【断然】ちくま新書の一冊を選ぶなら『もてない男』だ~忙中閑あり~

一本原稿が終わったので、次の仕事に出かける前の一瞬の間にエントリを一本載せるか。

「ちくま新書の創刊20周年記念「私が選ぶ一冊」 ちくま新書ブックガイド」に短文を寄せました。(この頃に書いていた

無料のパンフレットです。大きな書店に行くと置いてあるかもしれない。9月に出ているからもうなくなっている可能性もあるが、しかしいろいろイベントとかやっているからまだあるだろ。

編集部のアンケートに答えて、いろんな人が【例1】【例2】、自分にとっての「ちくま新書の一冊」を挙げるという企画。

私が選んだのは──

小谷野敦『もてない男』(1999年)

でした──


Kindle版も出てるらしい。

「一冊選ぶ」というのはけっこう難しい。絶対評価でどの本が一位なんてことはあり得ないのだから、基準を設定して、それに照らしてこれが良い、と書いていくのが筋だろう。評者のそれぞれの基準のセンスと審美眼が問われる・・・という訳でこういうアンケートはけっこう鬼門なのです。無視してしまうのが一番かも。そうはせずに編集部の挑戦に答えた116人がそれぞれの理由で「一冊」を挙げている。パラパラめくっているとなかなか面白い。

私は五十音順で父と叔父に挟まれておりまして、手堅い地味な研究者らしく、一冊選ぶ際の基準と定義から入っている。

「新書の利点は、①学識深い研究者による入門、②新進の学者が新説・問題作をあえて世に問う、のどちらかである場合に、もっとも生かされると思う」

という基準を私が勝手に置いて、その基準からすると、①と②を両方備えた本として、『もてない男』が最適なんじゃないの?

一般論として新書はこういうもの、といった具合のことを書いていますが、含意は「ちくま新書」はこういう方面に利点があって、それがもっとも生かされている本はどれかな?と議論しているわけでがあります。「新書の一冊」ではなく「ちくま新書の一冊」なのだからね。そういう意味でちくま新書らしい「一冊」はこれだよね、というところに話が合う編集者とは仕事がしやすい。

もっと簡単に、まったく唐突に「ちくま新書で一冊だけ思い出すタイトルは?」と聞かれたらどの本を思い浮かべるか?

多くのおじさん本読みにとってはこれじゃないのか。意外に他の人が挙げていないな。正直に答えなさい。

さらに実は「一冊」というのも有意な指標でもある。これが「10冊」だったらどうか。そこには学術的な意義や完成度の相対評価とか、あるいはすごく売れて影響力があるといった数値的な要素も、そしてどの分野に何冊を振り分けるかといったバランス感覚、政治的判断も加味されてくるだろう。

場合によっては、「一冊」なら選ぶ本を、「10冊」なら選ばないかもしれない。いえいえその小谷野先生の本はベスト10でももちろん入れますよお願いしますよどうかひとつよろしくそれは。

~アンケートに答えて図書カード3000円貰いました~