ここのところ、リビアの分裂の進展についての地図を2枚お見せしましたが、今日は3枚目。2015年5月にニューヨーク・タイムズ紙のウェブサイトに掲載されたものです。
“How ISIS Expands,” The New York Times, May 21, 2015.
ニューヨーク・タイムズ紙のこのページは、この時点での「イスラーム国」の、世界各地での多種多様な現れについて、複数の方法の地図表現によって示したもので、「イスラーム国」の組織の特性、複数のあり方を説明する時に、視覚的に把握してもらうために大変重宝しますので、よく使わせてもらっています(記事をクリックして記事本体を見れば地図はより鮮明になります)。
この地図は、2015年の5月の時点でのリビアやエジプトのシナイ半島で、各地で局地的に、「イスラーム国」に共鳴し、「イスラーム国」を名乗る勢力が出てくる様子を図示したものです。
興味深いのは、それがイラクやシリアの「イスラーム国」が地理的に連続した領域に延伸することによって広がっているのではなく、現地のそれぞれの文脈で、現地の勢力が「イスラーム国」を名乗る現象が「まだら状」に生じていることです。
このまだら状の斑点、あるいは水滴状の勢力分布が広がってつながると、まとまった面積の領域支配となります。この時点ではまだまだら状の斑点が散らばる状態でした。
中部沿岸部のシルト(地図上ではSurtと表記)、その少し東のナウファリーヤ(An Nawfaliyah)、東部のデルナに「イスラーム国」を名乗る集団が出てきていることが分かります。
現在の状況としては、先日お見せした今年2月の地図では、カダフィの故郷であるスィルトを中心に、水滴が集まってちょっとした湖になるように、まとまった範囲が勢力範囲になってしまっています。そして今年3月30日に一応成立したことになっている「国民合意政府」に集まる民兵集団を英国などが支援して、スィルトの制圧のための軍事作戦が今進められており、6月9日には「国民合意政府」はあと数日でスィルト奪還作戦が完了するという見通しを示しましたが、その後の展開は明らかではありません。スィルトの「イスラーム国」勢力は軍事力や統治能力はそれほどないものの、自爆テロを繰り出して抵抗している模様です。