ここのところしばらく、極力インターネットから遠ざかって論文を書いていました。
ここのところ頭を悩ませてきた難題は、インターネットの影響による個々人の態度の変化が、実際に各国の個別の文脈でどのように社会運動や政治変動につながるか(つながらないか)、というものでした。逆接的ですが、オンラインの影響について徹底的に考えるには、どこかでオフラインに引きこもる必要があるようです。オンラインでの情報収集や発信はもちろん重要なのですが。引きこもって論文を書く際にも、データベースからダウンロードした大量の論文を参照しているのですが、ここでさらにその先を調べようとネットに繋がってしまうと、気が散るんですよね。
そして、研究テーマそのものに関しても、オンラインでの「盛り上がり」がオフラインでの現実にどう反映されるかは、かなり複雑な、各国によって異なる条件・文脈が関係しているようです。そのことをオフラインの状態でずっと考えていました。ややこしいパズルを解いています。しかしこのあたりが地域研究と政治学を思想史と絡めながらやっていることで見つかる面白いところです。
そうこうしているうちに、気がつけば、先日事前にちらっとお知らせしていた、『週刊エコノミスト』でやっている読書日記の連載第14回が出ていました。
しまったもう次の号が今日あたりに出てしまっている。私の連載ページは、週刊エコノミストの電子版(Kindle等)には載っていないので、現物が手に入らなくなるとそれっきりです。
アマゾンなら現物が買えそうです。今回は逃避効果なのか、楽しく勢いよく書けたので、忙しい方の暇つぶしにぜひ。
池内恵「中東から逃避するための大人の夢物語」『週刊エコノミスト』2015年9月8日号(8月31日発売)、57頁
先日のエントリ(「逃避の書」)でも書きましたが、取り上げたのはこの本です。
・・・アマゾンでは新品がなくなっている。多分一時的に在庫が切れただけだと思うんですけれど・・・白水社の在庫を調べている時間がない。たぶんあります。ご関心のある向きは紀伊国屋書店や丸善・ジュンク堂などで検索してみると良いのでは。
読書日記の一部を引用すると、
「しかし問題はすでに末端部局の判断を超えていた。中東問題で成果を出し、メディアの注目を集めたい首相が、外務大臣も差し置いて、この案に飛びついた。「イエメンで鮭釣りを」が国家的プロジェクトに膨らんで、その実現が、キャリア・ウーマンの妻にも馬鹿にされているしょぼくれた中年窓際学者の肩にかかってしまったのだ。どうする?行く手には、立ちはだかる難題だけでなく、婚約者がイランで消息を絶った傷心の美女も現れて・・・」
・・・と映画配給会社の宣伝部員がチラシ用にやっつけで書いたような文体を意図して使っています。意図しなくてもそうなってしまったのかもしれません。なにしろ忙しいもんで。