【テレビ出演】「クローズアップ現代」(11月16日)での発言がNHKウェブサイトに

昨日出演した「NHKクローズアップ現代」の内容が、活字と静止画像でNHKのウェブサイトに掲載されました。

「NHKクローズアップ現代 No. 3733 緊急報告 パリ“同時テロ”の衝撃」2015年11月16日

私の発言も、詳細に確認してはいませんが、スタジオで生で発言した通りに文字起こしされているはずです。一部、「領域支配」と言ったはずが「領地支配」に変換されていたりします。そう聞こえるのかもしれませんが、そうは意図して発言していません。若干精度の荒い記録とお考えください。

いずれにせよ、このような文字起こしを公開し残しておくことは、信頼性のある報道番組であろうとするならば必須の条件と言っていいと思います。

発言時間は国やキャスターとのやりとりを含めて8分程度しかありませんので、事前の打ち合わせではもっと多くの論点を入れようと準備しましたが、実際にやってみると入らない部分もありました。

ただ、組織原理や戦略目標が変わったのではなく、従来のグローバル・ジハードの各地の分散型・自発的テロの多くの種類を組み合わせ、「冷酷さ」と手際良さにおいて「進化」したという論点はじっくり議論できたように思います。

何がこの「冷酷さ」をもたらしたかは、今後検討しなければなりませんが、渡航してイラクやシリアでの戦闘に関わったり、あるいはそこからもたらされる残酷な情報に触れることで、麻痺してしまったのかもしれません。

【テレビ出演】NHK「クローズアップ現代」でパリのテロについて(今夜再放送があります)

忙しくて、また急だったので、通知すらできませんでしたが、NHK「クローズアップ現代」(午後7時30分〜7時56分)に出演しました。

「NHKクローズアップ現代No. 3733 緊急報告 パリ“同時テロ”の衝撃」2015年11月16日(月)

クロ現2015年11月16日パリ同時多発テロ1

再放送は今夜日付が変わって17日(火)午前1時00分〜1時26分です。

「拡大と拡散」について噛み砕いて話すことができました。元来が持続が困難な難民・移民政策の変更のきっかけ、言い訳となる可能性や、軍事行動による拠点の「拡大」阻止が、少なくとも短期的には「拡散」を促進する可能性についても話してあります。

今回が「組織的」であるかというと、これまでより高度になって、「冷酷さ」において進歩し(その原因が何なのかまでは語れませんでしたが)、手際が良くなったといった論点も入れておきました。

【テレビ出演】BS-TBS「週刊報道LIFE」でパリの同時多発テロ事件を解説

本日夜9時から、BS-TBSの日曜夜の報道番組「週刊報道LIFE」(9:00~9:54生放送)に出演する予定です。

BS-TBS週刊報道LIFE

テーマはパリの同時多発テロ事件とその影響について。

ウェブ上の番組案内ではこのように記されています。

「パリ同時多発テロを緊急特集。
120人以上が犠牲となった、これまでにない大規模なテロ。
イスラム過激派との関連は、そして今後の展開は…
気鋭のイスラム研究者、池内恵・東大准教授が
最新情報を交えてスタジオ生解説。」

急遽予定していた番組内容を差し替えてパリのテロ事件を特集するということですので、いろいろ考えたのですが、出先から戻って出演することにしました。

本当は、この週末は大きな文章仕事の山場だったのですが。しかしテロですでに邪魔されているので、もうこうなったら今しか調べられないことを調べて考えます。

テレビ出演は労力がかかって研究の進展には必ずしも助けにならないこともあるので、それほど頻繁には行っておりませんが、この番組の前身の「週刊BS-TBS報道部」には2月1日と3月22日に出演して、「イスラーム国」による人質殺害と、チュニジアのバルドー博物館のテロについて、それぞれ解説しました。

2月1日の出演については、このブログには出演情報が記されていないが、当時おそらくフェイスブックでは出演告知をしていたのかな。人質事件の情報分析であまりに忙しかったものですから。2月1日にBS-TBSで話した内容の一つがこれ。脅迫ビデオを見れば、「軍事か非軍事か」などということを「イスラーム国」側は問題にしていないことが明瞭だ、という話

この番組とのご縁は、『フォーサイト』(新潮社)がウェブになる前の月刊誌だった時代に連載「中東 危機の震源を読む」を設けてもらってお世話になった、堤信輔元編集長がコメンテーターになっているため。今回、堤さんも本来は出演予定ではなかった回ですが、急遽出てきてくださるそうです。

イスラーム世界では金曜日に物事が動きやすいのですが、日本では「土・日は堅苦しいニュースは見たくない」という一般聴衆の感情を慮って(なのか)、軒並みニュース番組は休みます。そのため、金曜日に起こったイスラーム世界の出来事についての土・日の報道が要領を得ず、月曜日にはもうニュースの旬としての時期が過ぎているので報じられない、ということを繰り返しています。24時間ニュース局ができれば問題は解決するのですが、需要がないのでしょうね。いつまでたっても日本のBBC は現れません。特に土・日は地上波ではニュース番組がほとんどなく、テレビを情報源としている人たちにとっては情報が途絶します。それに新聞休刊日が重なったりすると、要するにテレビ局も新聞も記者が休んで当直の人しかいない状態になるので、あらゆる意味で情報の流通が悪くなります。ワーク・ライフ・バランスは大切ですが、メディアの人ぐらいは土日に働いてもいいんじゃないの?と思いますが。ニュースは365日24時間全力で追いかけて発信する体制を作り、平日に交代で休めばいいじゃないですか。

その中で日曜日にまともにニュースを扱おうとする番組企画があると、ちょっと無理してでも出演してみようかな、という気になったりします。

【テレビ出演】11月7日土曜日の昼に、テレビ東京「マネーの羅針盤」で選挙後のトルコを解説

出演情報です。

テレビ東京マネーの羅針盤

11月7日土曜日の昼12時5分から、テレビ東京「マネーの羅針盤」に出演予定です。テーマはトルコについて。(BSジャパンで午後2時5分から再放送があるようです)

番組予告によれば、

■特集コーナー「混迷する中東情勢のカギ握るトルコ」
トルコで1日、総選挙が行われ与党が単独で政権を担うことが確実となった。 政治空白が解消される期待から市場もその行方を注目している。 中東情勢が混迷極めるなか、カギとされるトルコの今後は?
ゲスト:東京大学准教授 池内恵氏

だそうです。

今は必死に論文を書いていないといけないのですが、トルコの選挙という節目であれば、どうせまとめておく必要もあるからと引き受けてしまいました。お待ちいただいている編集者・担当者の皆様、無駄にはなりませんので、ご容赦願います。

【テレビ出演】本日(10月30日)夜10時〜NHKBS1「国際報道2015」で解説

特集の文字起こしへのリンクを追加しました。2016年7月3日】

出演情報です。

本日(10月30日)夜10時から、NHKBS1「国際報道2015」に出演し、特集「『IS化』する中央アジア アジア最深部で広がる脅威」で解説を行います。

国際報道2015ロゴ

NHKの番組ウェブサイトの、特集の概要は下記の通り(太字部分)。今後、分析の内容を詰めていきます。

「IS化」する中央アジア アジア最深部で広がる脅威
シリアやイラクで勢力を維持する過激派組織ISが、じわじわと中央アジアに触手を伸ばし始めている。タジキスタンでは、今年5月に治安部隊の司令官がISに寝返り衝撃が広がった。また、キルギスでは今年7月、首都ビシケク中心部で治安部隊がISを支持する過激派の拠点を急襲。メンバー4人を射殺し7人を拘束した。NHKはこのほど、このビシケクの現場を取材。市民や治安当局の話から、失業などで生活に困窮した若い世代にISの勧誘が相次いでいる実態が明らかになってきた。ISが中央アジアに浸透しようとしている意図は何なのか。周囲のロシアや中国、そして世界にどのような脅威となり得るのか。現地からの報告をもとにスタジオで専門家とともに展望する。
リポート:塚越靖一(国際部記者)
出演:池内恵(東京大学先端科学技術研究センター准教授)

「中央アジア諸国での過激派の台頭」「イスラーム国とのつながり」は、安全保障アナリストの間では、2015年の注視すべき課題の一つとして挙げられていました。各国政府も取り締まりを強めていますが、中央アジアを拠点・発信源とする過激派ネットワークの最大手「ウズベキスタン・イスラーム運動」はすでに「イスラーム国」に忠誠を誓っています。7月にはキルギスで過激派組織の摘発がなされると共に、「イスラーム国」側がキルギスの過激派を扇動するビデオ声明を出す、タジキスタンでは過激派対策の司令官が逆に「イスラーム国」に寝返ると宣言してしまうなど、注目すべき動きがあります。

安倍首相は22日−28日にかけて、モンゴルに加え中央アジア5カ国全てを歴訪するという前例のない積極的な首脳外交を繰り広げておりますが、大陸の深奥部であるこの地域に日本は足場も土地勘も乏しく、メディアの報道もどう扱っていいか測りかねているようです。その中で、NHKは現地取材も行って今回の特集を準備してきた模様です。どのようなVTRを見せてもらえるか楽しみにしています。

なお、日本での安倍中央アジア歴訪への反応は、中国のシルクロード経済圏「一帯一路」構想への対抗策、という面を捉えたものが最も有力と思われます。

遠藤誉「安倍首相中央アジア歴訪と中国の一帯一路」『ニューズウィーク』2015年10月26日

ところで、「中央アジアに過激派台頭の兆し」という話題は、日本では一般にほとんど知られていなかったのですが、安倍中央アジア歴訪だけでなく、安倍歴訪を巡って『中央公論』11月号の佐藤優・山内昌之対談で中央アジアの過激派問題が取り上げられたことが、一部での関心の高まりの原因になっているのではないかと思います。

山内昌之・佐藤優「徹底討論ラディカル・ポリティクス−−いま世界で何が起きているか3 シリア難民が成田に押し寄せる日」『中央公論』2015年11月号、150−159頁

この対談の中で、山内氏は自身のカザフスタン・ウズベキスタン訪問で、現地の政府系研究機関の所長がキルギスからの「イスラーム国」勢力の侵入を危惧していたと話すのに対し、佐藤氏はタジキスタンが「内戦の様相が強まっている」と表現しています。それに応じて山内氏は中央アジア5カ国のうちタジキスタンとキルギスは「破綻国家」で「イスラーム国」の州になりかねない、とかなり大胆な予想まで披露しており、佐藤氏も「その認識が日本では決定的に弱いのです」と応じています。佐藤氏はさらにたたみかけて、山内氏が歴訪したカザフスタンとウズベキスタンの大使館員との会話の様子を聞いて、タジキスタン、キルギスの危険性への認識が甘いと推定し、「当然、さまざまな情報を掴んでいないといけないのですが、やっぱり、大使館員の意識は、そんなに高くないのかもしれませんね」と、お家芸である外務省批判につなげていきます。現地の大使館の人員の規模は極めて小さいでしょうから、接遇などで精一杯で、十分に分析までしていられない可能性は大いにあります。

ただし、ここで取り上げられている情報自体は専門家の間では広く流通しているので、まさか大使館員が知らないということはないでしょう。しかし官邸の上の方の政策判断に現場の認識が十分に生かされていない可能性もありますし、現場そのものが兵站の制約などから、首相歴訪で急激に高まる期待に応じるほど機能できていない可能性もあります。こういった指摘は政治の側で適切に受け止めるべきでしょう。

タジキスタンとキルギスを「内戦」「破綻国家」とまで評していいのかどうかはまだ定かではありませんが、確かにそのような激変を想定外にしていてはいけないでしょう。カザフスタンやトルクメニスタンのようなそれなりに安定した資源国と、タジキスタンやキルギスのような治安に不安があり、(過大視されている可能性もありますが)テロの拠点となりかねない国では、別種の対応策が必要であることも言うまでもありません。

この対談シリーズは、ロシアやイスラエルの政府治安当局の発想が露骨に出すぎている部分も多くあり、イラン分析などは一方的なこともあるのですが、中央アジアについては実際にロシアやイスラエルの分析以外に情報が少ないことからも、そのまま事実として受け止めるかどうかは別として、貴重な知見の一端を伝えています。10月26日付の読売新聞の論壇時評にも取り上げられていたようですし、やはり影響力は大きいな、と思います。

関係があるかどうかわかりませんが、結局私などもこうして解説で駆り出されているわけですし。

【お知らせ】名古屋・栄の中日文化センターで月1回の講義(7−9月)

名古屋方面の方向けにお知らせ。今週末の26日から、月1回第4日曜日に名古屋の栄の中日文化センターで講義します。

「イスラム社会とイスラム国」三回シリーズ
I. 宗教(7月26日)
Ⅱ.国家(8月23日)
Ⅲ.国際関係(9月27日)
多分まだ申し込みできると思うので(締め切っていたらすみません)。
受講料は三回セットで9,072円とのこと。初めての方は入会金も必要かもしれません。
一般向けの講義はめったにしませんので、お近くの方はご関心があればぜひ。

【テレビ出演】7月9日(木)にBS Japanの日経プラス10に出演し解説します

明日7月9日木曜日の夜10時から、BS Japanの「日経プラス10」に出演します。

テーマは、とりあえず、こんな感じのものである。日経プラス10

7/9(木)「“国家樹立宣言”から1年…『イスラム国』の最新動向とグローバルジハードの脅威」【ゲスト】池内 恵(東京大学先端科学技術研究センター准教授)

【今のうちに告知】8月8日に北大でシンポジウムに

今のうちにご通知。8月8日に北大でシンポジウムに登壇します。14時から17時にかけて行われる予定です。

「北海道大学公共政策大学院(HOPS)創立10周年記念シンポジウム」というもので、北海道新聞の共催ということもあって、かなり大掛かりな、また参加無料で、一般に開かれたものになります。

北大HOPS

タイトルは正式には決まっていないようですが、現代社会における宗教、といったテーマになりそうです。近く広報されると思います(私が遠隔地への出張で連絡を怠っていたために遅らせているような気がいたします)。

私以外に、北大法学部の辻康夫先生(西欧政治思想史)が予定されています。辻先生は多文化主義やマイノリティの問題に関心を寄せていらっしゃいます。

チャールズ・テイラー編著のこの古典的名作の訳者の一人でもありますね。

この本は、イスラーム教と近代社会との関係について突き詰めなければならなくなる時には結局ここに戻ってこないといけなくなる、と考えて私が当初から論文で引用してきたものです。その後色々な議論が出たように見えますが、新しいことを言おうとして認識はかえって混乱した面もあり、この本の重要性は今も変わっていないどころか、いっそう価値を高めています。

この本も絶版なのか・・・信じられんな。

「岩波モダンクラシックス」のレーベルで出しなおしていたようだが、これも版元品切れ

あのー、「クラシックス」といったレーベルをあえて作るのであれば、いくつかの厳選した本だけは恒久的に本屋で常に手に取れるようにしたい、在庫を常に持っておいて、必要とするひとがいればいつでも出荷できるようにしたい、というふうな志があるのかと思ったら、大部分が品切れじゃないですか。がっかりだな。

夏になるたびに私が一人で帰省していた母方の祖父の家では、『広辞苑』の各版を、「大変な苦労をして作ったものだから、時代の変化が後々になってから分かるから」と予約注文して買い支えて、大事に並べていました。他社の『大辞林』が出た時も、当然の義務のように買い支えていました。ところが出版社の経営上の一時しのぎのために、さほど改定もしていないのに「新版」を乱発して中身が薄くなっていき信頼を失っていった。そのことを「祖父のような人たちに対する背信だ」と怒っていた父を思い出します。幼い頃のそんなやりとりは、不意に蘇ってきます。

「クラシックス」も、一時的な商売のために使われるのであれば、結果的に市場での価値を失わせる、書物に対する背信と言えるのではないでしょうか。

最近は文庫が「本の墓場」である、などという実態を明かす編集者もいます。「文庫に入ればずっと本屋に置かれる」というのは過去の話で、いまや「文庫も新書も多すぎて本屋の棚に置いてもらえず、文庫になったらもう流通せず、出版した月だけ出版社の『資産』を帳簿上増やすのに使われて、やがて廃棄処分されて本としての生命を終える」ということです。

少子化・高齢化・デフレ・組織の高コスト体質で出版業界がヘタって粗製乱造本をばら撒きながら(不動産収入で社員に給料を出しながら)基本書を絶版にしてコストを浮かし、それによって学芸の基礎が深刻にダメージを受けていくのを感じます。最近特にそのことを感じます。

とりあえずこの本も中古で買っちゃいましょましょう。あと、もう今後は原書で読んじゃいましょう。Kindle版もある。

シンポジウムではイスラーム教とかキリスト教といった厳密な「宗教」に限らず、主権国家や民主政体や資本主義といった世界を成り立たせている制度への不信や不満や被害者意識が、ギリシアのEU緊縮案否決に見られる、集団の非合理的な感情の激発を誘い、先行きの見通せない状況を生じさせていることについて、考えてみたいと思います。

西欧政治史・思想史が分厚い北大ですから、このあたりについて歴史を踏まえた洞察が得られるものと、期待しています。

その意味で、企画を担い登壇もされる予定の吉田徹さんの『感情の政治学 (講談社選書メチエ)』は参考文献となるのではないでしょうか。

お近くの方はぜひ。

お近くでない方も、酷暑の時期に、涼しい札幌にぜひお越しになっては。北海道に来ちゃってシンポジウムは忘れてくつろがれてもそれはそれで。

詳細はまた通知します。

シンポジウムで登壇(築地本願寺・7月25日)

帰国して、毎度のことですが、はげしい時差の元で仕事しています。

7月25日に、東京の築地本願寺本堂で行われるシンポジウムに登壇します。入場無料・申込不要です。

シンポジウム「宗教と平和―中東とチベットの現実から問う平和への道―」2015年7月25日土曜日午後1時半〜4時
築地本願寺<東京都中央区築地3-15-1>
※入場無料、申込み不要

築地本願寺シンポ7月25日

チラシはここから

私以外のパネリストは、伊勢崎賢治さんと定光大燈さんです。

【出演情報】本日19時20分頃からTokyo FM(@小田嶋隆)に出演

本日、Tokyo FMの Time Lineという番組(19:00-19:52)の中の このコーナーに出ることになってしまった。6月18日(木)小田嶋隆●世に溢れる「反知性主義」という言葉の正体(19:20~19:37)

こういった話は全てお断りしているが、こないだこれについてうっかり書いてしまったことと、仕事帰りということでなんとなく引き受けてしまった。

【ご案内】磯崎新さんとのトーク@青山ブックセンター本店(6月21日)

来週の日曜日の昼に、こんなんやります。

磯崎新連続対談 第3回 神話都市:イスラム 磯崎新 × 池内恵 トークイベント「未完プロジェクトの現場から――日本・中国・チベット・イスラムの都市と文化」2015年6月21日(日)13:00~15:00、青山ブックセンター本店

ABCトーク磯崎新・池内恵2015年6月21日

建築家の磯崎新さんと。

私は主に聞き役です。

磯崎さんがペルシア湾岸や中東の王族や政府の大規模プロジェクトにコンセプト作成の段階から関与してどのような者を見てきたか、建築家は権力を持っていてメガプロジェクトを決定・決済する人そのものの懐に入るので、普通には見られない政治や社会の内幕や、権力者の横顔について聞けるかもしれません。

【テレビ出演】3月22日(日)夜9時〜「週刊BS-TBS報道部」に出演し、チュニジア分析をします

明日日曜夜に、例外的にテレビ出演を行います。

3月22日(日)夜9時〜BS-TBSの「週刊BS-TBS報道部」にて、スタジオでチュニジア情勢について、その中での3月18日のバルドー博物館へのテロについて、解説します。

前回2月1日と同じく、元『フォーサイト』編集長の堤信輔氏がレギュラーのゲストで一緒に出演してくださるという条件の元で、また事前に番組構成について私の見解を踏まえてテレビ局側が入念に準備するという条件で、お引き受けしました。

実は私は2月7日−2月20日にかけてチュニジアへの現地調査に赴いておりました。その間にフェイスブック上で、適宜現地から情報を提供していましたが、当時は、1月7日のシャルリー・エブド紙襲撃事件から1月20日−2月1日の日本人人質脅迫殺害事件にかけての、「イスラーム国」をめぐる議論の日本での急激な政治問題化によって、世論が過熱していたことから、調査を行っている場所と期間は、意図的に分からないようにしていました。

私は危険な場所には極力立ち寄らず、とりたて重要な情報源に接触するわけでもないため、元来は動静を隠す必要は全くありません。しかしどのような誤解や曲解、宣伝の対象となるか計り知れないため、念のため居所を意図的に不明確にしていました。

しかしチュニジアにいたという痕跡を若干残しておきたい思いもあり、滞在中にチュニジアで起こった事件のうち、2月18日朝に発覚した西部カスリーン県ブー・アラーバでの、アンサール・シャリーアの傘下にあると称するウクバ・イブン・ナーフィア旅団による内務省治安部隊員4名の殺害という事件について、中東国際政治の議論では通常はあまり参照されないチュニジアのローカルなメディアの報道を紹介して、記録しておいた。

この事件は、その前に頻繁にシェアしていた、リビア情勢とイメエン情勢の悪化という文脈の上に置くと、チュニジアへ過激派の影がじわじわと忍び寄った危険な兆候、という大きな意味を持つと考えた。そのため、一見平穏なチュニジアの、辺境地域での小さなテロについて、注目されていたリビアの「イスラーム国」の動向や、エジプトの空爆などの反応、あるいはイエメンやシリアやイラクの混乱と同様の大きな意味を持つものとして、下記のように記事のサンプルを記録しておいた。

https://www.facebook.com/satoshi.ikeuchi/posts/10202679909917944
https://www.facebook.com/satoshi.ikeuchi/posts/10202679919878193
https://www.facebook.com/satoshi.ikeuchi/posts/10202679929398431
https://www.facebook.com/satoshi.ikeuchi/posts/10202679943758790

今見ると、なんらかの兆候に触れてはいたのだが、チュニジアの治安情勢のみに集中していることはできないことから、継続的な追求の手を緩めたと思う。

なお、同様の兆候はアラブ世界の多くの専門家が感じ取っており、リビアの混乱がチュニジアおよび、アルジェリア、エジプトに及ぶ危険性について、3月半ばにかけて、徐々に警鐘の音が高く鳴らされつつあった。

しかしそのような鋭敏で継続的な分析者たちにしても、このようなテロを未然に予測できた人はいなかったと思われる。【記事の例、3月15日付の警鐘3月10日付のアラビア語元記事

本来なら、帰国してさほど期間をおかずに、ブログなどで、チュニジア政治と、チュニジアを軸にしたアラブ地域国際政治の動向や、グローバル・ジハードがチュニジアに及ぶ影響について、まとめてみようと思っていた。また、余談として、チュニジアの一般市民の休日の過ごし方など、アラブ諸国の中で例外的に平穏で安定しているチュニジアの日常や人々の生活に触れることのできるコラムなども、公開しようと下書きを準備してあったた。ただし、著作の出版予定が相次ぐ上に、中東情勢の流動化で絶えずチュニジア以外のより混乱した国・地域についての分析に迫られることから、チュニジア報告に時間を割くことができずにきた。

チュニジア報告の中には、チュニジアでの調査の重点項目である、リビアを通じた「イスラーム国」からチュニジアへの影響、チュニジアの辺境地域および首都の重要施設を狙った武装集団の動きについて、まとめる予定で、帰国後の動きも含めて逐次情報は集めてきたが、まとめる時間と労力は到底割くことができなかった。そのうちに、予想を超えた速さと規模で、手薄な警備の地点を突かれて、チュニスでテロが起きてしまった。

今回のテレビ出演では、可能な限りそれらの知見を提供して、事件の全容解明になんらかの手がかりを提供し、また今後の日本のチュニジアとの関わりのあるべき姿を示そうと思う。

なお、お世話になってきた、また信頼する堤さんとの関係でご縁ができた「週刊BS-TBS報道部」だが、前回2月1日の出演について、このブログのエントリを探したが見つからない。

どうやら忙しすぎてテレビ出演情報をブログに上げることさえできなかったようだ。代わりに1月31日にフェイスブックで通知してあった

フェイスブックの方がシェアしてコメントを走り書きするだけなので短時間でアップできるのと、この頃非常に読者が増えていたのでこちらだけでも十分と思ったのだろう。

しかしフェイスブックの検索機能の弱さ、ハッシュタグ機能の弱さを見るにつけ、やはりデータをブログに集約させなければという気になっている。

ただし、2月1日の番組出演の内容のうち、日本での人質事件をめぐる政治的な議論に一石を投じる、いわば「キラー・コンテンツ」として提示した、「1月20日脅迫ビデオの冒頭映像を見れば、イスラーム国は日本の支援が非軍事的であることを明確に認識している」という論点については、ブログのエントリで後に詳細に示しておいたこれはかなり多くの人にシェアされ、いろいろなところで議論に使われたようだ。

2月1日の出演は、堤さんのご紹介で、1週間以上前から決まって準備してきており、この日の未明にかけて、二人目の人質の殺害という痛ましい結果になったことを受けて出演したわけでも、このような事態に終わると予想していたわけでも全くない。

しかし偶然、日本でニュース番組が少ない日曜日に事件の結末が明らかになr、その直後の出演であったため、2月1日のこの番組は、BSにしてはかなり注目されたようだ。

今回のチュニジアのテロについての、これまで私が見た限りのテレビ報道では、そもそもチュニジアについてほとんど全く何の知見もないことが明らかな「専門家」の不確かな議論が目立った。

私が事件のひと月前にチュニジア調査をしていたというのは偶然にすぎず、半年ほど前に安いチケットを買って、この時期にチュニジア調査に行くと決めていたから行ったというだけである。しかし結果としてこの事件の直前のチュニジアの情勢を直接見聞きした数少ない日本人になってしまったので、その知見から言い得ることを、少しでも伝えられればいいと思っている。

今回の出演では、そもそもチュニジアの社会と政治はどのようなものなのか、日本で伝えられてこなかったチュニジアの政治変動と民主化はどのように進んできたのか、チュニジア政治の現状とチュニジアの置かれた国際関係の中で、今回のテロ事件はどのような意味を持つのかを考えてみたい。

また、「イスラーム国」やそれに共鳴して傘下入りを試みている内外の諸武装集団が、チュニジアをどのように見ているのか、どのように攻撃の対象としているのかも、検討してみたい。

このような見方は、思想史と比較政治学を用いてイラクとシリアの「イスラーム国」を分析した『イスラーム国の衝撃』と同じか、その延長線上にある。ただし、チュニジアを調査地に選んだ理由は、「イスラーム国」がこれまで伸長できなかった、浸透できなかった国に対して、イラクやシリアでの、あるいはイエメンやリビアでの「イスラーム国」と関連する組織の動きがどのような波及効果や影響をもたらすのか、というところが、次の大きな課題になると考えていたからである。その意味で、ぼんやりと感じ取ってはいたものの、やはり今回の事件は私の予想より早く、想像より大きな規模で、グローバル・ジハードの影響がチュニジアに及んだと言わざるを得ない。背後にある勢力とその意図が何なのか、できる限り情報を精査して考え直してみたい。

また、チュニジアを渡航先に選んだのは、危険の兆しが表れていたと言えども、やはりチュニジアがアラブ世界の中の比較の上で非常に安全だから、その安全な場所を拠点として、非常に危険であって私の持つ資源では身の安全を確保し得ないリビアやイエメンの動静を見る、という意味があった。

しかしそうしていたところ、チュニジアの中心にテロが及んでしまったわけで、やはり私の想像を超えた動きであったと認めざるを得ない。その程度の予見力しかないぼんやりとした人間のぼんやりとした知見だが、何かの役に立つことを願っている。

【テレビ出演】3月12日(木)夜10時〜「日経プラス10」(BSジャパン)

例外的に、テレビ出演です。

BS ジャパンの「日経プラス10」
3月12日(木)夜10:00〜BSジャパンの番組「日経プラス10」でゲスト解説をします。

BSジャパン「日経プラス10」拡大

この日の特集、「勢力拡大する『イスラム国』~日本へのテロの脅威は?」の中での「トーク+」のコーナーです。

本の執筆で全く時間がありませんが、気分転換に引き受けました。

日本人人質事件の時のような緊張感は日本にはありませんが、イラクでの「イスラーム国」掃討作戦が進んでいますので、もしかすると決定的な拠点の陥落といったリアルタイムの動きと連動して話すことになるかもしれません。

他の不要なゲストがいないという条件で引き受けました。このあたり、ご理解いただけない番組の依頼は、すべてお断りしています。

【ラジオ】今夜8時55分~9時20分、J-Waveに生出演

J-WaveのJam the Worldという番組内のBreakthroughというコーナーに8時55分ごろから9時20分ごろまで出演します。

テーマは緊迫するエルサレム。

聞き手は竹田圭吾さん。

J-Wave Jam the World

今日は午前中はじっくりイランに関与した企業人にインタビュー。こちらが聞く側。勉強になりました。もう4回になるヒアリングだが、本当に面白い深い話が出る。

午後は数件インタビュー。こちらは聞かれる側。

合間に大学のお仕事。細切れでいろいろミスる。

さらに夕飯食べてからラジオへ。聞かれる側。

もうへとへとです。声が出るか心配。

【地図と解説】「イスラーム国」への参加者の出身国~ご一緒した常岡さんのこと

今日は長い論文をぎりぎりで出したり授業を本格立ち上げしたり編集者が来たり研究会があったりで丸一日全く息抜きなし。

ということで、以前のテレビ出演の発言記録をリンクして、ちょっと地図で補足するぐらいにしておこう。

2014年9月20日(土)の「NHK週刊ニュース深読み」の文字おこしがアップされていました。

NHK深読み

NHK側が持ってきた「イスラーム国」の解説は、正直私にもよく理解できない代物なので、コメントしません。いろんな情報を無理やりつなぎ合わせたんだな、と思います。日本人の基本素養にはイスラーム教も中東世界事情も入っておらず学校でも習わず、一般的に伝わる情報は日本人から見れば否定的に見られる事象のオンパレード(だって現地には一般庶民の次元でも平和主義者とかいないですし、日本のメディアが期待するようなイイ話ってないですよ)であるのに対して、モノの本を読むと断片的に妙に理想化した話が入ってくるので、どう頑張って理解しようとしても分裂してしまう。

私のコメントについては、なるべく分かりやすくしていますし、そもそも流れがはっきりしない中で突然振られた話題に応答し、かつ分かりやすく話さないといけないので、用語の厳密性にはやや欠けている部分があるでしょう。ただ、基本的には間違ったことは言っていません。

ご一緒した常岡さん(写真で右から二番目のヒト)とは、この番組でご一緒した以外に付き合いはありませんが、チェチェン紛争の取材に基づくルポや発言については注目してきました。チェチェン紛争から流れ出てシリアに行きついたゲリラを伝手に取材をしているらしきことも漠然と知っており、お話を聞きたいと思っていました。番組の中でしかお話しできませんでしたが、貴重な機会になりました。

その後、「イスラーム国」への参加希望学生の出現で、同行取材をしようとしていたとして公安当局の捜査を受けたことで有名になってしまいました。以前にも人質になったことで有名になったり、いろいろと不運な方ですね。

常岡さんの話には、実際に行ってきた人ならではの貴重な知見が数多く含まれています。ただ、常岡さんは基本はビデオジャーナリストでどうやら文章の人ではないようで(すみません気に障ったら)、言葉では断片的・断定的に議論をする様子があります。見てきたわけではない全体像は議論しないのと、見てきたことを相対的にあるいは批判的に位置づけるという議論の仕方をしません(時々します)。

私が推測するに、常岡さんの最大の強みは、チェチェンのゲリラでシリアに来ている人たちの「以前」と「今」の両方を見ている数少ない外部の人間なことです。これをやって来た人はなかなかいません。

常岡さんは1990年代末から2000年代半ばのチェチェン紛争に何らかの理由で行きついて長く取材してきたことで、幾人かの有力なジハード戦士へ食い込み、彼らがロシア領のチェチェンやダゲスタンを逃れて中東に流浪し、シリアで内戦に参加しているところを今取材している、という形です。

(なおこの英語記事は、ロシアに敵対するチェチェン・ゲリラをはじめとしたグローバル・ジハード運動の当事者を悪魔化した報道を国策でやっているロシアのメディアRussia Today=RTの報道ですが、今回はむしろ「イスラーム国」に好意的なトーンです。まあロシアの国策メディアは常に欧米のメディアが言っていることの逆を言うだけなので、現在は欧米メディアが反「イスラーム国」一色だからそれに水をかけている、という面はありますが、通説への一定の相対化の視点として、信じ込んではいけませんが、読んでおく価値はあります。ロシアのメディアは嘘をついたり歪曲情報を流す際にも、頭がいいな、と思うことがよくあります。担当者は嘘と知っていてやっている、騙されて信じ込む人をからかっている、そんな絶妙な諧謔味を堪能させてくれます。それは欧米で騙されてしまう人の心理や背景を熟知しているからでしょう)

さて、常岡さんは、「使用前」「使用後」ではないですが、「そもそもどういった人がシリアの内戦に義勇兵として参加していて、どういうルーツでどういう思想や経緯がある人なのか?」という疑問に、部分的にですが、かなり重要な知見をもたらしてくれます。ただし、チェチェンのゲリラはシリアの内戦の当事者として代表的とは言えないので(重要な役割を持っている可能性があるとは思いますが)、そのあたりは相対化する必要があります。また、知見がオリジナルなので第三者の検証は難しいでしょう。

といっても、常岡さんは現在までにシリアについては、テレビのコメントやツイッター等で断片的に語ったのみなので、見てこられたことの全体像がよく分からないのです・・・たぶん常岡さんの頭の中にだけ入っていることがたくさんある。

思想的背景や言語がよく分からない公安当局の聴取ではなく、きちんとした調査研究機関が対価を払って徹底的に聞き取りをして、情報源の秘匿という意味で公にすると不都合な部分は鍵をかけて非公開にするなりして、将来のために記録に残しておいてほしいと思います。いやもちろん常岡さんが本を書いてくれればいいんですが、今回の騒ぎもあり、今後の取材もあり、なかなかまとめられないでしょう。

常岡さんはおそらくチェチェン系の繋がりを基礎に、「友達の友達」を紹介してもらって取材する、と言うことをやっているはずなので、当然偏りが出てきます。常岡さんはアラビア語ができないので、どうしても大多数を占めるアラブ系の義勇兵とのつながりの深まりには制約が出るでしょうし、実際にシリアでイスラーム国が何をやっているか、言葉を読めないと目にしていても見逃してしまうこともあるでしょう。また、ムスリムと言ってもイスラーム法学は、友人から断片的に聞くのみでほとんどご存じないのではないかと推測します。そのあたりは別の情報源から補足しながら話を聞く必要があります。

当たり前ですが、全部のことを知っている人などいないので、このようにアクセスが極端に難しいある一部分をすごく深く知っている人は大変貴重です。要は、一人の人の言うことを絶対視しさえしなければ良いのです。私の話も絶対視してはいけません。

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上記が一番重要なことですが、若干の言い訳。

私の一番最後の発言で、こんなことを言っています。

「ただ、”イスラム国”に入って来る戦闘員の大多数は、ヨルダンとかモロッコとかチュニジアとかサウジアラビアから来ているんですね。
欧米の人たちは100人といった数ですから、実はそんな大したことないんですけど、欧米の人たちは彼らが戻って来てテロをやるんじゃないかと、実際そういった事例もすでに出ているので、気にしているんですね。
われわれはその報道を見てしまうんですけど、実際は近隣諸国から何千人も来ているんですね。 」

この発言の趣旨は、「イスラーム国」の戦闘員の大多数は周辺のアラブ諸国からきているんで、基本は中東地域の問題。欧米からの戦闘員は割合は実は低い、ということ。

このことを議論する際に、「欧米の人たちは100人といった数」と言ってしまっているようですが、実際には欧米諸国からの義勇兵は「100人【単位】」と言いたかったのです。しかし「単位」はこの番組では難しいかな、と一瞬日和見した結果、正確ではない表現になりました。

西欧諸国からは100人単位、アラブ諸国からは1000人単位で来ているので、桁が違う、というのが重要な点です。にもかかわらず西欧出身者が過剰に注目されるのは、帰国してEU域内も米国へも自由に動き回り、「ホームグロウン・テロリスト」となることを、欧米社会が脅威と感じているからです。欧米メディアが欧米社会のことにより大きな関心を抱くのは当然ですが、それが世界全体にとっても同様に問題であるかと言うとまた別の話です。

ただし「イスラーム国」もこれを利用して力を入れた宣伝映像には欧米出身者を多く登場させ、実際に宣伝効果を得ているので、欧米で注目されるということ自体に意味があります。それがアラブ諸国の現実にもフィードバックされますので、結果として重要になっています。

妥当な地図はこれ。報道によっては西欧からの参加者だけ地図に書き込んだりして、全体像の把握を妨げています。

イラク・シリアへの外国人戦闘員の出身国_BBC_14 Oct 2014
“Battle for Iraq and Syria in maps,” BBC, 20 October 2014 Last updated at 16:56

実数に即して円の面積が割り振られているので、全体としてどのあたりからきているからが一目瞭然です。その下にグラフも載っていますね。

イラク・シリアへの外国人戦闘員上位諸国グラフ_BBC_14 Oct 2014

フランスは「1000人」とかそれ以上のかなり適当な数を最初出してきていましたが、現在の集計では600~700人程度に落ち着いているようです。

「ヨーロッパ」の中で一番多いのはロシアですので(これを「ヨーロッパ」に入れること自体問題ですが)、チェチェン系が多数でしょう。これはシリアで紛争が始まる前からアフガニスタンなど各地を転戦しています。

なお、最後のところで常岡さんが「もう手遅れです」と叫んだまま、あえなく時間切れで番組が終了。

何がなぜどのように手遅れなのか言わないので(時間があったって言わないんじゃないのかな・・・)、聞いた人が勝手に各自の思い込みを読み込んでしまって話が紛糾する。いつも常岡さん言葉が足りない。。。天然炎上系。

でもそういう無防備なところが、ものすごく猜疑心が強くないと生き残っていないはずのチェチェン・ゲリラの古強者とかには安心されてしまう理由なんだと思う。

常岡さんの突撃取材から得られた知見には、例えば親日的なジハード戦士が、「申し訳ないが日本人もイスラーム教徒になってもらうよ」(ニッコリ)と言ったとか、一見ほのぼのとしており、他方で多少深く考えるときわめて重大な問題なんだが、イスラーム教に勝手な思い入れを投影している「思想家」社会学者などの頭にはどうしても入らないであろう、あからさまなイスラーム世界の真実が明らかになる一瞬が方々にあるのだけれども、なかなか理解されないんだろうなあ。

常岡さんは「うまく言葉で伝えることができていない」と思うことはあるが、歪めて伝えていると思うことはあまりない。その点は研究者の方が、これまでの自説の誤りを認めたくないがゆえに系統的に情報の選択や解釈を歪めてしまうことがあるので、常岡さんの議論(といってもツイッターでの突如の叫びだったりするが)を不快に感じたことはない。常岡さんが見てきたことは、日本語を用いて日本社会で認識させるには想像を絶する世界であり、かつかなりみっともなかったり、見たところ馬鹿っぽかったりするような卑近な日常を多く含むだろう。いつかそれらをまとまった文章にしてほしいと思う。

単に「その言い方じゃ理解されないだろうなあ」と思うことがあるが、しかしどう言葉を尽くしたって理解しない人は理解しない。このテーマに関する限り、理解しない人が(理解したつもりになっている人も含めて)日本社会で圧倒的多数だろう。

でも諦めてはいけない(これは自分に言い聞かせています)。

日本にはこういう金にならなくても変なことを突き詰めている人があちこちにいるので、そのような才能を生かす社会であってほしい。

今後のことを考えると、英語で「ツネオカタイホシタ!ゴウモンシタガクチヲワラナカッタ!」と世界に報じたうえで放免して(というか最初から逮捕しちゃいけません)、機材も帰して中東で取材してもらってほしい(そうしないと常岡さんが取材源を漏らしたとか、そもそも公安のスパイだったとかいった誤った情報が流れかねない)。もちろん危ない時はさっさと逃げ帰ってきてくださいこれまでと同じように。死んだら元も子もありませんし、常岡さんはそのことはよく分かっているから今まで生きているんだと思います。

陰謀論に花束を

今日の、BSスカパー「Newsザップ」出演では、12時から午後3時までずっとスタジオに座りっぱなしだったので、極度に疲労しました。こんなことはしょっちゅうやってられませんね。

Newsザップ

おまけに、今日に限って、米国ダラスの病院内でのエボラ出血熱の二次感染の事例が生じて米国が浮き足立っているので、CNNは特別編成でアマンプールの番組が取り止め。BBCもトップニュースでこの話題に。

毎時0分や30分の定時ニュースで、シリアやイラク、イエメンやリビアの話題は省略されるか、後の方(毎時20分ごろや、50分ごろ)に回されたので、ザッピングの対象にならず。

それでも中東の話をしましたが。

レギュラー・ゲストのアーサー・ビナードさん。

詩人。

国際政治については、典型的な米国超リベラル派らしく、陰謀論炸裂。

まあ中東政治に陰謀はつきものだけど、その多くは米国主体ではなく、現地の諸勢力が地域大国と域外大国とNGOとかを盛大に巻き込みながらやっているのだから、なんでも米国が動かしていると言っていては、中東は分かりません。

中東に盛んな陰謀論とは別に、もっと現実的で厄介な陰謀がたくさんあるのです。それを読み解けないと、手玉に取られてしまいます。

あまりにひどい時はこちらも重ねてどのように見ればいいかを解説しましたが、思想・言論は自由なので、たいていはスルーして放置しておきました。

詩人なんだからどうぞ奔放に。

ただし、メディアがそういう詩人の政治論と私の分析を同列に扱って、かつ一般読者・視聴者に「印象がいい」「良い人」に見える(とメディアが考える)方に軍配を上げるような扱いをした時には、私は徹底的に怒るけれどね。

それは私にとって譲れない倫理の問題だから。

今から10年前のとある事件(それは今イラクとシリアで生じていることに、紆余曲折ありながらつながっている)についてのとあるメディア企業のやり方については、今でも、許しも忘れもしていない。『イスラーム世界の論じ方』の注を詳細に見ていただければ、ぼんやりと何がどうだったか分かるかもしれない。

ビナードさん、最近うちの父といくつも一緒に仕事してくださっているらしい。うちの父も政治の話になると、まあビナードさんと似たような感じのぽわっとした現実感のなさがある。

ただし父は、人間社会の本質に関しては、政治の制度や社会構造に関する情報は恐ろしく皆無なのにもかかわらず、ある面で異様に勘が鋭い。もし理屈で説明させれば陰謀論みたいなものになってしまうのだろうが、そういうことは人前で決して言わない防衛本能は鋭い。なので、明らかにおかしいだろ、という政治的発言をしたのは見たことがない(いや、探せばいろいろあるかもしれませんが・・・)。その辺、世の文系知識人とは全く違うと思う。それがどこからきているのかは私にもよく分からない。文学だ学問だ云々というよりももっと深いところでの人間としてもって生まれた知覚・防衛本能なんだろう。外当たりはいいけれども、あの人は、お人よしではないですよ。

ビナードさんがしゃべっている間に浮かんだポエム。

みえるもののむこうがわに
みえないものをみるのはいい
みえないものだけをみはじめると
なにもみえなくなる

さとし

お粗末でした。早々に宗教政治思想に路線転換しておいてよかった~