【先端研キャンパス公開】北岡伸一先生の講演と「地政学」をめぐるパネルディスカッション

先端研が位置する東京大学駒場IIキャンパス(駒場リサーチキャンパス)のキャンパス公開が2019年5月31日・6月1日に行われます。

このキャンパス公開の一環として、6月1日午後に、グローバルセキュリティ・宗教分野の企画による、「地政学」を共通の関心とする講演・パネルディスカッションを開催します。

基調講演に北岡伸一(国際協力機構(JICA)理事長・東京大学名誉教授)先生をお願いし、それに続くパネルディスカッションには私と特任助教の小泉悠さんが登壇するだけでなく、客員研究員をお願いしている鈴木一人・北大教授をお招きします。

このパネルディスカッションは、昨年10月に先端研に「イスラム政治思想分野」を発展的に解消して新設した「グローバルセキュリティ・宗教分野」の趣旨説明の機会にもなります。これに関して、先端研の文系分野の振興に尽力してきた御厨貴先生からも、お言葉をいただける予定です。

北岡先生はJICA理事長としてのお立場から俯瞰した世界情勢と日本の立場についてお話しいただけるのではないかと拝察しますが、ちょうど最新の御著作『世界地図を読み直す 協力と均衡の地政学』(新潮選書)が刊行された直後の講演ということにもなり、「ブックローンチ」のような部分も出てくるのではないかな?と楽しみにしております。

講演会・パネルディスカッションには特に事前の予約なくご聴講いただける予定です。

特設ウェブサイトにキャンパス公開の案内が掲載されていますが、下記に池内研究室による企画の講演会・パネルディスカッションについての案内を再掲しておきます。

先端研 グローバルセキュリティ・宗教分野 特別講演会・パネルディスカッション「地政学復権の時代のグローバルセキュリティ」

講演「国際協力とグローバルセキュリティ」
講師 北岡伸一国際協力機構(JICA)理事長

パネルディスカッション
鈴木一人・北海道大学公共政策大学院教授

池内恵・東京大学先端科学技術研究センター教授

小泉悠・東京大学先端科学技術研究センター特任助教

御厨貴・東京大学先端科学技術研究センター客員教授

開催場所 先端研3号館1階 ENEOSホール
日程 6月1日 (土) 13:00 – 14:50
定員 200名

先端研に昨年10月に新設された「グローバルセキュリティ・宗教分野」では、世界情勢の変動の最先端・核心に迫る研究を行なっています。本年度の重点領域は「地政学」。米国を中心としたリベラルな国際秩序が揺らぎ、「地政学」が新たなキーワードとして注目されています。ロシアや中国が台頭し、「イスラーム国」やシーア派のような宗教的な非国家主体の影響力が増大する現代の国際政治で「地政学」は有用な、あるいは不可欠な認識枠組みとして浮上しています。地政学復権の時代に、いかなる形で「グローバルセキュリティ」は可能なのでしょうか。グローバルセキュリティ・宗教分野では特別講演会とパネルディスカッションで、これについて議論を深めます。

特別講演会の講師にはJICA(国際協力機構)理事長(東京大学法学部名誉教授)にご出講いただきます。北岡先生は最新刊のご著書『世界地図を読み直す 協力と均衡の地政学』(新潮選書、5月22日刊)で、JICA理事長としてグローバル社会の隅々まで駆け巡る過程での思索・論考を単著にまとめておられますが、ここで隠れたキーワードは副題にもある「地政学」。今回の講演では、世界地図を俯瞰しながら日本の対外政策の中枢と国際協力の現場を日々につなぐ、地政学的思考の理論と実践について、明かしていただきます。

これを受けて、パネルディスカッションでは、「地政学の復権」の理論と現実に、様々な角度から取り組みます。

「地政学」をめぐる理論的な議論としては、北岡先生を中心にした「地政学」を共通課題とした研究プロジェクトの成果として、論文集『新しい地政学』(仮題、東洋経済新報社)の刊行準備が進んでいます。そこに掲載が予定されている池内恵教授(グローバルセキュリティ・宗教分野)「中東と地政学」についての最新論考の内容についても、パネルディスカッションでは触れられることでしょう。中東は「地政学の本場・本家本元」とも言えます。「地政学復権」の時代に中東は新たな様相と重要性をもって、立ち現れています。

そして、グローバルセキュリティ・宗教分野に3月に着任したばかりの小泉悠特任助教は、ロシアを中心とした地政学に関する著書『「帝国」ロシアの地政学 「勢力圏」で読むユーラシア戦略』(東京堂出版)の刊行を6月に控えています。「地政学復権の時代」を代表するロシアという存在をどう認識し、対処すればいいのか。北方領土問題を抱える日本にとって、重い課題ですがこれについて小泉特任助教の最新の情勢分析に基づく議論が行われることでしょう。

地政学の復権という抗しがたいように見える波に対峙しうるものは何か。EU・宇宙政策から国連対イラン制裁の現場まで、リベラルな国際秩序の形成と推進を担う制度や機構、主体の理念や実態を熟知した鈴木一人北大教授(先端研客員研究員)に登壇をお願いし、批判的な視座から地政学論をとらえ直していただきます。

パネルディスカッションには、北岡先生にはお時間の許す限りお相手していただきますが、ここに、北岡先生の長年の友人で、先端研の社会科学部門の「お目付役」ともいうべき御厨貴客員教授も、顔を出して日本独自の視点を出してくださるかもしれません。

みなさま、奮ってご参加ください。