外交専門誌『外交』(外務省発行、都市出版発売)に寄稿しました。
池内恵「中東にみる「国民国家」再編の射程—サイクス・ピコ協定から一〇〇年の歴史的位相」『外交』Vol.37、2016年5月号(5月27日発売)、112-120頁
『外交』という雑誌にはかなり専門的なことも書けるので、依頼を受けて余裕があれば書いていますが、ここのところご無沙汰していました。第1号から第12号までは洋書の書評を連載していました。
(バックナンバー目次はこちらから。第12号まではPDFで各論文が読めるはずですが、URLが混乱していたりするところがあるかも)
『外交』とは何か、と言いますと、民主党政権の時の「仕分け」の対象になって、都市出版が長く刊行していた『外交フォーラム』がなくなった後継誌ということもあって、外務省が発行元となる(ために商業的な流通がしにくい)、編集実務を請け負い、発売元が時事通信社と都市出版の間で数年ごとに行ったり来たりしてよくわからん、といったハンディがありますが、育っていってほしい媒体ではあります(役所の公式見解とか、各種「学会」の順送りで選定されてくると思しき、目線が読者と公共圏を向いていない、若干要領を得ない書き手が少ない時は、読みごたえがあります)。
今回は、編集長の中村起一郎さんに聞き役になってもらい、いったん叩き台を作ってもらった後で私が大幅に書き直すという形をとりました。その結果、一問一答形式に放っていませんが、語り下し風の文体になっています。最近本を数冊出して、次の数冊を書いているところですので、ゼロから論稿を書くのが大変そうでしたので。
ふつうはそういう時は寄稿そのものをお断りするのですが(『外交』も過去何度かお断りしていると思います)、今回は、そろそろ中東国際政治の現状について考えをまとめて、現段階での認識を記録しておくのもいいかと思いまして。
最近そういった関心からいくつかインタビューを受けていて、そのうち一つはすでに時事通信社のe-World Premium 5月号に載っています。また、潮出版社の『潮』7月号にもインタビューが載る予定です(おそらく本日発売)。
e-World Premiumでは、シリアとイラクで包囲攻撃が進む「イスラーム国」の今後はどうなるのか。
『外交』では、100年前のサイクス=ピコ協定や第一次世界大戦・戦後を起点とする中東国際政治秩序の形成と、現在の変動について、全体像を。
そして『潮』では、シリア内戦と「停戦」や和平交渉について実態を分析しています。
それぞれが関係しあっており、重なり合うところも多いテーマですが、インタビュアーの関心によって重点が変わるので、同じ対象について同じことを語っていながら、大きく趣を異にする論考になりました。
インタビューを受けたのはいずれも連休明け直後です。その後の展開を予測した部分が多いのですが、たいてい予測通りに進んでしまったので(シリア内戦などについては、現実と、外交上の建前とか公式見解とかプロパガンダ情報を見分けることができれば誰にでも展開は予測できると思うのですが・・・)、あえて予測して見せる必要がなくなってしまい、削ったところもあります。
そのため、普段なるべく避けているインタビューを短期間に複数回受けた甲斐があったと思いました。自分でこのように書き分けるのはかなり頭を使いますし、労力がいりますから。