【寄稿】トルコの暗部・ネオナチ的民族至上主義が露呈

トルコ各地でクルド系政党HDPに対する襲撃が生じる中で、寄稿しておきました。

池内恵「トルコ民族主義の暴発が秘める内政・外交の危険性」《中東―危機の震源を読む(89)》『フォーサイト』2015年9月10日

トルコには、「世俗主義V.S.イスラーム主義」という対立軸に加えて、根底では20世紀前半の西欧の人種主義を「冷凍保存」したようなトルコ民族主義があり、クルド民族主義とは特に対立している。

それはおそらく、かつてのクルド民族の存在を全否定して、遅れた未開の「山岳トルコ人だ」と言っていた時代の支配的なイデオロギーなのだろう。イスラーム主義の与党AKPも、もちろんかつての与党の流れをくむ世俗主義のCHPも、それほどむき出しにしないまでもこの要素を共有しているはずだ。動乱の中でトルコの負の側面が表に出てきている。

トルコの底堅い民主主義と自由なメディア・市民社会が、これを克服していってくれることを願う。