シリアで消息を絶っている安田純平さんについて、私は個人的には面識がなく、安田さんの交友関係も知らないので、何も情報を持っていませんが、安田さんのものとみられる映像については、Facebookで書いておきました。私にはこれ以上のことは分かりませんし、言うことができません。無事の帰還を祈っています。
安田純平さんが、どの程度、英語を正確に話すのか、私は知らない。ビデオでの発言のこの部分は、英語の語法が不確かなので、意味を正確に理解することは難しい。
“I have to say to something to my country:When you’re sitting there, wherever you are, in a dark room, suffering with the pain, there’s still no one. No one answering. No one responding. You’re invisible.”
しかし、シリア内戦の対立関係と、3月14日に開始されたジュネーブでの和平協議を背景に解釈すると、ほぼ想像できる。「アサド政権の攻撃によってシリアの人々が苦しんでいるのに、日本は何もしていない。日本の声が聞こえてこない」と訴えているのではないか。和平協議によってアサド政権の存続が認められようとしているタイミングで、この映像が発信されたのは、和平協議に反対する意思を伝えるためかもしれない。
「国際社会がアサド政権による空爆や殺害に反対してくれない」という批判は、シリアの反体制派が共通して表明する立場であり、和平協議に参加していないヌスラ戦線の立場でもある。もし安田さんがヌスラ戦線の拘束下にあるのであれば、安田さんがこのように話すのは理解出来る。
また、安田純平さんもある程度反体制派に共感しており、アサド政権による市民の殺害を批判する立場なので、「強制されて言わされている」だけではなく、本心で言っているのかもしれない。
ヌスラ戦線は、ISとは異なり、人質を殺して映像を発信することそのものを、目的にはしていないはずだ。人質を殺せば、シリア反体制派に対する日本の世論は悪くなる。安田さんを生かしておき、日本国民や日本政府に対するメッセージを伝える報道官とすることが合理的だ。私は彼らがそのように決断をすることを願っている。