チュニジアの風景(7)雨に打たれるイブン・ハルドゥーン像

イブン・ハルドゥーン像について書きかけて、『歴史序説』日本語訳が文庫でまで絶版(なんのための文庫なんだろう)と知って絶望してしまったが、気を取り直してチュニジア報告。

ブルギバ広場のイブン・ハルドゥーン像。ちょっと別のアングルで見てみましょう。

正面から、少し引いたところから。

ん?

イブン・ハルドゥーン像3

有刺鉄線が写っていますね。

実は、ここのところ、ブルギバ広場のイブン・ハルドゥーン像は、こうして有刺鉄線で囲まれてしまっているのです。

もう少し引いて横から。

イブン・ハルドゥーン像とフランス大使館

見えにくいかもしれませんが、ぐるっと有刺鉄線で囲まれてしまっています。

これはテロ対策でしょう。

といっても、イブン・ハルドゥーン像がテロで狙われるというのではないでしょう。写真の背後の赤みがかった建物が、フランス大使館で、おそらくここを狙ったテロを防止するか、この前でのデモを阻止するために、イブン・ハルドゥーン像のある一体に有刺鉄線を張って、入りにくくしているのです。

大聖堂イブン・ハルドゥーン像前

ちなみに、イブン・ハルドゥーン像を挟んで、フランス大使館とブルギバ広場の反対側で向かい合うのは、カソリックの大聖堂(Cathedral of St. Vincent de Paul)です。大司教を擁する、最高位の大聖堂です。

イスラーム世界の社会と政治を宗教的ドグマにこだわらずに客観視したイブン・ハルドゥーンの像が、フランス大使館とカソリック大聖堂に挟まれて、内務省当局が張った有刺鉄線に囲まれ(守られ)てかろうじて存立し得ているように見えるのは、現在のアラブ世界の混迷を象徴しているようであります。

そう思って、上のように、イブン・ハルドゥーン像が雨に打たれている寂しい写真を撮ってみました。