう三丁目の夕日じゃないよ」と書いてから、トルコ経済はずいぶん動いた。

劇的だったのはトルコ中央銀行が1月28日深夜に緊急の金融政策決定会合を開いて、翌日未明にかけて、直前の予想よりもさらに大きな幅の利上げを行ったこと。

1月末に世界中の新興国に伝染した通貨危機の不安を打ち消すための果断な措置。これが効果をもたらすか、注目されている。

これは単にトルコ一国の経済に関わることではない。世界経済の変化の中で、近年にブーム的な発展を遂げてきた新興国が今後どうなるか、トルコはその試金石と言っていい。新興国相互の影響関係や、日本などに及ぼす影響も深く大きい。

基本的なところをおさえておくと、1月28日-29日のトルコ中央銀行の動きが注目を集めて、ある意味驚かれたのは、「政治的な理由で、トルコはこのような果断な金融政策を採用できないのではないか」と疑念が持たれていたからだ。エルドアン首相は政権維持のために景気の維持にこだわって利上げを渋っており、トルコの中央銀行に独立性があるかどうか疑われていた。

それにもかかわらず、トルコ中央銀行が予想を上回る幅の利上げを行ったことで、新興国に広がる通貨危機への対処能力を市場に対して示した、肯定的な動きと基本的には見るべきだろう。

ただ、それが功を奏するかはいろいろな要素が絡むので予想がつかない。

そして、「ここまでしなければならないということは、よほど危機的な状態なのか」「トルコ中央銀行は事態がコントロール不能になっていることを認めた」「ということはほかの新興国でも」といった憶測を呼んで、かえってパニックを誘発しかねない要因にもなっている。

パニックを誘発して稼ぎたい人もいっぱいいますからね。

そしてエルドアン政権はもっぱら現在の危機を投機筋の陰謀に帰している。陰謀はあるかもしれないが問題はトルコの経済に隙があること。それを中央銀行が塞ごうとしていることは確かだ。

ただそこには当然副作用があって、何よりも、これでもう急成長は見込めない。問題は崩壊するまでいくかということ。

当面は劇的な変化は起っていないようだが、危機を回避したとは到底言えない。トルコの経済発展を支えた欧米や中国などの状況は様変わりしている。トルコ内政やシリア問題・イラン問題など外交も思うようにいっておらず、トルコの「勢力範囲」「経済的後背地」である中東が不安定性を増している。

しかし何よりもトルコそのものの経済的な基礎の脆弱さが、他の新興国と同様に、あぶりだされている。

前のめりの成長と、繁栄を先取りするような生活を享受してきた近年のトルコだが、苦しい段階に来ている。

中東の中で唯一、東アジアの経済発展と若干似たタイプの発展経路をたどってきたトルコは、実は日本や韓国などが抱える問題もかなり共有している。

そんなところも含めてトルコの経済・社会にはこのブログでも注目していこうと思う。

disappointedの用法

昨年暮れの安倍首相の靖国神社参拝について、まず在日米大使館が、そして米国務省が「失望した(disappointed)」と声明を出したことはずいぶん議論の的となった。

日米関係の中では異例の表現だったので、この「失望」がどの程度の「失望」か、米国が同盟国に対して発する表現として、どのような意味を持つのか、注目された。

中東問題を観測している私にとっては、「よく聞いたことがあるな」という表現である。

イスラエルの入植地拡大に関して米政権が用いてきたのが、この「disappointed」という表現である。

簡単に検索してみると(disclaimer: 包括的なちゃんとした外交史の研究の結果ではありません!)、オバマ政権の国務省報道官の声明に限ると、次のようなものがある。

2010年9月27日 国務省クローリー(Philip Crowley)報道官が、当時米の仲介によって再開されていたイスラエル・パレスチナ和平交渉の中で、パレスチナ側が交渉の前提条件としていた「ヨルダン川西岸と東エルサレムへの入植地拡大の凍結」を、交渉再開前に設定していた期限を超えてネタニヤフ政権が延長しなかったことについて、「失望した(We were disappointed)」と声明。

2010年10月15日 国務省クローリー報道官が、エルサレム北方のヨルダン川西岸内の二つの入植地(RamotとPisgat Zeev)内での240戸の住宅建設をイスラエル政府が承認したことに対して、「失望した(We were disappointed)」と声明。

ここまでは、2010年夏にワシントンDCにイスラエル・パレスチナ両首脳と、エジプト(ムバーラク大統領!)とヨルダンの両首脳を呼んで再開した中東和平交渉を頓挫させかねない動きとして、イスラエルの行動を批判したという文脈。

2011年9月27日 国務省ヌーランド(Victoria Nuland)報道官が、イスラエル政府がこの日にヨルダン川西岸の入植地内に1100戸の住宅建設を承認したことについて、「深く失望した(We are deeply disappointed)」と声明。「deeply」が加わっている。

“We consider this counterproductive to our efforts to resume direct negotiations between the parties and we have long urged both parties to avoid actions which could undermine trust, including in Jerusalem, and will continue to work with parties to try to resume direct negotiations.”

文脈としては、これに先立つ2011年9月23日に、パレスチナ自治政府のアッバース大統領が国連加盟を申請しており、それに対する報復として、ネタニヤフ政権が大量の新規住宅建設の申請を認めたという経緯がある。

2012年12月18日 国務省ヌーランド報道官が、イスラエル政府による入植地拡大計画の発表に対して、米国は「イスラエルがこのパターンの挑発的行動に固執していることに深く失望している(deeply disappointed that Israel insists on continuing this pattern of provocative action)」とさらに強い表現で批判した。

これに先立つ2012年11月30日、国連総会でパレスチナのオブザーバー国家としての加盟を認める決議が圧倒的多数で採択された。これに対してネタニヤフ政権は、ヨルダン川西岸に大幅に食い込み、パレスチナ国家独立の際には主要な都市となるラーマッラーとベツレヘム間の交通を阻害するE1回廊への大規模な入植地拡大計画を発表した。E1回廊での入植地建設拡大は、独立したとしてもパレスチナ国家の地理的な一体性の維持が著しく困難になるものとして特にセンシティブな問題だった。ここにネタニヤフ政権が手を付けたことで、米国として最大限の不満を表明したものと見える。

ほんの数秒間だけの検索ですが、古いものではこんなものが出てきます。

1977年7月26日 米カーター政権のサイラス・ヴァンス国務長官が、記者団に対して次のように語った。

「We are deeply disappointed, we have consistently stated and reiterated during the Prime Minister’s visit here that such settlements are contrary to international law and are an obstacle to the peace making process.」

ちょっと意訳しますが、「イスラエルの入植地建設は国際法に反する、和平プロセス構築の障害となると、米政府はずっと言ってきたし、先ほどワシントンを訪問したベギン首相にもあれほど言ったのに、なおも入植地建設を承認したので、深く失望している」といった内容。

(なお、この年の11月20日、エジプトのサダト大統領がエルサレムを電撃訪問し、クネセット(イスラエル国会)で演説。翌年のキャンプデービッド合意、翌々年のイスラエル・エジプト和平条約につながります。結果的に米民主党政権と折り合いの悪かったイスラエルの右派政権がはじめてのアラブ・イスラエル国家間和平に踏み切ったことになります)

包括的に調べたわけではないので、次のようには即断しないでください。

「米民主党政権が、同盟国の右派政権が意に沿わない行動に出た時に用いる最大限度の表現:必ずしも具体的な制裁・対抗措置を取るとは限らない」

共和党政権下ではどう言ってきたのか、このような声明の裏で実際にはどのような措置が取られ、イスラエルにどの程度の不利益が及んだか、長期的な国際世論にはどう影響したかなど、よく考えないといけません。

日本とイスラエルでは、周辺地域の環境や、米国世論と国際社会への発信力、戦後の国際秩序内での正統性(ホロコーストから生還したユダヤ人の国家建設としてのイスラエル建国という大義名分は、アラブ世界やイスラーム世界が強く反対しても、先進国・主要国においてはオールマイティーといっていい力を持っています)が異なります。また、米国への依存度も異なりますので、意味合いも、このような声明をもたらしたことの帰結も異なります。

レクサスと日本外交

苦し紛れに即興的に作った造語「LEXUS-A」が、一人歩き、とまではいかないが、おそるおそるお散歩中、ぐらいか。

1月26日の『東京新聞』で、木村太郎さんが連載「太郎の国際通信」に寄稿した「元米同盟国連盟が拡大中」というコラムで引用してくださいました。冒頭の部分をご紹介します。

「LEXUS-A(レクサスーA)という言葉に出合った。といってもトヨタ製の乗用車のことではない。League of EX US Alliesの頭文字をとったもので「元米同盟国連盟」とでも訳すか。池内恵東大准教授の造語で、英国の国際問題誌モノクルの記事の中で紹介されていた。この「連盟」に属するのはサウジアラビア、イスラエル、トルコなどで、米国が中東政策を転換してシリアのアサド政権を延命させ、イランとの核交渉で妥協したことで外交的に「はしごを外された」面々だ。」

『モノクル』(Monocle)というのはイギリスの雑誌で、最先端のデザインやライフスタイルやファッションと、グローバルな政治経済情報が心地よく混在した、日本にはない形態。

なぜだか知らないが原稿やコメントの依頼が来た。調べてみると表参道にショップを構えていて、特派員までおいている。かなり頻繁に日本の最先端科学技術や、食文化、伝統工芸などを取り上げている。

この雑誌に寄稿した文章(Satoshi Ikeuchi, “Bloc Building,” Monocle, Issue 69, Vol.7, December2013/January2014, p.124)の末尾の部分、

But why not strengthen ties with other abandoned or burned ex-US allies, such as Saudi Arabia, Israel and Turkey? Someone might want to come up with a name for this new bloc. I have a suggestion: the League of ex-U.S. Allies, or LEXUS-A.

というところが該当箇所です。

ま、軽い冗談ですよ。でもちょっとは日本でそういう風に考え始めているんじゃないかな、アメリカさん。

流麗な英語になっていますが、私一人ではこんなに上手に書けません。内容は完全に私が考えたものですが、英語表現・文体はかなり編集側に手を入れてもらっています。忙しくてまったく時間が取れなくて辛うじて夜中に数時間の時間を作って、眠いところを必死に書いて送ったところ、オックスフォード出の切れのいい女性の日本特派員が、”You’ve done a great job.”とか言いながら手際よくピーッと全部上書きして直してくれました。

「お前は良い仕事をしたよ」と言われて、「上手に書けてたんだ」とは思わない方がいいようですね。特にイギリスの英語。

よっぽど無骨な英語だったんだろうなあ。

英語の婉曲表現が実際には何を意味するか、それを知らない人はどう誤解するかを面白おかしく対照表にしたものがインターネットに出回っていた。

探してみると・・・

“Translation table explaining the truth behind British politeness becomes internet hit,” The Telegraph, 02 Sep 2013.

例えば

Very interesting とイギリス英語で言うと、実際には That is clearly nonsense を意味していて、しかし聞いた方は They are impressed だと思って満足してしまう、とな。幸せでいいじゃないですか。

With the greatest respect…なんて丁寧に言われていると実際には You are an idiot と言われているんだと言われても、分かりかねます。

Quite good は本当は A bit disappointing なんだそうです。これはよく言われてきた気がする・・・

I only have a few minor comments は、実際には Please rewrite completely と言われているんだそうです。うひゃー。

それはともかく、Lexus-Aを最初に引用してくれたのは、日経新聞特別編集委員の伊奈久喜さんの「倍返しできぬ甘ちゃん米大統領(風見鶏)」『日本経済新聞』2013年12月22日

「中東専門家の池内恵東大准教授が「Lexus-A」という新語を造った。レクサスAと発音する。新車の話ではない。「League of Ex US Allies(元米国同盟国連盟)」の略語だ。サウジアラビア、トルコ、イスラエル、日本、さらに英国がメンバーらしい。」

もちろん問題となっている対象は私が見つけ出したことではない。ユーラシア・グループのイアン・ブレマー氏が2013年にJIBs(Japan, Israel, Britain)を、米国の後退によって困った立場に立たされる同盟国としてひとくくりにした。さらに今年は年頭の「世界の10大リスク」の筆頭に「困らされた米同盟国」の問題を挙げている。

しかしむやみに悲観的になることもない。米国の同盟国は、たいていは技術があったりお金があったり生活水準が高かったりするのだから、米国抜きで(元)米同盟国連盟を組んで豊かに暮らせばいいんじゃないの?という意味を込めて作ってみました。こちらの方が明るくていいと思います。

「【日米中混沌 安倍外交が挑む】同盟国との関係を悪化させたオバマ外交と安倍首相の地球儀外交」でも引用されているようです。