【談話】今朝の日経新聞に中東情勢をめぐって

今朝の日経新聞に談話が掲載されました。

「混迷深まる中東 どこへ サウジ、イスラエル接近も 東京大学准教授 池内恵氏」『日本経済新聞』2017年7月4日朝刊

聞き手は日本経済新聞編集委員の松尾博文さんでした。エネルギーや中東が専門で、現地特派員・支局長も経験した方で、以前から知り合いで私も普段から記事を読んでいることもあり、大変話が弾みました。紙幅の都合から、サウジとイスラエルの接近という、話をした中で一番際どいところを中心にして掲載されましたが、このインタビューを機会に中東情勢全体の現状と見通しについてまとめる機会になりましたので、有益でした。

全く偶然なのですが、明日の夜10時から、日経の系列テレビ局BSジャパンの「日経プラス10」に出演して、「イスラーム国」のイラクでの支配領域の陥落後の中東情勢について話をすることになりましたので、そちらで時間をとって話してみたいと思います。

【寄稿】『国際開発ジャーナル』7月号に中東諸国・国際秩序の変動について全体像を

国際開発・国際協力の専門誌である『国際開発ジャーナル』に寄稿しました。「変わる世界秩序」とのタイトルを付されたリレー・エッセーの第2回。

池内恵「中東と動揺する世界––––アラブの春とイスラム国の行方」『国際開発ジャーナル』No. 728, 2017年7月号, 20-23頁

ここのところ講演を依頼されれば喋るようなことを、標準的な講義録のつもりで、各要素を短めに詰め込んで見ました。ここの要素について一本ずつ論考が書けそうです。

本号にはこの他に、アジア経済研究所のアフリカ研究者で現在ジェトロ理事(『国際開発ジャーナル』の論説委員でもある)の平野克己さんの論考「援助政策がめざすべきものは」や、東大副学長やJICA理事長を歴任し、今年4月から政策研究大学院大学(GRIPS)の学長に就任した田中明彦先生へのインタビューなどが掲載されています。

また、今号の特集は「ダッカの教訓を忘れない」というもので、中東研究者の保坂修司さんによる地域専門家の養成の必要性を訴える論考や、コントロールリスク社などの担当者の発言も載っています。

【寄稿】『アステイオン』に、国際秩序をめぐる大著の数々を大ざっぱに総覧

長めの論考が『アステイオン』に掲載されました。というか、されます。すでに見本はもらっていますが、奥付上は5月26日に刊行とのこと。書店で予約しておくと真っ先に読めます。

池内恵「二十一世紀の『大きな話』、あるいは歴史を動かす蛮勇」サントリー文化財団・アステイオン編集委員会(編)『アステイオン』Vol. 86、CCCメディアハウス、2017年5月26日発行、168−187頁

『アステイオン』の今号の顔ぶれは、いつにも増して豪華です。目次の詳細と、各論考の冒頭の部分を、サントリー文化財団のウェブサイトで見ることができます。池内の論考の冒頭はこちら。最初の一節でゆるゆるとエッセー風に始めて油断させておいて、本文では世界秩序をめぐる大著の一群を、一気に総覧します。

特集「権力としての民意」(責任編集・待鳥聡史)は、最近流行りの用語で言えば「ポピュリズム論」というところに押し込められかねませんが、通り一遍のありふれたものではなく、ここぞと有力研究者を動員し、よその媒体ではみられない、深いところを理論的に探ったものになっています。

論壇で話題のポピュリズム論のいわば「標準」の地位を獲得している中公新書『ポピュリズムとは何か』を書いた水島治郎さんの「民意がデモクラシーを脅かすとき––ヨーロッパのポピュリズムと国民投票」を筆頭に、岡山裕「アメリカ二大政党政治の中の『トランプ革命』」や、阿古智子「インターネット時代の中国ポピュリズム」等々、欠かせないテーマに、それぞれ代表的な研究者が取り組んでいます。

また昨今の日本でのポピュリズム・大衆扇動政治の代表格といえばそれはもちろん小池都政ですが(私が勝手に決めた)、これについては金井利之さんの「小池都政における都民と “民意”」が載っています。

欧米と中国・日本だけでなく、東南アジアについても、例のコワモテ豪腕のドゥテルテ大統領について、高木佑輔さんの「フィリピン・ドゥテルテ政権の政治––民主化後の政治発展とエドサ連合」が。大変興味深い。

特集の外でも、有力な政治学者たちが次々と論考を寄せています。奈良岡聰智「よりよき公文書管理制度のために––イギリスとの比較に基づいて」や河野勝「安保法制は何を後世に残したのか––もうひとつの安倍政権論」は是非読んでおきたい。

五百旗頭薫さんがここのところ『アステイオン』に毎号のように力の入った論考を寄稿しており、今回は「嘘の明治史––五/七/五で嘘を切る」。

他にもいろいろ載っていて、これで本体価格1000円。もうまったく完全に採算度外視です。

どれだけ採算度外視かというと、ノーベル文学賞級の作家ミラン・クンデラの対談も、はるか後ろの方にあまり目立たない感じで載っています。文芸誌だったら背表紙に名前が載りますよ。

『アステイオン』の一つの売りの、各国のハイブロウな著作の書評・紹介をかなり自由に書ける「世界の思潮」では、マルガリータ・エステベス・アベさんがトランプ現象を読み解く二冊を紹介しています。編集の工夫、あるいは幅広いネットワークから常時集めている原稿ストックの豊富さから、特集の外でも特集と響き合う内容の論考が加わって追い討ちをかけます。

そんな豪華執筆陣が、特に今回は政治学や国際関係学者が、勢揃いして、深く・緻密な論考を次々に寄せているところに、私の論考では何を書いたかというと、いきなり冒頭から見出しが「『大ざっぱ』の効用」なのです。

何がどう「大ざっぱ」なのかというと、それは読んでみていただけば分かりますが、大概下記のような趣旨の文章です。

今回の私の論考では、政治学の優秀な研究者による力の入った論文が目白押しである中に混じって、ちょっと箸休め・頭休めのために目を通していただくことを意識して、以前に学会誌に書評を寄せたことのあるウォルター・ラッセル・ミード『神と黄金』を手がかりに、冷戦後半から冷戦後に時期に提起された、国際秩序・世界秩序論のうち、アカデミックな世界だけでなくより広い読者層に向けて書かれ、読まれて、影響を与えた代表的な作品の変遷を、一筆書き的に紹介しました。文末の注で、原著と邦訳書の書誌情報を一覧に収めてみました。

何事も、時系列に並べると見えてくることがあるものです。学問は、集めて並べてみるのが、まず基本。どういう手法で「集め」「並べ(変える)」かについては、高度で包括的で検証可能な手法などを開発する余地はありますが、何はともあれまず定性的に見て触って読んで、どう並べればいいかをあれこれ考え、並べ替えてみること。

世界秩序をめぐる「デカい話」が周期的に新しいものが提起されて、好評を博し議論の対象になりますが、それらを毎回入手して隅から隅まで読んでいる人はよっぽどの読書家で、大抵は忙しい時期に出た本などはうっかりしているうちに見かけなくなってしまう。タイトルをちょっと聞いたことあるけれども、読んだことがなかった、あんな本こんな本が、読んだ気になる、読んでみたくなる、そんな企画です。お楽しみください。多分今号の全論考の中で一番分かりやすい論考。

今回は注が文献リストのように機能するように意図してつくっています。移り変わる国際秩序と国際世論を、時代ごとに背骨を作ってきた「感動巨編」系の数々を、体系的に、例えば半年で全部読んでみる。大学初年次ゼミとか読書会とかをやる際に、冒頭で配る文献リストと導入・手引きを記したイントロ・テキストとなればいいかな、と思って書きました。

【寄稿】「ソマリエメン」と言ってみたかっただけ?『中東協力センターニュース』4月号に

少しこの欄での通知が遅れましたが、『中東協力センターニュース』4月号に論考を載せております。

池内恵「『ソマリエメン』の誕生? 紅海岸の要衝ジブチを歩く」『中東協力センターニュース』2017年4月号, 10-20頁【ダウンロード

四半期に一回の頻度で定期寄稿している『中東協力センターニュース』ですが、今回は、先月のジブチ訪問の報告として、若干紀行文的な要素を加味した論考です。そうは言っても、結局、かなり解説や分析に近づいた文章になっています。

地図は見繕って便利なものを拝借して載せてみましたので、元の記事に遡って読むなどして見るといいでしょう。

読み直して見ると、一部の箇所で、「ソマリ人」と「ソマリア人」がそれほど意味なく書き分けられてしまっているところがあり、かといって完全にどちらかに統一することも難しいので、次に関連テーマで書く時にはさらに詰めて調べて適切な語用を見出していこうと思います。

また、18頁の19行目の「何時にも渡って」は「何次にもわたって」とするべきでした。いずれにせよ硬さが抜けない文章ですが。

今回は、とにかく世界に先駆けて「ソマリエメン(Somaliemen)」という造語を作って使ってみた、というところが一番の肝でしょうか。

米国が9・11事件以後、アフガニスタンとパキスタンの国境地帯をひとまとまりのものとして、「アフパック(Af-Pac)」と呼んで統合的な対処策を探ったり、「イスラーム国」がシリアとイラクの国境地帯を制圧し実効支配したことから「シラーク(Syraq)」と呼ばれたといった先例と同様に、ソマリアとイエメンの間の人的・物的・思想的交流のインフラの存在とその深化の可能性や、それと同時に進みかねない、ソマリアのアッシャバーブとイエメンのAQAPの相乗り現象の進展、それに対する米国トランプ政権による対ソマリアと対イエメンでの対テロ作戦の強化と一体化、といった事態がより十全に進めば、やがて「ソマリエメン」が語られることになるでしょう。

四半期に一回のこの定期寄稿は、毎度、逼迫した日程の中で時間を捻出し、最新の情勢や、私自身の研究の展開の中での新しい興味対象などから熟考してテーマ設定を行い、締め切りと校了の最後の最後の瞬間まで頭を捻って(編集部には極度の負担をかけて)脱稿・校了します。

研究者としての利益からは、一つのテーマにもっと長い時間かけて取り組むために、この寄稿のために割いている時間を振り分けたほうが得になる、という考え方もあると思います(今は、研究者の環境が極めて厳しくなっており、私自身が通常よりはるかに厳しい条件を選んで赴任してきているので、本来であれば研究者がするべきではないこのような比較衡量が時に頭をよぎります)。けれども、3ヶ月に一度、必ず、中東と隣接地域や国際社会全体も視野に入れて、今何が重要か、将来に何が重要になるかを徹底的に考え直す時間を作ることは、一つ一つはそれほど重要に見えなくても、積み重ねることで、何かが見えてくるきっかけになるのではないかと信じて続けています。

【寄稿】『日経新聞』経済教室にシリアの化学兵器使用と米の空爆について

寄稿しました。

池内恵「米国のシリア攻撃、展望は――米政策の不可測性に長短、強い指導力発揮は望めず(経済教室)」『日本経済新聞』2017年4月18日

過去の日経新聞への寄稿については、このエントリでまとめてあります

【寄稿】『国際政治』に書評:米国が担う国際秩序形成について

日本国際政治学会の学会誌『国際政治』第186号に書評を寄稿しました。

池内恵「書評 ウォルター・ラッセル・ミード著 寺下滝郎訳『神と黄金(上・下)』」『国際政治』第186号、2017年1月, pp. 169-172.

脱稿が遅れて担当編集の方にはご迷惑をおかけしました。

書評の枠を超えて、関係する書物を網羅した書評論文的なものを書いたところ、規定の枚数の二倍以上を書いてしまい、『国際政治』は字数が極めて厳格なため第1稿のままでは絶対に掲載されないため、絞り込んだ短縮版の第2稿を改めて提出して、掲載にこぎつけました。

長い方はさらに拡充して別の雑誌に載せる予定です。

【寄稿】PHP総研「グローバル・リスク分析」2017年版を発表

毎年恒例の、PHP総研で行っている「グローバル・リスク分析」に今年も参加させていただきました。

本日、2017年版が発表されました。こちらから本文をダウンロードできます。

今年選んだ10の項目は次のようなものでした。

Global Risks 2017

  • 1.サイバー分野で失われる国際競争力と進行する「植民地化」
  • 2.トランプ「勝手主義」に翻弄される世界
  • 3.中間層「選挙の乱」矛先はグローバリズムへ
  • 4.対外強硬姿勢で国内不安の乗り切りを図る中国
  • 5.韓国大統領選とトランプ政権登場で混乱必至の朝鮮半島情勢
  • 6.東南アジアで不安定化する米中バランス
  • 7.密かに高まる印パ核保有国同士の軍事的緊張
  • 8.トランプ政権の政策転換で不安定化する「ポストIS」の中東
  • 9.構造的ハードルに阻まれ米露リセットに限界
  • 10.重要インフラへのサイバー攻撃の本格化

今回は「サイバーで始まりサイバーで終わっている」(2項目使っている)というのが一つの特徴でしょうか。サイバーについては以前から注目しており、昨年も10項目の10番目(といってもリスクの度合いに順位はつけていませんが)に入れておきました。

しかし今回はこれをかなり強調し、またリスクの所在・源がサイバー攻撃を「行う側」にあることは当然でその分析を進めつつ、「日本側の対応の不十分さ」に重大なリスクが秘められている点を、より強調しています。来年はリスクとしてのサイバー問題が、すでに顕在化したテロなどに比肩するような規模で顕在化し、重大事象を引き起こしかねない、という「潮時」感を醸し出しています。

2012年版から始まったこの企画、私は2013年版から参加させていただいていますが、毎回大変勉強になります。

これぐらい続くと、変化の動向を見るのにも役に立つのではないでしょうか。末尾に2012年版以来の毎年の10のリスクを並べて一覧表にしてありますので、思考実験にお使いください。

世界に存在するありとあらゆるリスクを列挙するのではなく、年頭に「今年」のリスクとして挙げるならこれ、というものを選んでいます。過去の版で指摘しておいて、すでに顕在化し認知されたリスク項目については、今年も依然としてリスクではありつつも、取り上げないことがあります。

以前の版については、以下のエントリもご参照ください。

【発表】『PHPグローバル・リスク分析』2016年版(2015年12月18日)
2015年のグローバルリスク予測を公開(2014年12月20日)
トルコ経済はどうなる(3)「低体温化」どうでしょう(2014年2月12日)

【寄稿】『公研』10月号の「独裁の政治学」をめぐる対談をウェブに公開

『公研』に寄稿しました。サザンメソジスト大学の武内宏樹准教授(政治学・中国政治)との対談です。

武内宏樹・池内恵「独裁国家の仕組み」『公研』2016年10月号、通巻第638号、36−67頁

長大です。32頁に及びます。『公研』の過去の対談の中でも群を抜いて最長とのこと。

2時間半ぐらいしゃべったのではないでしょうか。中東や中国を政治学から見る際の厄介な問題について、論文に直接は書かないが論文を書く際に頭を悩ませていることについて、学会に行って空き時間に喫茶スペースで延々と喋っているようなことをそのまま文字にしてあります。

『公研』は、官庁やメディアの一部で知っている人は非常によく知っている、知らない人は全く知らない、一般的には全くと言っていいほど知られていない媒体です。しかし研究者の普段話している、考えていることを、ほとんどそのまま書いたり話したりしても載せてもらえる、数少ない媒体となってきました。そのために、一部の人には非常に注目されています。

以前に、待鳥聡史先生との対談が載った時も、密かにこの欄でお知らせしたことがあります。

『公研』は公共産業研究調査会の会員企業にのみ配られるため、書店などでは市販されていません。また、ウェブサイトでも記事を載せておらず、最新号バックナンバーの表紙と目次が見られるのみ。

今回、編集部の許可を得まして、武内先生のホームページにアップロードしていただいていますので、どなたでもお読みいただけます【本文はこちらから】

【一ヶ所訂正。最後の67頁上段でサウジの「プラン2030」とあるのは、もちろん「ヴィジョン2030」のことです。なにしろすごい勢いで二人とも喋っていますので、「国家改造のマスタープランとして発表されたヴィジョン2030とその当面の行動計画」というような意味で複数のことを同時にまとめて話したことを、速記に手を入れる際になんとなく「プラン」としてしまい、校正でも気づかずにそのままになってしまいました(対談の時も、校正の段階でもいずれも、最後の頁までくるともう疲れてきていましたので・・・)。まあサウジの個別の話をするのはこの対談の目的ではなく、政治学上の、独裁国家の安定性と不安定性を見るための理論的な難しさについてひたすら考えておりましたので、こういった細部についてはあまり気を配っていません。本質に関わらない細かな言い間違いも含めて、学会の空き時間とか懇親会での会話を記録するような趣向とお考えください。】

 

秋は学会(3)アジ研のセミナー「中東域内政治の新展開」でモデレーターを

秋の学会の流れでもう一つ。

ジェトロ・アジア経済研究所の「専門講座」が赤坂アークヒルズのジェトロ本部内で開かれます。イラン、トルコ、サウジの専門家が報告し、私はモデレーターを務めさせていただきます。

アジア経済研究所専門講座「中東域内政治の新展開——イラン・トルコ・サウジの視点から」
2016年11月4日(金)14時30分~17時05分 (開場:14時00分)

参加は無料です(先着200名)。ウェブサイトから事前申し込みが必要です。

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アジア経済研究所(通称「アジ研」)は、日本でほぼ唯一の(世界でも稀な)、発展途上国全域をカバーした地域研究・開発研究の機関で、かつては独立した特殊法人でありましたが、橋本行革の際に共に経済産業省管轄の特殊法人だったジェトロ(日本貿易振興会・当時。現・日本貿易振興機構)と統合しました。以前は曙橋(防衛省の隣・現在は中央大学の市ヶ谷キャンパスの建物)にありましたが、現在は海浜幕張に移転しています。

ジェトロとの統合効果で、こういった広く関心を呼びそうな講演会・セミナーは、都心・赤坂のジェトロ本部の大きなセミナールームで開催してくれます(多くは無料。有料の場合も数千円程度です)。

私の最初の就職先もこちらで、10年・20年かけて研究者を育ててくれるこの組織の特典を利用することもなく、3年で転出してしまい、おそらく最短滞在記録のOBとなってしまいましたが、その後もなにかと研究会・講演会など、あるいは専門誌への論文の寄稿特集の企画・編集などで声をかけてくださることがあり、新たに創刊された現代中東分析の学術誌『中東レビュー』にも長い論文を寄稿させていただきました。今後も編集のお手伝いをしたり、論文を投稿するなど、関与していきたいと思っています。

今回も、シニアの研究員から、若手のすでに実績ある研究員まで、経産省傘下の機関ならではの、豊富な人的・組織的リソースを動員して、専門知識を一般に公開してくれますので、ぜひご来場ください。

詳細はこちらから

念のため、セミナーの紹介文を以下に貼り付けておきます。

9.11米国同時多発テロから15年目の今年、米国では第45代大統領を選出する選挙が大詰めを迎え、欧州を巻き込みながら激動を続ける中東情勢もまた再び新たな段階に入ろうとしています。本講演会では中東情勢を理解するための最も重要な要件でありながら日本では正面から取り上げられることの少ない中東の域内国際関係を各国の専門家が整理し、今後数年間の見取り図を得ることを目的とします。

2011年初頭からの「アラブの春」を経た現在、中東域内の主要なアクターは大きく様変わりしており、それはイラン、トルコ、サウジアラビアの三カ国であるとみられます。米国の新大統領が最初に取り組むべき最大の課題のひとつはシリア問題でありますが、この三国はシリアに関してそれぞれ異なる利害を有しています。

さらにこれら三カ国間の相互の二国間関係はそれぞれ錯綜しており、一国からのみの視点では到底バランスのとれた理解に至ることは難しいです。そこで本講演会では上記三カ国の専門家が幾つかの共通の設問についてそれぞれの国の立場からの回答を試み、最後の質疑応答および討論の時間に中東政治の今後数年間の展望に至ることができれば幸いと考えます。

皆様のご参加をお待ちしています。

開催日時
2016年11月4日 (金曜) 14時30分~17時05分 (開場:14時00分)

会場
ジェトロ本部5階 展示場 pdf
(東京都港区赤坂1-12-32 アーク森ビル5階)
最寄り駅:東京メトロ 南北線六本木一丁目駅・銀座線溜池山王駅・日比谷線神谷町駅

プログラム
(予定)

14:30~14:40
趣旨説明
鈴木均(新領域研究センター上席主任調査研究員)

14:40~15:10 講演1 「イランからみた中東域内政治」
鈴木均

15:10~15:40
講演2 「トルコからみた中東域内政治」
今井宏平(地域研究センター 中東研究グループ研究員)
15:40~15:55 休憩

15:55~16:25
講演3 「サウジアラビアからみた中東域内政治」
福田安志(新領域研究センター 上席主任調査研究員)

16:25~17:05
質疑応答・討議、総括
<モデレーター>
池内恵 氏(東京大学先端科学技術研究センター准教授)
<パネリスト>
鈴木均
今井宏平
福田安志

使用言語
日本語

主催
ジェトロ・アジア経済研究所

参加費
無料

定員
200名 ※定員になり次第、締め切ります。

お申し込み締切
2016年11月1日(火曜)17時00分 (ただし、定員に達した場合、事前に締め切らせていただきます。)

※ 取材のため会場内にメディアのカメラや撮影チームが入る可能性もありますのでご了承ください。

【今日の一枚】(32)中東の国境線を引き直すなら(6)「イスラーム復興」の野望

中東再分割の地図をいろいろ紹介してきましたが、最も話題になった、印象に残っているのはこれかもしれません。

イスラーム国黒地図2世界
出典:“The ISIS map of the world: Militants outline chilling five-year plan for global domination as they declare formation of caliphate – and change their name to the Islamic State,” Daily Mail, 30 June 2014.

「イスラーム国」が目指すカリフ制の支配領域は、ここまでなのだ、と真偽は不明ですがウェブ上で出回っているものを、いろいろな新聞が転載して、よく知られるようになったものです。

日本の世界史の教科書に載っているような、イスラーム世界の栄光の時代に征服して支配していた土地は全部取り戻すというのですね。「イスラーム国」あるいはそれを支持する勢力がこのような世界観と地理感覚・地理概念を持っていることは確かです。

【今日の一枚】(31)中東の国境線を引き直すなら(5)イスラーム国の黒地図

中東再分割の地図でもっとも有名といえば、「イスラーム国」による中東、そして世界の再分割の野望を示したものとして出回っている、黒地図でしょう。真偽のほどは分かりません。このような発想は広くアラブ世界の民族主義的な界隈に広がっていることは確かですが。

イスラーム国の黒地図1
出典:“The Fall of Mosul to the Islamic State of Iraq and al-Sham,” Institute for the Study of War, June 10, 2014.

「イスラーム国」がモースルを占拠して大きな話題になってすぐに、ISWがブリーフィングのプレゼンテーションのスライドを公開して、その中に、どこからか入手した、「イスラーム国」側がもくろむイラクとシリアの新たな「州(wilaya)」への分割計画を示したものとみられる、このおどろおどろしい黒く塗られた地図が入っていました。これがその後の「イスラーム国」に関する議論でも使われ続けています。実際、その後の「イスラーム国」はおおむねこの地図に基づいた統治・行政区画を主張しています。

これまでに示したように、欧米の言論の場で中東再分割とその地図についての議論が盛り上がっていたところに、「イスラーム国」が出てきて、どことなく符合する独自の案を出してきた(ように見えた)ことが、様々な想像力を刺激したのでしょう。

【今日の一枚】(30)中東の国境線を引き直すなら(4)2007年末のゴールドバーグの記事

ロビン・ライトの中東再分割地図の記事がニューヨーク・タイムズ紙に出て議論の軸になると(この人は英語圏で中東に関していつもそのような役割を負うようですが)、例のArmed Forces Journalはじめ、「うちがこの件では元祖だよ」と言い出すようになったのですが、その中で話題なったのは、オバマ大統領とも近く、中東やイスラエルに強いジャーナリストのジェフリー・ゴールドバーグが2014年6月に出した論稿。「イスラーム国」がイラクのモースルを陥落させ、「中東の地図を塗り替える」と息巻いたところで、「うちは2007年にはこのことを予期していました」と「ドヤ顔」です。まあこういうのも「だからアメリカの陰謀だ」という話のネタになってしまうのですが。

中東分割案アトランティック2007
出典:Jeffrey Goldberg, “The New Map of the Middle East:  Why should we fight the inevitable break-up of Iraq?,” The Atlantic,  June 19, 2014.

この地図はアトランティック誌の2008年1・2月号に最初に載ったものでした。

Jeffrey Goldberg, “After Iraq: A report from the new Middle East—and a glimpse of its possible future,” The Atlantic, January/February 2008.

 

【今日の一枚】(29)中東の国境線を引き直すなら(3)米退役軍人作家の奇想

中東再分割の地図としてもっとも有名で、物議を醸したものが、これ。2006年に、米国の退役軍人の作家が、米軍人さん向けの雑誌Armed Forces Journalに載せたもの。民族や宗派に合致するように国境線を引いたら、こうなるよ、と大胆に引き直してみせた。

中東分割案2006Armed Forces Journal出典: Ralph Peters, “Blood borders,” Armed Forces Journal, June 1, 2006.

これは別に米国の政策でもなんでもなくて、ただ仮説として面白半分に書いただけなようだが、軍人さん向けの雑誌に載ったために、「米国の陰謀!」として中東及び世界の陰謀論で使いまわされる結果となった。

ウェブ版の記事には地図が載っていないのだが、話題になりすぎたから隠したというわけでもなく、単に紙媒体からウェブにデータを移行するときに載らなかったみたい。

2013年9月にロビン・ライトがNYTで中東再分割地図を、ネタとはいえ多少本気な感じで提案して話題になった時に、AFJの編集部も、「弊誌ではずっと先にやっていました」と、改めてウェブサイトに地図を載せている。悪びれた様子はない。「米政府の見解とは無関係、言論の自由です」ということなのだろうが、米国がやることはいちいち注目されるので、もう少し配慮がないものか。「イスラーム国は中東分割をたくらむ米国の陰謀」といった議論をする論者には、軍人さん向けの一般誌のお楽しみの記事でも「動かぬ証拠」になってしまいます。

“Peters’ “Blood borders” map,” Armed Forces Journal, October 2, 2013.

【今日の一枚】(28)中東の国境を引き直すなら(2)キング・クレーン報告書

中東を再分割するなら?という思考実験で用いられる地図のその2。1919年のキング・クレーン委員会の報告書で行われた提案。2013年にアトランティック誌が引っ張り出して来て、ちょっと話題になりました。

キングクレーン委員会

出典:“The Middle East That Might Have Been: Nearly a century ago, two Americans led a quixotic mission to get the region’s borders right,” The Atlantic, February 13, 2015.

1916年のサイクス=ピコ協定での植民地分割密約に固執する英仏に対して、民族自決を掲げたキング・クレーン委員会はキングとクレーンの二名を団長とするアメリカ人主体の調査団を送り込みました。

『サイクス=ピコ協定 百年の呪縛』(新潮選書)でも書いたように、実際には1920年のセーブル条約でいったん極端に分割されたオスマン帝国領土を、1923年までに新生トルコ共和国が一定程度奪い返して決着します。

しかし、より現地の民族・宗教・宗派を考慮して線引きすればこうなったかもしれない、というのがキング・クレーン報告書です。

その後人口構成が変わっているので、アルメニアのところなどは現在は全く現実味がありませんが。イスタンブルの国際管理など、現代には考えられないことですが。

【今日の一枚】(27)中東の国境を引き直すなら(1)ロビン・ライトが書いたもの

シリアの分割を考えるときに参照される歴史地図を先日示しましたが、中東全体に国境線を引き直すなら、という思考実験は多く行われています。いくつか紹介しましょう。

一つはこれ。

中東分割地図1(NYT)
出典:Robin Wright, “Imagining a Remapped Middle East,” The New York Times, September 28, 2013.

この地図に付された記事はこれ。筆者は中東ジャーナリストのロビン・ライト。ワシントンの政治家にも近い有力・有名な人なので、アドバルーンか?と噂されたものです。

Robin Wright, “How 5 Countries Could Become 14: Slowly, the map of the Middle East could be redrawn,” The New York Times, September 28, 2013.